『真田丸』 第20話 「前兆」
史料にもある落書事件をうまく取り扱って人間模様と政権の内外を描く、今週も鮮やかな手腕で惚れ惚れと、寒々としましたね。秀吉の「実はこういう人間だった」があり、それを見抜いているのが寧々であることで、これまでどこか心許ない存在だった寧もまた「実は」という一面を見せるのが大変面白くスカッともするのだけれど、そこにはやはり怖さ悲しさもあり。
寧が「本当は冷たい秀吉」を最初からわかっていたというのがすごく腑に落ちた。今日のように、昔から秀吉の冷酷な面が顕在化して問題になりそうなとき、寧がサポートしてきたんだな、と思わせた。政治には疎い田舎のおっかさんだけど、やはり天下人の妻たるに相応しい力があるんだなと #真田丸
本当は冷たい秀吉だからこそサポートが必要なんだ、それができるのは自分しかいない、というのが寧のアイデンティティなんだろうな。そんな揺るぎない強さをもった諫言だった。でもそれが茶々の存在をより強くすることでもある皮肉。秀吉が去ったあとの複雑な表情。鈴木京香すばらしいわ #真田丸
「人は痛いところを突かれると最も腹が立つ」。腹の子の父親について一番疑っているのは秀吉、ってのがすごい説得力。それを寧が見抜いてるってのも。けれど、男児が生まれるのは確信しきっているところが、天下を獲る人間たるゆえんだな。「姫の可能性もある…」とは微塵も想像しない強さ #真田丸
「秀吉は昇りつめてから耄碌したのではなく、最初から怖い冷たい人間だった」という解釈が、目から鱗とはこのことかと。そしてその片鱗を視聴者はちゃんと見ていましたよね、大坂編の最初から。
「おまえは黙ってろ!」と一喝されてちょっとも怯まず、それどころか「私が出んと収まりがつかんでしょうが」と返して懇々と説く寧の姿には、きっと昔からこの夫婦はこうやって歩んできたのだろうと思わされるものがありました。
だから先週秀吉が寧を称した「戦友」という言葉は、ある意味的確なんですよね。でも悲しいのは、寧は秀吉を愛し、小さく始まった家族を愛しているから共に戦ってきたんだということ。秀吉にはその気持ちがない。茶々関連の件で、茶々に頼んで根回しまでして、出てこなければならない寧の気持ちは慮らない。
腹の子の父親を一番疑っているのは秀吉。それを見抜き、秀吉が怒り狂えば怒り狂うほどに、秀吉を哀れにも思い、茶々の存在の大きさを思って悲しかっただろうね。自分が秀吉と一緒に作った豊臣家に、茶々がどんどん浸食してきてる。
とばっちりで処刑されていった門番たちを思えば、もっと早く寧が出てきてくれたらよかったのにと思うけど、寧の気持ちを想像すれば「なんで私が」ってなりますわよな。それでも最後には出てきた。秀吉が茶々を追いかけていくのはわかってて。秀吉が出て行き、三成と信繁も退出したあと、肩で大きく息をつく寧さまに胸がきゅっとした。
ところで今回は寧と阿茶局の初絡みがあったんだけど、阿茶ちゃんに侮られずちゃんと正室外交できてるやーん!という寧にホッとしたのもつかの間、行幸のこと、懐妊のこと・・・。妊娠というものの知識がほとんどなくぼんやりしてる寧の姿もだけど、やたら妊娠に敏感な阿茶も、それはそれでな。阿茶はこれまで、数多の側室やら何やらが家康の子を宿す姿を見てきてああなったんだよな、と思えて三谷さんはほんとにすごい・・・。
秀吉の暗黒面を寧がケアし、重荷を弟の秀長が肩代わりし、三成が優れた実務能力を発揮して、母や妹は人質に。豊臣も真田と同じく、身内で力を合わせてきたんだなとあらためて思った。その結果の天下人なんだなと。それを茶々の存在が壊していく。いや茶々に惚れた秀吉自身がというべきか…? #真田丸
秀吉一家も、もともとは戦国を生き延びるため、底辺から這い上がり少しでもいい暮らしをするため、蔑みの目を見返すため、才能を発揮するために、みんなで頑張ってきたのよねえ。その結果が大坂城の栄華。だけど作り上げたもののために家族が苦しみ、犠牲になってゆく。
「わしはなんと言われてもいいが、息子を貶められるのは許せない」これは秀吉の本心だろうな。いくつもの父と子の物語を描く #真田丸 で、秀吉はどんな父親になるのか、良い予感がまるでしないだけに三谷さんは何か斜め上を仕掛けてくるだろうなとも思う。
寧(と、恐らく母のなか)がこれほど大きな愛情で秀吉を包んできても、ダメなんだなあ。秀吉の冷たさと自信の無さは、やはり生育過程にあるんだろうなあと思えるセリフでもあった、「若い頃から禿ネズミと…」云々。自分が蔑まれてきたからこそ、息子は絶対にそんな目にあわせたくない。そのためなら何でもする。父に過剰に愛される息子か・・・。
そして今回は意外にも三成回でもあったのです! プレミアムトークに出演したのもわかりますね。でも、関ヶ原の前後にもう1回出てくれますよね?!
