『真田丸』 第18話 「上洛」

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やっとこさ昌幸が上洛したわけですが、いやー、つらかった。皆さんどこが一番つらかったですか? 

私は、上々の品々を調達して準備万端怠りない、ってそわそわしてるところに三成が入ってくるシーン。そこは三成なんで何の忖度もなく貶して(とはいえ本質的には箱を替えるなど謁見を成功させようという努力がああなっちゃうのが三成は三成で悲しいところよ…)バッサバッサと父上の心を斬り刻むんだけど、そこで食ってかかる信幸をおさめて、自慢のはずの品を「すぐに下げろ」と言う表情がもう、ピークじゃないですか!! 哀しすぎる。

信繁が、先回りしてあれこれ気遣ったり説明したりするのもしんどさに拍車かけてた。父のため真田のためを思っての言動なんだけど、言外に「父上は何もわかってないから」と言ってるようなものでさ。



でもこれまで、昌幸は完全に時流を読み違えて、「秀吉なんぞ」って気持ちのみなのかと思いきや、そうじゃないんだ、ってわかったのは、哀しくもちょっとした収穫だった。



これまで北条や上杉、織田にまでホイホイ下についたのに、どうして秀吉をそんなに拒むのか?とネットで散見したけど、ひとつには秀吉は東の国衆にはそれだけ遠い存在だったんだと思う。

長年戦ったり同盟したり、敵味方にかかわらずお付き合いの長い相手なら力量も読めるけど、秀吉は主に西の戦線にいたから。伝わってるのは、出自が百姓という成金化け物みたいなイメージ。言ってみれば、国内の大きな老舗企業の傘下に入るのは許容できても、、外資のしかも欧米じゃなくこないだまで最貧国だったみたいな発展途上国がいきなりのし上がってきたのに躊躇いなく降ることができるか?って話。

秀吉は東の国衆(大名レベルになると情報収集力など事情が違うからちょっと変わってくる。家康は直接戦った経験があるからまた違うし)には海のものとも山のものとも知れぬ存在で、忌避感があったんだと思うのね。矢沢の叔父上の反応がそれを表してる。「海のものとも山のものとも知れぬ存在」なのは、大坂編に入るまでまっっったく秀吉を出さなかったことで表現してたと思う。大坂編に入って、視聴者は源次郎視点が見られるから、それが分かりづらくなったのかな。

さてさて、もとい。当初はともかく、とり母上とのやりとりを始め、「ほんとは行かなきゃいけない」のはだんだんわかってたんだろうなあ・・・というのが随所でわかる昌幸の描写だった。「大坂城をどう攻める」なんてうそぶいても、そんな日がそうそう来るわきゃないのはわかってる。真田がどれだけ小さく吹けば飛ぶような存在なのか、本当は昔から昌幸が一番よく知ってた。だから三成に貶された進物をサッと下げることができた。悲しいけど、正しいリアクション。

己の小ささ、時代が変わりつつあることを、「わかってるけど」認めたくなかったってことなんだね。それは、「まったく気づかないでいる」こととは、随分違うよね。事実に悲哀が漂うのは同じだけれども。

それも踏まえての話、先週は胸がギュッとなってたまらなかった「教えてくれ。わしはどこで間違った」のシーンが、意外に重たくなかった。「間違ってなどおりませぬ!」と即答する信幸がいてくれたのもものすごく大きかったんだけど。

今週の放送を見てみれば、信繁がわかりやすく説明してくれたとおりw、大名になって、領地は安堵され且つ秀吉傘下に入ることでより安全保障度が高まったし、昌幸は判断能力が衰えきってるわけじゃないし、馴れ合いの仲ではあるけど「明智光秀になってやる」と言ってくれる腹心もいるし、母上は背中押してくれるし奥さんは相変わらず元気でマイペースだし、息子たちは間違ってないと断言してくれるし、大谷刑部ほどの男が戦上手を絶賛してくれるし、結果を見れば上々やん。

そりゃ、もうちょっと早く上洛すればもうちょっと良い待遇だったかもしれないけど、宿所が寺なのも、徳川の与力になるのも、真田の規模や格を思えば同じだったんじゃないの? とりうる選択肢の中ではかなり良いとこにつけたよ。どっちみち、独立維持は難しいんだから。





「どこで間違った?」って、息子たちみたいに真剣にならなくても普通に「いや全然間違ってないよ。真田がんばってるよ、全部守れてるじゃん」って話だった。

問題は、昌幸がプライドをへし折られたことだけなんだ。猛獣が猿に飼い馴らされる屈辱(秀吉に対する「ははー」って返事、完全に獣を意識した演出だったよね)。よりによってこのタイミングで徳川に挨拶に行けとか言われちゃ、今まで頑張ってきたの何なの?って思えてならん、っていう。

たかがプライド。たかが、これまでの否定。それを引き換えに大切なものを守れるならいいじゃない。

・・・・って、簡単に割り切れないのが人間なんだよあたりまえだろ!!!

って話に今週なってたのが、なんかすごく面白くて、良かった。昌幸まだ全然イケるよ。ダメになんかなってないよ。ただ、自分自身が悔しいだけだよ。で、この人、悔しいとかあきらめないぞって気持ちがバネになってびっくりするほど跳んじゃうタイプじゃん。で、そのバネの大きなひとつになるのが生きていた松姉!!




姉上との思い出がろくでもなさすぎて泣ける(笑)。思い出で語られる松さんと「姉上ってやめてくれません?せめて妹に」ていう図々しい藤さんはかなりつながってる!! 背中で漏らして、っていう昌幸のエピソードが最高だったね。親にとっては愛おしい思い出なんだよね。かかとのカサカサかよ!!て、つんのめったけど、あれは愛しい夫の茂誠を庇うための、必死の茶番だった。ほっぺペチペチして再会を喜ぶの、真田家の家族の距離の近さをあらわしている。

高笑い家康(おめー、来週は何か困れよ!)に平伏する昌幸は、確かに屈辱もあっただろうけど、もう悲愴じゃなかった。小さな小舟、真田丸の新しい航海がまた始まっただけだ。




三成によって自己紹介を封じられたとこ含め、今週も終始すてきだったお兄ちゃんですが、「父上の話ではない。俺たちの話だ」と、そこからの発言に、キャーッ☆てなりましたよね。大坂に呑まれてあっぷあっぷしてる源次郎(それはそれで環境的にしょうがないんだけど)と違って、お兄ちゃんは「俺たちの時代」のことまでもう考えてるんだ! そして戦場で暴れまくりたい性分もあるお兄ちゃんのとこに、あの猛将の娘がもうすぐやってきます!!



んで、何だかちょっと浮いてた利休とのシーン、「悲しみのあまり別人になってしまう」は、茶々を指してるんだろうな。・・・もしかしたら、この先の秀吉も? 利休はそんな秀吉によって(ry って考えると趣深いシーンになるのかもしんない。




秀吉の真田への処し方が、私情っていうか、真田を気に入ってる気に行ってない的な部分がほんのちょっとしかなくて、あくまで全体を考えた為政者らしい手当だったのが、すごく良いと思った。だからこそ、寧と茶々との前での態度の違いに見る「からっぽさ」の怖さも引き立つ。



真田安房守に対する直江兼続、石田三成、大谷刑部の応対の仕方の違いが三者三様で、本当に面白かったですw 

 

 

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