霜月の十 / インタビュー公開 / 差別・偏見をスルーしないBTS
●11月某日: 中村さんのインタビュー公開。
プリンタの調子が悪い‥‥。夜ごはんはシチュー、ポテサラなど。
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グラミーのノミネートは残念だったけど(ノミネートはされたけど)、驚くべきことが起きた。
発端は、2か月前、BTSが国連でスピーチした後。アメリカの人気番組で、司会者ジェームス・コーデンがアイドルや若い女性に対して偏見・差別的ととられる発言をし、ARMYが憤慨するという事件があった。
今日はその番組にスタジオ出演。すると、リーダーRMが口をひらくや、その件に触れたのだ。
ジェームス:「じかに会うのは2年ぶりだね! 元気だった?」
RM:「僕らはすごい元気だけど、あなたはどう? ARMYに怒られたんじゃない?」
英語力の乏しい私でも、「うぉい、いきなりかい!」とびっくりするほどハッキリ切り出してた。
「ohhhhh」とつっぷしたあと、ジェームスが何やら一生懸命に弁明をしているのが、これまた英語力の乏しい私にもわかった。
翻訳アミさんによると
「みなさんご存じだと思うけど、あのとき2つ冗談を言った」
「ひとつは、君たちの国連でのパフォーマンスを " unusual " と形容 」(※unusual にはネガティブなニュアンスがあるようですね?)
「もうひとつは、ARMYは15歳の女の子たちだと」
「もちろん変なつもりで言ったんじゃないよ。だって、僕は43歳だけど熱烈なARMYだから。死ねばいい、なんてコメントもされてショックだったよ。わかってほしい、僕はほんとに君たちを愛してるし、ARMYのことも大好き。君たちはすばらしい。ほんとに、生きた心地がしなかったよ」
‥‥と、縷々、語っていたそうです。
RMは「OK! apology(謝罪)に感謝します。もう水に流しましょう」と笑い(この収め方がめっちゃスマート!!)
ジェームスは盛大にホッとした様子で握手を求め、ジミンに向かって「僕は今も君のパパ餅ですか?」と聞いた。
(※以前の出演時、ジミン=Mochi=餅、ジェームスはパパ餅という関係性ができたw)
ジミンも笑って「パパ餅、I believe you!」とハグ。
リンク先に上がっているのは10分のフルver.だけど、テレビで放送されたのは、そのうちわずか5分ほど。
そのゆうに半分を使って、「発言」についての和解が行われたのだ。
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もともとジェームスは気のいい人で、以前の出演回でも、英語が堪能ではなく緊張しているメンバー達にも、とてもフレンドリーだった。
自分の番組を盛り上げるためでもあるとはいえ、東アジアから来たボーイズグループに対して、そんなふうに接してくれる司会者ばかりじゃないのも事実だ。
2017年から欧米に進出したBTSにとって
アイドルグループであること・アジア人であること、
二重の偏見の目がいつもつきまとう中、ジェームスはとても好意的に接してくれたうちの一人だったと思う。
だから「ちょっとしたジョーク」「悪気はなかった」という解釈も可能だっただろうに、そうしなかった。
知らない仲じゃなく、これまでの関係の積み重ねがあったからこそ、お互いに傷が残らない形で、こんなやりとりができたのかもしれない。
もちろん、それなりにシナリオ通りの流れかもしれない。番組だからね。
(ただ、シナリオだとしても、慌てまくって弁解に終始する(きちんとは謝らない)ジェームスを、RMがうまく収拾するタイミングとか言葉のすごさは神がかっていた)
ともかく、BTS側がリスクを取っているのも確か。
RMのほうからその話題を振って、「OK」と謝罪を鷹揚に「受け入れた」わけだから。
女性ならよくわかると思いますが、差別や偏見に対して声を上げると、「かわいげがない」「えらそう」「大げさ」などなど批判する人が必ずいますよね。
だから、声を上げるのはとても勇気がいる。
それでもこういう形をとったのは、ジェームスとBTS、二者の問題にとどまらないからだと思う。
たとえ本人に悪気がなくても、「BTSのファンは15歳の女の子たち」という発言は、アイドル本人やそのファン、アジア系の人々、そして、すべての若い女の子たちへの偏見になりうるわけで(というか、そういった偏見が現に社会にあるからこそ出た発言だろうし)。
こういったフラットなやりとりを放送することには大きな意味がある。
私たちは誰でも、知らず人の足を踏んだり、踏まれたことを我慢したりしてしまうものだから。
現に、RMも歌詞がミソジニー(女性蔑視)だと批判され、謝罪してあらためた経験がある。
彼らはやっぱりいつもひらいていて、コミュニケーションの可能性を信じているんだなと思う。