「本当は昔から冷たかった秀吉」を寧はちゃんとわかっていた。三成も多分そうなんだろう。三成は秀吉をどう思っているんだろう。彼の忠誠心の源はまだ語られていない。確かなのは、同じく心からの諫言で寧は秀吉を説得できた。三成にはできず、切腹を命じられた。三成の心中やいかに。 #真田丸
犯人として道休の首を差し出すことに、「殿下を欺くのか」と三成。これまでそんなこと思いもしなかったんだろうね。豊臣家のためにその一線を超えた。そして命を賭ける覚悟で秀吉に諫言した。それはあっさりと退けられ、切腹を命じられた。三成の中で何かが終わったんじゃないかな、今日 #真田丸
最初は平野某と信繁で十分だと踏んでいた落書事件。細部が明らかになり、秀吉が凶行に走るのにしたがって、苦悩の色を深めていく三成。そしてついに秀吉に食ってかかったあげくあっさりと退けられ、切腹と言われる三成・・・!
秀吉は怖くて冷たい人。寧はわかっていた。「最近とみに怒りっぽくなった」と言う秀長は、そば近くにいながら秀吉の本質をわかっていなかったことになる。では三成は? そこがまだ語られていないってのが今後のポイントであり今後の楽しみ!
でもきっとわかってたんじゃないかな、とは思うよね。大谷刑部を止めたのも、わかってるからこそで。秀吉が冷たく怖いのはわかってたけど、でもどこかで、「自分には違う」と思ってたんじゃないかな。自分は家族のようなものだから、と。佐吉のころから可愛がられてきた自分が魂を込めて説得すれば、殿下はお聞き届けくださるのではないかと、信じたかったんじゃないかな。いや・・・半信半疑だったかな。それでも彼は賭けた。そしてその思いはあっさりと砕けた。
「これ以上の殺生は無用。佐吉は正気です。乱心なさっているのは殿下です!」
うーん、直球。まっすぐな男、三成。しかし真人間ならこれで目が覚めるわな。「腹の子の父親のことを秀吉が一番疑っている」とまで、三成は気づいていたのだろうか? 気づいていたとしても、家来の分際で茶々と同じセリフは言えんわな。三成も寧々も、「あんたが暴れれば暴れるほど、世間はあんたを見限るわよ」って言ってるのは同じ。ともかく、三成にしたら、「自分がここまで言えば、殿下は聞いてくれる」と思ったのだよね。あー。悲しい。
ただ、秀吉を見ると、「この件は道休の首で終わりに」と言った三成を、猜疑心にみちた目で、じいいっと見るんだよね。「コイツ、俺を騙してないか?」って、「天下人になれる怖い男」の勘でわかったみたいだった。それが「切腹を命じる」にもつながったんじゃないかな。
三成にしたら、疑似父とも慕う秀吉のために苦渋の決断で着いた嘘でも、秀吉にしたら、騙しても、騙されるのは許せない。秀吉と三成の関係が来週からどう変わるのかは、見もの。もはや愛されていないことが明白な疑似父に、それでも尽くし続ける三成・・・って姿が描かれそうで、今から泣きそうじゃないか!! 思えば、いろんな父子が描かれてきたけど、父をめちゃくちゃ愛してるのに父にまったく愛されてない(なさそうな)息子って今まで出てきてないよね。
門番たちの処刑をひどく重く受け止めたり、落書の犯人を「民だ」と言ったり、予告では「乱世に逆戻りだ」と。今作の三成は秀吉と豊臣家だけに傾倒しているわけじゃなく、大局観を持った人間なんだな。彼がどのように関が原に突入していくか、史実はわかってるのに全然読めないよ #真田丸
そして、佐吉三成はやっぱり秀吉の疑似息子でもあるんじゃないかなと。秀吉のがわはどうあれ三成はそう思ってるんじゃないかな。信繁より先に、三成が「愛と勇気の旗を掲げて」死んでいくのかな、と想像すると、すでに胸がいっぱいになるね… #真田丸
この事件の犯人を「決まってる、民だ」としたラストに、社会派ミステリーというかなんというか、すばらしくゾクゾクしたんですけど、ほんっと今作の三成は賢く、しかも真人間なんですよね。それはよくある「融通が利かない三成像」ではなく・・・。民の総意があったからあの落書は可能だった。政権はそれを肝に銘じなければならない。三成はそれをわかっていた。秀吉政権の「光」の部分が三成だったといってもいいんじゃないかと思え、それはなんと画期的な三成像でしょうか。
