『真田丸』 第17話 「再会」

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信繁と松の再会。信繁と家康の再会。家康と秀吉の再会。旭となかの再会。



家康の上洛とその経緯は戦国ドラマでも屈指のイベント。史実はどうあれ巷間伝わるエピソードを用い、真田を無理なく交わらせながら、こんなふうにまとめてきましたか!! 作家の面目躍如だなあ。



しかしその危険物回避能力ゆえにますます秀吉に気に入られ、茶々のそば近くに控えることになる源次郎なのであったw 近寄るとヤバいっていうのは重々承知しつつも、香気をふりまく美女への嫌悪感があるわけではなくむしろ「あの方は悲しむことをやめたのです」を聞いているからして、性善説な源次郎くんはいつかどこかで茶々という女の深いところに触れてしまう(直接的な意味じゃなくね、もちろん)可能性はあるな。

秀吉にはいつも通りきっぱり否定したのに、茶々に対してはきりと「良い仲」だと言ったのは、源次郎も大坂城流の駆け引きに多少なりとも慣らされてきてるってことかな。きりちゃんは、源次郎にはまたぬか喜びから落とされるんだろうけど、大坂城内ではそういう「てい」でいることで、秀次の魔の手から逃れられるかもしれない・・・! 信繁が大坂城に囚われればきりちゃんも。信繁が救われればきりちゃんも。やはり二人は運命のパートナー。

でも、「良い仲な2人」を知らされちゃった茶々の孤独、面白くなさは、募るよね…。悲しむことをやめるってことは、大事なものを作らないってこと。本気で愛したり愛されたりしないってこと。だけどそれはとても不自然なことだし、心を引き裂かれてしまうほどの悲しみを味わった茶々は、本来はとても情の強い人なんだろう。・・・ってとこまで想像させる、先週の「悲しむことをやめたのです」の一言な!!

「貸すのはいいけどちゃんと返してね」は、軽口のようだけど、清正に貸したまま帰ってこなかった権左を指してるんだろうな。信繁の賢さについて「おまえは権左とは違う」と言った秀吉も、「賢くなければああなるのだ」と事実上、権左の死の因果関係を認めている。そうやって、平然と暮らしが営まれている。ここはおそろしいところです・・・! 信繁がんば・・・!



これ、おこうさんが気を遣って(カッカきてる信幸の力を抜いてやるために)話を逸らしたんじゃないか説もあるけど、私はおこうさんのあれは天然だと思ってる。表向きのことはどんなに言われてもわかんないし、わかんないことは右から左にスーーーッと聞き流す人で、それが信幸にとって歯ごたえのない、物足りなさを感じることがあるのも事実なんじゃないかと思う。

信幸は誰にも話を聞いてもらえない(以前3話だったかな? 信繁すら、信幸が落ち込んでるのを知っていながらそこは全然気にかけず自分の話=松と茂誠を助けたい話だけしてたもんね)。そこに来るのが稲姫で、初めて信幸とツーカーな人物が現れるのかと思ってたけど、これ稲姫も信幸の新たな「話を聞いてくれないのにしっかり困らせてくれる相手」になるのでは? 直情そうな稲姫が焚きつけることで結果的に背中を押してくれる存在になったりはするかもしれんけども。

信幸はこうしていろんな人に無視されても、自分は決して相手を疎むことはなくむしろ心配したり、相手のために動けるたちで、そういう大きな器と豊かな人間性があって、つらいことや悩みは一人で抱えて何とかしていくうちに、最終的には正しい判断で大名になるんじゃないのかな。・・・ってとこまで妄想して楽しくなるのが真田丸です。大泉洋が演じる信幸の素敵さです。

しかしともかくも、幸せそうに男の腕に身を任せるおこう、複雑な顔でもちゃんと背を撫でてやる信幸、2人は寝間着で背後には床がのべてあるのですよね! おこう初登場時は病に臥せっていて、すぐにふすまを隔てる2人だったのに、回を追うごとに距離が近い描写になり、一緒にごはんを食べ、弟の祝言で大役(笑)を果たし、膝枕をし(間違えたけどw)、一緒に庭仕事をし、ついに寝間・・・! 稲姫が嫁いでくる直前(だろう)になって・・・! くーっ、心憎い描写をするぜ!!



これなぁ。秀長すら、なかを人質に出すことに反対してるんだよね。豊臣家の良心という意味では兄の大事な補佐役の役割を果たしてるんだろうけども。つまり、あの中で、秀吉の実母を人質にしようという政治感覚のある者は、秀吉以外には三成しかいないわけよ(秀次くんの「物見遊山だと思って」は、政治的思慮あっての発言ではないのでね、当然)。そりゃ三成は苦労するわよね、っていうのと同時に、「でも秀吉の死後も豊臣家を守ろうとするのは三成なんだよね」っていう・・・。

信繁ごときに超真剣な顔で「家康は人質をどう扱うのだ」って教えを乞うて「殿下の母上に何かあっては絶対にダメなのだ!」なんて言うから、あらまー心配性ねーと思ったら清正らが踏み込んできて、「どうもしない、人質とはそういうものだ」だもんなー。

清正の「おまえには情ってもんがねぇんだよ!」なんて的外れも甚だしいんだよな、と視聴者にはわかる。君たちとは情の持ち方が違うだけなの。君たちの情がどうなっていくのか、しかと見せてもらおうじゃないの。って思うのよ。とはいえ、そうすれば三成の本心も読めるんじゃないかと思ってるかのように、キス距離まで顔を近づける清正はやっぱりかわゆくもあるw 信繁「見てさしあげたほうがよいのでは・・・・」ウケたww あーもう、三成のばか!清正もばか!

