長月の十四 / 『花とヴァンパイア』・ おかーさんへのプレゼント・菅田将暉になりたいガール

●9月某日: 夫とサクは、篠栗のじぃじのうちへ。仲良しのNくん父子と一緒に日帰り男旅だ。私、マッサージとかリンパケアとか骨盤矯正とかそういうのに行きたいなあ、とざっくり考え、ざっくりしすぎてるもんだからネット検索にも無駄な時間がかかるという・・・。まあいいや。

それにしても菅田将暉のプレミアムトークはすばらしかった。保存版。菅田将暉の彼女じゃなく菅田将暉になりたい人生だ。・・・とfacebookでつぶやいたら、「何?神田正輝?」とか「俺は河合奈保子か倍賞千恵子になりたい」とか(←同級生男子より)とか脱線しまくらちよこ。菅田くんの話をさせてw 

とにかくね、菅田将暉のトークを見ながら「どうやったらこんな人間力の高い子に育つんだ…」と思ってたら、番組後半で「菅田さんのお父様に育て方を聞いてきました」ってコーナーが始まったから「あさイチ」スタッフの視聴者目線わかってる感すごかった。午後から、劇団go toの特別舞台を見に行く。

(facebookより)

昔から、舞台役者さんがインタビューや対談で語るのを見るのが好き。
みんなすごく面白くて、本質的なしゃべりをする。
的確で、強靭。精錬された言葉を使いこなすって感じ。
役者さんは自分で言葉を作る(台本を書く)わけじゃないけど、
選ばれて練られたセリフを客席に届けるために、自分の腹にしっかりと落として語る経験を数々しているから、言葉への感覚が鋭敏になるんだろうと思う。

劇団go to 特別公演 『花とヴァンパイア』

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市民オーディションで選ばれたキャストの方々、その中の1人が雁瀬さんで、稽古の話を聞いてるとすごく面白かったし、学生さんもたくさんいるのも何か気になって、見に行った。

「少年の船」から遭難した学生グループ。
小さな島に住む3人の謎めいた美少女たちと、女性執事。
美少女たちを捕えようとする密猟者たち。

惹かれ合いつつもすれ違い、わからないままに葛藤する彼らの間に、最後には確かな友情が芽生える。花は咲くと信じる。小学生でも理解して感動できるような友情と成長の素直なストーリーでありつつ、設定やモチーフやセリフは様々な示唆に富んでいて、あれこれ考えるのが面白かった。

島の少女たちは「吸血人」。生き血が何よりの好物で、陽の光に弱く、屋敷から出られない。浜に咲く美しい薔薇を一度も見たことがない。少女の一人は偶然手に入った(?)種を鉢に蒔いて一生懸命育てているが、暗い屋敷では芽も出ない。

遭難した学生たちに食糧や寝床を与える女性執事(←雁瀬さん)はミステリアスな雰囲気で「だまして太らせて血を吸う気なんだな~ゾゾ~(((;゚Д゚)))」と見てるこっちはガクブルしてるんだけど、実は彼女は少女たちに吸血をさせたくない、外界に友だちを作ってほしい、いつか美しい花々を見せてやりたいと願っている。けれど、それがいかに難しい願いかもよくわかっている。彼女の表情に笑顔やあたたかみはなく、屋敷の外の美しい花のことも少女たちに隠している。年齢の多さは、現実に失望してきた数の多さなのかもしれない。

密猟者たちもまた、小さな島で種族の絶滅の危機に瀕していて、その対策として吸血人の捕獲が必要らしい。彼らはナイフなどで武装している。また、“どんな言語も操れる”という特殊能力を用いて、学生たちと吸血少女たちの通訳をすることで最初は取り入り、やがて対立させる。

自分たちが生き残るため、自分たちが危ないから、他者を害しようとする。言葉は思いを伝え、理解し合うためのものだけれど、使い方によっては人を深く傷つける凶器にもなる。

