『エイリアン通り』 成田美名子

そういえば未読だってことに気づいて、ブックオフで文庫版全4冊購入。小さな大人買いだ。一気に読みました。

1980年から連載されたらしい。絵にも、セリフにも'70年代の少女漫画の名残がところどころにありつつ、美形のキャラは今見てもすごく美形だし、成田美名子らしい卓越した色彩感覚も素敵で、趣深い。

完成度はのちの『CIPHER』に劣るだろうけど、これ書いてたころってハタチそこそでしょ。何より、この人の書きたいことってずーっと一貫してるんだなーと感嘆。マイノリティに思いを寄せていること。美貌、家柄、財などに恵まれた登場人物たちが、欠落感や飢餓感に苦しみ、近しい者に愛憎半ばし、自分の弱さと葛藤しながらも自己を確立して、相手ともより確かな関係を結べるようになっていく姿を描くこと。

そこは少女漫画なので、エグいほど醜い感情や目を背けたくなるような現実の厳しさはないんだけれど、かつて少女たちは、成田作品を読んで胸つまされたりしながら大人になっていったもんなのよ。

『CIPHER』におけるレヴァインや、『NATURAL』における西門よろしく、途中から作者お気に入りのキャラが出てきて、初期メンバーがずいぶん割を食う印象になるのもこの頃からの特徴で(笑)、サブタイトルでも「舞い降りた鷹」とまで称されるセレムのかっこよさ、いたいけさが無類。ジェラールと翼はすっかり脇へ…てか、翼とくっつけたのはどう考えても読者対策ですよねww

で、そんな脱線が本線になるような不思議な筋をたどりつつも、ちゃんとラストでは大団円感をもたせる腕力みたいなのも、このころから既にあったんだな、と感心。編集さんが優秀なのであろうか? とにかく面白かったです。そして当然のように、今、ほかの成田作品を再読してます…