『真田丸』 第21話 「戦端」
家康が氏政に会いに行くのが、なんかぐっときたなあ。大大名だけど人間同士なんだよね。損得勘定だけじゃないし、敵意とか友情とか簡単にまとめられないんだよなあ。人間同士の関係だから。#真田丸
家康の本気がわからない氏政じゃないんだよね。でも本気の(しかも情の入った)忠告とわかったからこそ、素直には受け容れられない感情になったのかもしれない。関八州の覇者たる誇りと自信とを一人で背負い込んでる氏政だからこそ。そう思うと皮肉だよなあ #真田丸
大大名同士の会見に、「うわーっ! 大物同士!」と昂揚する。大河ドラマの醍醐味ですね。「家臣ふぜいに会ってやる義理はない」な高ビー氏政が、江雪斎の頷きひとつで「・・・家康が来てるのか・・・!」と悟るシーンなんて、すごくすごくいい。
考証の丸島先生がツイートしてたけど、駿河と伊豆の国境付近、「韮山」で会うというディテールにもニヤリとしますね。当時、対等な交渉ごとの場合は境目で行うのが基本だったと。
巨頭会談の内容も、シンプルなようで、なんとも含みがあるんですよね。
「家名と領地のため、長いものに巻かれるのは卑怯ではない。頭を下げるだけで何も変わらない。徳川も、上杉も、真田もそうしてる」と家康はまごころから言うんだけど、真田はもちろん、上杉や徳川とだって同列に並べられるなんて耐えられないお人だよね今作の氏政さん #真田丸
北条が滅んでくれればどんなに楽かとずっと思ってたはずの、家康。なのに氏政に会いに行く。
柔らかく入ったあとで、「自分もいつまでも秀吉についている気はない」と揺さぶりをかけ、「手切れになったら嫁にやった娘を返してもらう」とすごむのも、大物の貫禄! 同じく大物な氏政には、これで十分、本気は伝わる。
でもさ、「徳川も上杉も頭を下げたから俺も」じゃなくて、「頭を下げないといけないにしても、おまえらとは違うオプションをつける! なぜなら北条だから!」ってのが氏政だし、「おまえらが頭下げたって俺は違う。なぜなら北条だから!」ってなってもおかしくないと思うんだよね。そういう氏政の性格をよくよく正しく把握してるのが家康だよね。「関八州の覇者たる誇りと自信とを一人で背負い込んでる」ってすばらしく勘所を押さえた人物評ですもの。
だからこそ本多正信の「本心ですか?」発言があるんだと思うの。これでOK万事うまくいく、って行動じゃないんだよね。逆効果になるかも、って可能性は家康もわかってたんじゃないかな。でも、氏政のメンツを尊重しつつ自分だって卑屈にならずとなると、現実的にああいう言い方になる。どっちに転ぶかはわかんないけど、
「古くからの「戦仲間」がみすみす秀吉に滅ぼされるのは何とも複雑。北条に近いのは俺なんだ」
って気持ちで動いちゃうの、わかる気がするよね。そしてそんな家康に「それでこそ我が殿」と言う正信な。何の役にも立たないかもしれないけどせずにはいられなかった、って経験、秀吉にはあるのかな。秀吉と三成には、そんな経験を分かち合ったことはあるのかな。
とはいえ、家康の言を受けていったんは上洛に傾いたんだもんね。北条の家格を考えれば条件付けるのも不思議じゃないし。そこで、「秀吉の前で談判して判断を仰いで…」って、戦を避けたい若者たちが新しい世の秩序を作ろうとして、かえって戦を招いてしまうことになる。やっぱり皮肉… #真田丸
関八州の覇者たる自負を持つ者が、いくら要衝だろうと沼田ぐらいでガタガタ言いなさんなよって思うし、真田だって弱小大名なんだから沼田を手放すのもやむをえまいと思うけど、そうはいかないんだよね。政治的駆引をおいても、人間の心理的に割り切れないの、なんとなくわかる気がするよなあ #真田丸
戦乱の世を終わらせたいというのは三成の理想で美徳なんだけど、談判させちゃうのは、沼田に代表される関東の歴史と因縁と複雑な感情を考慮せず、想像できない人間の発想でもあるんだよね。秀吉は談判が不首尾なら攻めればいいぐらい思ってるわけで。忍んで氏政に会いに行く家康との差が残酷 #真田丸
予告でダダこねまくってた矢沢の叔父上はめっちゃ楽しみです(笑)。叔父上にとって沼田は命も同然なんだよね! わかるよ!!