でも。人間を見ると血を吸いたくなる少女たちも、言葉遣いの悪さや引っ込み思案などそれぞれの課題を抱えた学生たちも、花を美しいと思う気持ちは同じ。名前を呼んでもらえたらうれしい気持ち、新しい友だちと一緒に花を見たい気持ちは同じで、言語が通じなくても、悪意にみちた通訳に邪魔をされても、思いはにじんで、つながっていく。

面白いのは、ハッピーエンドのようでいて、実は何も解決していないことだ。
吸血少女たちは花を見られていないし、密猟者たちの生き残り策は見つかっていない。
問題は依然、残っている。

でも仲良くなれた、思いを伝えられた、攻撃するのをやめた、それが大事な一歩なんだろう。

咲かない花を一生懸命育てても、咲く日を想像していれば寂しくない。虚しくない。若い人には希望を信じる力がある。「ほんの少し、違うところがあるだけで、同じ人間です」ひとつひとつの花にそれぞれの名があるように。

日本の日常に戻った学生たちが、島の少女たちを忘れずにいられるか?どうしたら彼女たちと一緒に花を見られるか?知恵と情熱が試される冒険は続くのだと思いました。

‥‥と、これは、舞台をただ一度見ただけの私のざっくりした解釈で、キャストの皆さんは当然、もっと深く理解しているはずで、膨大な量のセリフをただ覚えてこなすのではなく、声の抑揚や表情、仕草や立ち位置・・・ひとつとして意味なく漠然とやってることはないでしょう。

実際に、学生キャストさんたち、すばらしかったです。(もちろん、大人のキャストさんたちは言わずもがなです)体いっぱいで表現して、笑わせて泣かせて。圧倒されました。

登場人物について、背景について、作品がもつメッセージについて理解する深い読解力。作品を通して、人間や世の中を考えるきっかけにもなるでしょうね。客席に伝えるための表現力。技術と度胸。キャストやスタッフと話し合ったり励まし合ったり尽くしたりする協働力。ひとつの舞台を作るまでは大変で、でもそれに見合う達成感、充実感をきっと味わえる。すごい力が身につくだろうな~学生時代に経験するってすばらしいな~と思いました。

後半30分くらいけっこうぐずぐず泣いてました。物語ってすばらしいね。生身の人間が伝えられるものって、実はすごく大きいんだね。終演後の雁瀬さんに思わず握手を求める。劇団 go toって良い名前だな、と前へ(上へ?)伸びる矢印のロゴを見ながら思っていて、家に帰ってしばらくしてから気づきました。劇団の作・演出家さんが後藤さんや~! Goto!!

男たちも存分に楽しんだもよう。川で釣りやカニ探し、稲刈りの終わった田んぼで虫探し、庭でバーベキュー、南蔵院でソフトクリーム。など。今夜は私の誕生日前夜祭ということで、帰りにデパ地下でオードブルの盛り合わせやちょっといいお酒を買ってきてくれた。他、ローストビーフ、えびとキノコ類のガーリック炒め、アボカド、トマト、バケットなど。

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サクから「はい、たんじょうびプレゼント」と綺麗にリボンをかけた(自分でやったらしい)封筒を差し出され、「ははぁーん、『おかあさんおめでとう、いつもありがとう』的なやつだな」と思って開けたら、「おれのすきなもの」を書きに書いた10枚ほどだった。星座の絵、太陽系の絵、キュウレンジャーの絵、鳥の絵、世界地図、すごろくなどなど・・・ありがとう。でもおかあさんどこいった?(笑)

とはいえ、集団生活では割と空気を読んで振舞うタイプなので、こうやって「おれがおれが精神」を前面に出すのはおかあさん大歓迎である。どんどんマイワールドを構築してほしい。君にはオタクの血が流れ、オタクの乳を吸って大きくなったのだから!

スパークリングワインと赤ワインをあける。よく飲んだ。