『漂砂のうたう』 木内昇 ← 6/29 男女共同参画基礎講座へどうぞ☆

毎年恒例、アミカス男女共同参画基礎講座。
今年はわたくし、参画サポーターとして、第1部の寸劇に出演いたしまーす。チョイ役です(笑)。

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第2部は、歴史小説家の木内昇(きうちのぼり)さんの講演会。
せっかくナマでお話を聞けるのだから、と思って読んだ『漂砂のうたう』。

漂砂のうたう (集英社文庫)

はぁー・・・。めちゃくちゃ面白かった・・・!! 寝る間を惜しむ勢いで一気に読んだの久しぶり。
いわゆる「遊郭モノ」の小説なんだけど、時代設定が明治の初めなのがポイント。

特権を失った武士は没落したり反乱を起こしたり。
「身分解放令」で解放されたはずの遊女たちはゆき場がない者ばかりで相変わらず遊郭という牢獄の人生・・・。

人物描写、心理描写だけでなく、時代背景が巧みに織りあわされていて、ものすごく私好みの小説だった。

とにかく硬派。
歴史史料の読み込みと咀嚼がすごい! 

時代小説は一大ジャンルだけど、これほどタイトな時代考証とキリッと引き締まった文章で読ませてくれるのは、そう多くない。

しかも、明治の初め、遊郭といういわば異世界を描きながらも、
「新しい時代と向き合い、適応することの難しさ」とか
「自由になっていいはずなのになれない」とか
「強いのは女を使う男? いや、使っているつもりが実は奉仕している? いや、それとも・・・」
「そもそも、自由ってなんだろう」
などなど、胸を突き刺す普遍的なテーマがいくつも見えてくるのは、秀作の証拠。

主人公の定九郎の鬱屈の描き方は見事で、花魁・小野菊との関係性(ともいえないほどの関係性)の描き方は非凡だった。渡辺淳一あたりには怒られそうだけどw(注:この小説は直木賞受賞作で、選者のナベジュンさんはエロスが少ないとハッキリ批判する傾向がありますw)

『陽暉楼』宮尾登美子
吉原御免状隆慶一郎
『おもちゃ』新藤兼人
『さゆり』 アーサー・ゴールデン
『吉原手引草』松井今朝子

に続く、遊郭モノの傑作長編小説が誕生、って感じ。わたし的に。
タイトルが示す通り、わかりやすい人情モノではない(ハナっから、そうあろうとしてない)から、ばーんと売れたりすることはないんだろうけど、そういうカラーの人もいないとねぇ。なかなか多作な方みたいだし、他のも読んでみよう!

この方(お名前を見ると男性かと思いきや、50歳そこそこの女性なんだよね)が、どんなジェンダーの話を語るのか、楽しみ楽しみ。

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あ、写真は、劇団go toの主宰、後藤香さんによる寸劇の演出風景。
これも、今回の講座参加の楽しみの1つだった。
さばさばと闊達で、的確な指導!! 
わかりやすい身体表現、その引き出しの多さに感動しておりました。