三成はまっとうで人道的な男だし、秀吉政権のブレーンなんだから自然な立案かもしれないけど、お互いに長年の“おこだわり”の地について、秀吉の前で談判させるって・・・。形式的に頭を下げるよりも屈辱的だよね。高みの見物されたあげくに判定下されるなんて。残酷だわ。確かに、戦をして双方人的ダメージ食らうよりはずっといいだろう、短期的視野で見たらね。でもプライド潰された人間って怖いからね。
三成・刑部・信繁の3人きりのシーンが何となく不吉というか心配な雰囲気にみちてきたなあって。3人とも良い奴なんだけど、なんかこう、「裏目に出るトリオ」感が・・・ #真田丸
何回か間を置いちゃったけど、以前、利休の堺商人の顔を強調した場面があったから、今回の「北条を潰しなはれ」が効いたなあ。商人なら遠くの戦争で儲けたいと思っても不思議じゃない。でも「月の満ち引き」なんてスピリチュアルな言葉もやっぱり似合う。利休も一筋縄じゃいかない造型。#真田丸
なんとなく、「若くて未熟で、政権のために強硬策に走りがちな三成」と「年の功と茶の湯精神(なんだそれ)で諌めようとする利休」との対立、という図式で描かれがちなところ、「戦を避けたい人道主義者、三成」と「潮の満ち引きにしたがって動きなはれ。儲かるのもいいし、なスピリチュアル商人利休」って描き方が新鮮で面白いです。
前回、破たん寸前までいった秀吉と三成の関係は、あの事件などなかったかのように持ち直しているように見えました。本当に持ち直しているのかどうか、両者の胸中は、今週の描写では測れませんでした。どきどき。
怖いのは女性陣。
産後の腱鞘炎とはリアルなネタを。でも茶々にしろ寧にしろ、豊臣の女は政治をしてないんだよね。女の権力争いコワーみたいな描き方じゃなく、思ったまんま言ってるだけ。それが新鮮で、怖い…。それを冷静に観察して政治に用いる阿茶さんが怖いはずなのに怖くないように見えちゃう #真田丸
てか、寧の「秀吉に似たら困っちゃうわよね」に対する茶々&大蔵卿局のあの反応、何?! 不穏?不穏なの?! #真田丸
あの場の全員が(ひいては大坂城の沈黙の総意として)、「秀吉の実子ではない」前提での、誰に似てるのか談義・秀吉に似ないでいいのよ発言なのでは?とするツイートを見かけて、そうかー、そういう考えもあるんだな、と。私は、天然な茶々と寧にドキドキする人一倍敏い阿茶、という図かと思って見てました。阿茶がアワアワしてるのは面白いんだよねw いや無防備すぎる茶々とおっとりしててもさすがにピキピキくるわ、な寧とを見てるの、怖いよねw きりちゃんも空気になるわ。本当は一番怖いのは阿茶さまだと思うけど。
離縁されたおこうさんが生き生きしてて真田で確固たるポジションを築いてるのが、おこうさんサイドに立ったら良かったねーと思うけど、あれ見てたら良かったね通り越して、稲さんのアウェー感がつらすぎて。お父さんと故郷が大好きで、濃い味に馴染めない、まだ子どもなんだよね #真田丸
あの信幸がここから離れて気分転換したいなんて言いだすなんてよっぽどだけど、稲をお父さんのスポイルから引き離すのは信幸にしかできないんだよね。稲が寒がれば、羽織じゃなくて抱きしめて暖めなきゃいけない。側におこうがいるからしづらいってのも信幸なんだけどさ。#真田丸
笑えるかと思いきや信幸・稲・おこうの状況が予想より深刻でな。2人共にいい顔なんてできないのが信幸の性分だけど、このままじゃ2人とも可哀想でな。おこうも稲もどこにも行けない(行きたくない)んだよ。だからやっぱり信幸も向き合わないかんよね。そして信幸はきっとそれができる男! #真田丸
日の本一のつわもの、って称号を後世与えられるのは信繁なんだけど、「日の本一のつわものになってくれ」ってお兄ちゃんが言われましたね。とても印象的でしたね。まあ、日の本一厄介な舅からのお言葉ですがw #真田丸
シビアな状況ではあるんだけど、大泉洋にはやっぱり笑わされる。上田と駿府を数日で往復する舅ってw 本多忠勝そして藤岡弘、だから許される高速移動ww 娘にかまけて仕事はどーなってんだ、と思うけど、家康も平時は平八郎のこと苦手だし(非常時にハイになるとやたらと気が合うわけだがw)、放置なんだろうなーって想像できるw
「最近、気の張ることが多すぎます!」と直球で切実な嫡男の訴えを、いともたやすく右から左に流す昌幸w しかしこの場合、正しいです。お兄ちゃん頑張らねば! 一夫多妻について、「両方に良い顔して不実な男」っていう品行方正な奥さまたちのステレオタイプな批判が想定される中、「両方に良い顔しないと、このままじゃ2人とも不幸になっちゃうぞ」って感じの展開に持っていってる感じが、スリリングでわくわくします。
それに引き換え信繁、てめーは。このまま秀次事件が来るまでいきそうだな・・・。まぁ信繁にしたらモンスター秀吉のそば近くに仕えて毎日それだけでいっぱいいっぱいだろうし、胃を痛めずやっていけてるだけでもエラいというか図太いんだろうけどね。しかし困ったことがあればきりちゃん(を通じて秀次)に頼み事したり励ましてもらったりしといて、いまだに自分が振り回されてるような顔するのはきりちゃんさすがにかわいそうであろう。
ここ何回かの異様な緊張感はなかったけど、なんだか悲哀を感じる回だったな。寧、秀次、三成、稲とおこうにも悲哀。強い誇りと心弱い嫡男が滅びに繋がりそうな氏政も。隠し扉をあっさり却下された昌幸も。娘と暮らしたことない信繁も。薫も元気に拒んでたけど京に行かされちゃうんだろうな…。#真田丸
うん、でも、昌幸と薫のシーンはやっぱり面白かったです。「そういうわけでもない」「ひ・・・」って言いあぐねて、結局人質だと言っちゃう昌幸。とたんに態度を硬化させる薫。昌幸だって、うまいこと騙くらかして行かせればいいものの、そこは仁義を通すのね。あとでバレたら100倍めんどくさいのを経験上知ってるのか知れないがw
縁側がまだ出来上がってない京都屋敷の様子もよかったです。昌幸が大声出すたびに、縁側通ってる侍女がびくっと。