で、これまで、真田丸には珍しいくらい、見た目も中身もめっちゃ真っ当でいい人だった大谷刑部が、そのめっちゃ真っ当で良い人ゆえに、ちょっと厄介なんじゃなかろーか、ってのも見えた今回ですよね。で、三成は刑部のためにも頑張っちゃいそうだなあ・・・。胃薬もなしに頑張る三成・・・。
新しい制度が社会に新たな落伍者を生み出す面を刀狩りで描いた。多くの命を救うためとはいえ、既に死者とはいえ、無実の者の首を用いるのをためらわない信繁が、いざ死体を前にすると首を斬れなかった描写が絶妙。それを顔色ひとつ変えず行った刑部。苦い顔の三成。三人は共犯者になった #真田丸
愁嘆場確実と思われた信幸おこうターンが、今回のまさかの癒しでww
薫の侍女として城に残るという、おこうさん、まさかのバイタリティ。「寒い」と存外な素直さを見せた新しい嫁を暖めなければならない信幸の肝を冷やすw 信幸がうまくやれるはずもなく、稲がおこうの存在に気づいたときの反応が楽しみじゃないかw 平八郎パパには知らせるのか否か? #真田丸
避けられないからにはすべてをかぶる覚悟で「自分が決断した」ことにする信幸の実直さに比して、「わしは断ろうとした」「やめるか?」と、この上ない軽さでしゃあしゃあ言ってのける昌幸のロクでもなさよねw 同じく嘘をつくのに天と地ほど違う父子だよw 佐助が躊躇うのもぐっときたね #真田丸
あれだけみんなで抱き合って泣いた愁嘆場のあとで、ケロッとしてる薫とおこうが最高。「そういうことになりました」って澄ました顔で事後報告。#真田丸 の女性たちはみんな実に強くて逞しいよなあ。自我が確立してるというか。大坂の寧や茶々ですら、安っちい「可哀想」からは遠いところにいる。
いやでも、「離縁ですか? かしこまりました(棒)」からの「でも私としては・・・何がいけなかったのか・・・」と震えながら手で口を覆う、の一連の演技がすばらしくてだな!! 長野里美さん。知らないけどすばらしい女優さんってまだまだいるんでしょうね。がば、と抱きしめる信幸もめちゃめちゃよかった。そのあとの昌幸の「やめるか?」の軽さなw
「戦国はそういうもの」「真田家のため」と言ってたおとりさんが、こういうのは許せないんだな、ってのにじんとした。しかし「できた嫁じゃ」「もう嫁ではありませんが」「そうであった」の何げにひどいやりとり(笑) そして薫さまはやはり、いつも情の深いお方。
「寒い」と言われて抱きしめるんじゃなく羽織らせるって、君たちゃー初夜に何やっとるんだね、と言いたくなるが、やはり信幸、なんとも良い人ではないですか。不本意ながらもこういう縁になった以上は、相手を尊重してしっかり向き合おうとするのが信幸だよね。そこに居るおこうwww
今作の茶々は嘘がつけない性分の設定なので、捨の父は秀吉で間違いないと思う。秀頼のときも茶々の挙措で父親が秀吉か否かはわかるはず。キャスティングを見ると大野治長の可能性は相当減じた気がするけど、逆に二枚目でないのが面白いかもとも。大蔵卿局はかなり重要人物感あるしね #真田丸
相変わらずの信繁の無力っぷり、若造っぷりがすごいな。探偵業務や小細工には能力を発揮しても、秀吉の真の怖さも、茶々の悲しみや諦めも、今日の三成の苦さも、ぼんやりと輪郭を見てるだけで未だ深くは理解していないような。その未熟さが何だかリアリティ。結局は他人事なんだよね全部 #真田丸
戦国乱世から太平の世に向かっているはずなのに、毎週毎週寿命が縮む思いで見てるんですが、秀吉が死ぬまでだけでも、まだあんな事件やこんな事件が目白押しなんですよね・・・。
なんだかんだで逃げて他人事でいようとして、他人事でいられてる信繁がそうもいかなくなるのは・・・やっぱりきりちゃんだよなあ。きりちゃんと秀次。そして、そう確信させるタイミングで、信繁の3人目の妻のキャスティングが発表になった今週末でした!