山田昌さんのなかがすばらしい。もっと見たい。

じゃあ旭は? って清水ミチコだったー! この芸達者を喋らせないっていう使い方が絶妙! ネタキャラに走らず。でも存在感は立ちのぼっちゃうわけで。・・・と思ったら、清水ミチコのほうがオファーに対して「セリフがないなら出てもいい」と言ったとか。でもその要求にちゃんと応えて面白いシーンを作るのが三谷さんだよな。

意に染まぬにもほどがある政略結婚とはいえ、阿茶に命じて丁重に遇し、みずから手を取って語りかけもする家康は、やっぱりただの腹黒狸じゃないんだよな。心もある人間なんだよ。でも芝居もするよ。



※ツイート中、「信誠」は「茂誠」の間違いでしたー(汗

信繁の部屋に凸する秀吉(信繁をたらしこむため、多少大げさに芝居)
 →家康の部屋に凸する信繁(お互いに牽制しあい、芝居しあい)
  →家康に凸する秀吉(家康に芝居の台本を渡す秀吉、実は2人とも相手に芝居してる)
   →そして大坂城(さあ本番!)

という、この、芝居に次ぐ芝居の流れ、ほんっとうにお見事でしたね!本音と建前が交差しまくり。もちろん秀吉に持ちかけられれば、芝居だろうとなんだろうと断れないのは家康にも秀吉にもわかっている。でも家康との謁見の意味の大きさはよくわかっているから秀吉だって必死。景勝の時は利休を呼び出し、今回は自らが頼み込み、変なプライドで見くびったりせず根回しをし念には念を入れ、そういうのがうまくてのし上がっていったんだなあってのがよくわかる。

家康は家康で、アナ雪さんは茂誠兄上の件だけでなく、今だって真田攻めがいったん許可からの却下になって、腸が煮えかえってるところに突然現れた信繁にも、ちゃんと「いやあ真田には参った、兵法の指南を受けなきゃな、はっはっは・・・!」な芝居ができる子なんですよ。だいたい、言うにことかいて「芝居は下手で」って内野聖陽つかまえて言わせる脚本w 「芝居がどんどん難しくなっております」ってww 

陣羽織だのなんのと、えらい念を入れて這いつくばって臣従させられる台本に、家康は「てめーどこまで俺に屈辱の芝居させるつもりなんだ」って思ったんだろうね。それを察してすかさず「新しい世の中を2人で作っていこうー!」と泣きつく秀吉の交渉力よ!w 

「分かり申した」とのんだ家康は、秀吉の本気に打たれた部分もあろうが、前々回、利休の茶を飲みほした景勝と同じ苦みを感じていただろうな。そして握手という名のマウント合戦。握手という風習がなくても、人は本能のままにこうして上に上にと手を握り合うこともあるのでしょうw

それを見て本気で感動しちゃってる信繁のペーペーっぷりな(笑)



三成は大抵の人間はバカだ、自分のやり方(こそ)が正しいと思ってる人間だけど、信繁みたいなタイプは初めてだったんだろうね、信繁にとって三成や大坂城の面々がおしなべて「なんだこの人たち」なのと同じで。で、初めて見るタイプの人間の良さになんとなく引っかかる点、三成はやっぱり有能だけじゃなくて彼にも心があるんだよね。

三成がどうしてここまで秀吉に尽くすのか、今後の劇中で何か説明されるんだろうなあ。秀吉の死後かもしれないけど。それが秀吉への忠誠心であれ、自身の野心であれ、それが語られたとき私たちはみんな泣いちゃうんだろうな。

そして、「芝居が下手だと言わされる内野聖陽」に続き、「やたら手紙にこだわる山本耕史」なww このあたりだともう、山本さん結婚後に書いてる頃合いだもんねwww

ただし、信幸から信繁への手紙もごっそり検閲してた三成さん、史実でも信幸との書状のやりとりも相当あるらしく、ただのネタじゃなくてそういうのもちゃんと踏まえてそうなのが三谷脚本なんだよな。



猿芝居に信幸からの手紙の文面がかぶさり、陣羽織のくだりは「だいたい台本通りの茶番劇だから、もういいでしょう」とばかりに後景になってゆく。秀吉と家康との会見という歴史上ターニングポイントになる大イベントを扱っておきながら、「景勝も、家康すらこうして上洛したのに、大名ですらない我らは」と、物語の中心に真田を据える。真田が上洛するかどうかなんて、上杉や徳川のそれと比べものにならない、歴史的には塵のような問題なのに、こうして締めることで「さあ真田はどうする」とそれこそが焦点になる。徳川が前座になっちゃうのだ。うまいよなあ!

とはいえ大坂城において真田なんてせいぜい政局のちょっとした材料になるぐらいで、吹けば飛ぶような存在なのに、「まだまだ値を釣り上げるぞー!」とか言っちゃってる昌幸パパンが悲しすぎてだな・・・。先週も書いたけど、昌幸は「豊富な経験に基づいた勘」で勝負してきたけど、今は「豊富な経験が勘(決断)の邪魔をする」という、経験値を積んだがゆえの弱みに囚われてるんだよね。

次週予告を見ても悄然としたパパの姿にこっちもショボーンですけど、でも真田安房守はここで終わる男じゃないって信じてる! 確かに時代は東国の国衆の理解のレベルを超えて変わってしまってるけど、そこで足掻く者として描かれていくんだと思う。「捨て鉢にならず最後まで策を尽くした者だけに活路はひらける(1話)」と言う昌幸から、この物語は始まったのだからして! 源次郎も源三郎も、見どころはあるけどまだまだ若造。パパン、まだまだ頼みますぞ!



こういうとこひとつとっても、この物語を高くかっちゃうんだよなあ。あと刑部さん超かっこいい。今まで私が見たラブりん史上でダントツかっこいい。大河らしい存在!