霜月の七 / WLBプレゼン勉強会 王さん

●11月某日:
ワークライフバランスプレゼン勉強会】今月のプレゼンターは王貞月さんでした。
私が編集した王さんのインタビュー記事、最初の段落を「日本語についての悩み」で始めたのは、この問題を多くの人に感じてほしかったからです。

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私を含め大多数の日本人は、「言葉が通じない」困難を体験したことがありません。
海外旅行の一週間や二週間なら、カタコトでも何とかなる。けれど市民として生活し、仕事や育児までするとなると、言葉の不自由は大きな問題になります。
特に、「在留外国人の妻子」の困難は深刻です。
 
電話での日本語のやりとりが苦痛で(電話では身振り手振りや表情での意思疎通もできないもんね)、家の電話が鳴るだけで怯え、ノイローゼになる妻。
最初は「名前と連絡先だけメモしていればいいよ」と優しかった夫も、
2年、3年と経つと「まだ日本語が上達しないのか」と苛立ち、怒り、夫婦仲にもヒビが入っていく。
また、子どものほうが日本語が上達し、いつまで経ってもしゃべれない母親を軽蔑するようになるケースがあることも以前聞きました。
 

このような個人の困難の背後には「構造の問題がある」と王さんは言います。

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(撮影 橘ちひろ

日本には、在留外国人の家族を考慮した法律がない。昔は、在留外国人の妻はアルバイトすら法律で禁じられていた。
また、画一的な言語・文化でやってきた日本人は、外国人のカタコト日本語に不寛容。テレビでも、カタコトの日本語をイジるような風潮、まだありますよね。
 
夫の仕事の都合で日本語が話せないまま来日したとして、バイトすらできず、カタコトをイジられたり嫌がられる環境しかなければ妻の日本語が上達するはずもないですよね。
 

構造の問題は、私たちの日常の様々な場所に見られます。
 
育休を取る人と、現場に残る人との感情的な対立。
学位が欲しい院生同士が、セクハラ教授の寵愛を巡って嫉妬し合うこと。
ワーキングマザーと専業主婦。
 
そういった対立が生まれるのは、なぜ?
当事者同士の対立を高みから見下ろし、既得権にあぐらをかいているのは、誰?
誰もが育休をとったうえで職場の業務が滞らないようマネジメントすべきなのは誰? それができる労働条件を用意すべきなのは誰? 公的な制度に不備はない?
そういうことを、考えていかなければならないんですよね。

 
台湾では、女性議員が38%を超え、学界での女性研究者の割合も日本よりずいぶん多いそうです。
その背景や歴史を聞くと、日本がいかにガラパゴス状態なのか、つくづく思い知らされます。
日本は長いこと平和で、人口が多く、経済的な繁栄もあり、国内の文化や慣習でじゅうぶんやってこれました。
 
つまり、男性が中心になって、長時間労働や、滅私奉公のように職場に尽くす。
それが当然という文化・慣習です。
とはいえ、少子化と高齢化がこれほど進んだ今、パラダイムシフトするには十分の局面だと思うんだけど。
まだまだ、このガラパゴスはかんたんには変わりそうにないですね。
現在の香港の状態についてのお話も深く考えさせられました。
 

日本語の困難、切迫流産、研究の途絶…
いろいろな体験を経ても、王さんは不屈で勉強家。
(ご本人は勉強は嫌い、遊ぶのが好きと言うけど、私から見ると王さんは本当にいつも勉強熱心で頭が下がります! 見習いたい。)
 
そして、いつも明るい。私たちも、まだまだ絶望せず、明るく取り組んでいこうと思うのです。
 
カレーを食べて帰宅すると、テレビでやってるサッカーを見ながら、夫はアイロンがけ、サクは並んで宿題をしていた。かわいい。夜ごはんは、サバ、豚汁、チャプチェ、大根とこんにゃく煮。