『アンナチュラル』 終わりました

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もちろん全話見てました! 中堂さんも六郎もよかったね。ミコトを巡るトライアングルが始まりそうな気配すらない最終回が、くーっ いかす!

思い出しながらザッと振り返る。

・4話。従業員の敵かと思われた工場長が実は自分もブラック労働の被害者で過労状態にあったというひっくり返しがリアル。死の真相が明らかになり悪者が報いを受けても、亡くなった人は帰ってこない。その重さが、遺されている子どもたちを見るとのしかかってくる。ずん飯尾に続いて、我が家坪倉の「普通の社会人」感の秀逸さ! 奥さんが美人(戸田菜穂)なのもナイスキャスティング。

・5話。三男がやっちゃった、恋人を殺されて遺体を盗んできて、真相判明したら我慢できなくて刺しちゃって現行犯逮捕、三男、みつおーーーっ! という、『ひよっこ』ファンをメッタ刺しにしてくる回。泉澤祐希くんの、「田舎から出てきた青年」の鉄板感よ。しかし私はドラマ化があと5年早ければ、『精霊の守り人』のチャグム皇太子は彼が適任だったと今でも思っています!!!(聞いてねぇよ)

・6話。東海林のピンチを救うはずが女同士の友情のピンチにまで発展していくのが面白いw 警察の捜査に対して、中堂が決然と東海林の逃亡を促し、所長が早口で喋り倒して煙に巻くところがハイライト! 「彼女は早退してボーイフレンドのところに行きました」 警察「ボーイフレンドの名前と住所は?」 「そんなこと知るわけないでしょうそんなこと聞いたらセクハラで訴えられますよ私は厚労省出身なのに・・・」云々w

悪い仲間の一人だった小型飛行機のパイロットはともかく、たまたま乗った善良な家族が巻き込まれて一緒に墜落してしまうのか否か、読めなくてハラッハラした。ミコトたちと一緒に「ブレーキ、ブレーキ!!!」て腹の中で精いっぱい叫んでたよ。ラスト、ミコトと東海林が「ひと仕事終わったねー」って充実感で一杯ひっかけてるシーンもよかったし、個人的に一番面白かった回かも。

・7話。パプリカSくんが殺したという横山くんは、きっと自殺なんだろうなあ、でもきっと、その後ものうのうと日常をむさぼってる子たちのいじめによる自殺なんだろうなあ・・・とあらすじは見えていても、つらすぎる回。いじめ。親が気づくにはどうしたらいいんだろうか。気づけないものだろうか。いじりだって本人がイヤならいじめだけど、されてるほうがイヤだというのは難しいんだよね、特に子どもは、、、など、見終わったあと、夫と話し込んだりして。

ところで横山くんを演じてたのは、『監獄のお姫さま』でキョンキョンの息子だった子ですよね。もっと若い頃の柳楽くんを思わせるような、ちょっとエキゾチックな顔立ち。

・8話。待ってました六郎回~~~! 父親(伊武雅刀! 少なくとも六人の子がいる、70代にして大学生の息子がいる説得力!)に対してオドオドするのも、ミコトに対してドギマギするのも、バイク飛ばしてるときの少女マンガ感も窪田正孝堪能劇場だけど、「二度と家の敷居はまたぐな」と言われたあとUDIラボで「お帰り」って言われて笑いながら泣く・泣きながら笑ってるみたいな演技が、もう窪田正孝全開で、脚本演出わかってる!!!!!って感心しながら見てましたw 

ミッキー・カーチスとの将棋のシーン、迷いなくまっすぐに勝ちにいく六郎もよかったし、戻ってきたら盤上の形勢が一変してて「ええっ」と驚く所長もよかった。。。

・9話。勘助が怖い勘助が怖すぎる~! と『カーネーションクラスタをおののかせる回。そして中堂。恋人との出会いやお付き合いの回想シーンが、平凡といっていいほど割となんてことない、ごく普通の恋だったんだなあっていうところが、それが理不尽に奪われた前提で見ると切ない。「クソ」はユキさんの死後に始まったもんじゃなく、中堂の通常運転だったのが超納得。

・そして最終回。

死を扱う架空の組織UDIラボなので、最終回には倫理的な問題が問われたり組織の存続が俎上にあがるのは予想されたこととはいえ、ノッてるドラマって図らずも現実とリンクしてしまうところがある・・・という一例に、今作もなった。

再登場した吹越さんの烏田弁護士は、ミコトに検死鑑定書を改ざんするよう迫る。それは真実クロである高瀬をきっぱり有罪にするための戦略で、その目的においては烏田も中堂も一致している。中堂を思えば、またUDIラボという組織体を思えばミコトも揺れる。

でもミコトはそれを拒否・・・する前に、所長が拒否してた!! 「部下に背負わせるわけにはいかない」マッチゲ豊さんのこういう役の滋味深さよ!  永田町そして霞が関、刮目して見ろよ!って思わせるよね時節柄。「目的のために手段を選ばない」ことが正義だとか「現実的」だとか称揚されがちな、過去から現在までの男性社会の体現が烏田ならば、「I have a dream」というキング牧師の言を引いた神倉所長は未来の希望の象徴。

3話の法廷で「女は感情的だ」と軽侮されたミコトが、最終話で再び法廷に立ち、プロフェッショナルの仕事を見せたうえで、「あなたの不幸に興味なんかない。でも、同情します」と感情をあらわにすることで犯人の自白を引き出す・・・! しかも、「俺がやったんだ! 俺はかわいそうなんかじゃない!」と犯人が喚き散らすと、ミコトはかすかに笑うんである。そこにはミコト自身のエゴも見えた気がする。すごいシーンだった。

男だろうが女だろうが人間は死体になってひと皮むけばだいたい同じ機構をもっていて、人間の機構の1つである脳が動いていれば、性別にかかわらず感情があるのもあたりまえ。

なのに社会(つまり男性中心社会)では、感情は女々しくて不要なものだと切り捨てられがちだ。というか、女であるという時点で「感情的だ(だろう)」というレッテルのもとに軽んじられる。でもこのドラマでは、「法医学」という究極のロジカルを追求していったら感情にたどりついた。

そしてミコトは「絶望しているヒマがない」と笑う。不条理な死に向き合い続けることがミコトの生を支える希望になっているというアンビバレンツ。アンナチュラル。それこそが生きてるってこと。

もちろん、中堂と宍戸の肉弾戦も、最終回の見どころだった! たっぷり尺をとってくれてありがとうございます! 宍戸という男、北村有起哉をキャスティングしといて徹底的にクズだったという造形が痺れました。ただ問題は、私がユッキーヤを好きすぎて、宍戸がただのイケメンにしか見えなかったりすることですw 窪田くんの六郎とおっしゃれーなバーで飲んで重要な会話を交わすシーンも、ただのイケメン俳優たちのPVとしか思えなくてww

井浦新すごくよかった。線が太いセクシー。石原さとみの抜け感・こなれ感には自分に対するゆるぎない自信が見えて、それがヤだっていう人もいるんだろうなーと思うけど、私は好き。

薬師丸ひろ子のお母さんの造形。事情のある子を引き取って娘としながら「放任しすぎちゃった」っていう育て方もすごいし、それを後悔して今さら結婚相手の世話を焼き始めるってのも面白かった。でも「一人でなんか持てっこないって」ていうのがミコトを育てた軸だったんだろうなあ。昆虫学者だというミコトのお父さん、そして葬儀社の南雲(最終回のスキップサイコーだった! 長い脚が映えるわぁ)の周辺の描写があまりに足りなかったのは、続編を期待してもいいんでしょうか?!