コミュニケーションって勇気と経験、そして、相手と世界への信頼だ。
欧米での活動が増えたり、大きな賞をとったりして、特に昔からのファンにとっては淋しい思いもあるだろうけど、いつも新しいことに挑戦し、「世界にポジティブな影響を」とつとめる姿は、変わらない彼ららしさだろうと思う。
●11月某日: 夫、在宅勤務。臨時の事務所ミーティング。息子、家庭科で調理実習。お味噌汁一品のみ。自分の分だけ作って自分で食べるコロナ禍スタイル。息子「うちの味になったわ」
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考えてみたら、「あれって偏見/差別だよね」と思うことや、カメラに向かっての「すみませんでした」を見ることはあっても、本人同士で、しかも言われた側の「あの件だけどさ」から始まって対話があり「うんうんわかったよ、君を信じてる」までの一部始終を見る機会ってほとんどないよね。
昨日のRMへの反響がすごい。
いろんな意見があって、いろいろ保存しときたいくらい(アミ誰かまとめてくれないかな~←他力本願)。いくつかメモすると
・ジェームスは終始「悪気はなかったんだ」で通し、主語は全部「We」。差別を指摘されたときの典型的なリアクションであり、この問題の本質を理解していないのでは
・とはいえ、このやりとりをアメリカ全土に放送することにしたのはジェームスも偉い
・いや、大谷に差別発言したMCが番組を降板させられたり、そういうの日本よりずっと厳しい国だから
・悪い冗談に悪い冗談で返さず、「僕たちは妙な発言はスルーしないよ」「ボールを握ってるのはこっちだよ」という態度だったナムジュン(RM)は立派。
・弁解しかしてないジェームスに「“謝罪”をありがとう」と言って収めた。「あれは謝罪が必要な失言だった」という認識を示したということ。そのうえで「もう大丈夫! 空気をよくしたかったんだよ」と明るく言って、これ以上はやめようねとARMYにも示した形
・「僕はまだ君のパパ餅かい?」と聞かれたジミンちゃんが「I believe you」と答える前に、ユンギが後ろから「You are still Papa-Mochi」と優しく言っている! そしてジンくんがいつもの調子でジェームスに軽い冗談を言う。ナイスチームワーク! みんな優しい。
・ジェームスの内心はともあれ、今後ああいう言動をしないようにさせるのが大事だから、RMの対応でOK
・その場で全てを解決しようとしないという選択肢もあるのだと学んだ。ジェームスはまだ本当には理解してないと思うが、今後気づく可能性はある。一方的に問題を指摘されたり、そもそも話題にも上げなかったりしたら、気づきの種すらまかれなかったはず。
私は間違いを一気にテーブルにあげ、きっぱり白黒がついた謝罪を求めてしまいがち。すると相手は自己防衛したり開き直ったりもする。絶妙な加減にするのは至難の技で、適度にお灸を据えることができるナムジュンすごい
・しかも英語。
・こんな態度をとれるようになるまでに、韓国でもアメリカでもめちゃくちゃいろんなこと言われて、いろんな経験してきたんだろうなあ
・バンタンは冒頭でこの話をすると決めていたようだが、ジェームスの焦り具合を見ると、相手とは打ち合わせしていなかったのでは?
・not even a "we accept your apology" but "we /appreciate/ your apology" the nuance is so different this man is so sexy i cannot and will not ever get over him
・Kim Namjoon(RM) just went on national TV to get an apology for ARMYs and he didn't let James off easy, he made him work for it, yes he did that THANK YOU SIR!
Now we have an apology and our leader said it's appreciated, so hey I can let it go. Whew, it feels good to be respected
↑こんな感じで、英語や韓国語のツイートもいっぱい流れてきます。
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うむ。
しかしさー こっちは完全にARMYかつ「言われた側」の視点で見ちゃうけど、これアメリカの人気テレビ番組で流れたってことは、BTS好きじゃない人も見たわけやん。
ジェームスのほうに感情移入する人もいっぱいいるだろうから、だいぶ反感もかってそうだなあ‥‥
わかっててやってるんだろうけど。
キムナムジュン27才。
すごすぎる。