『おんな城主直虎』 第27話 「気賀を我が手に」

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井戸にお供えをして「おとわが気賀をとったぞ」って。
2人で囲碁しまくりだし。「たいしたものだ」って。いいんですか、但馬? そんなんでいいんですかーーーーー!!

「軍師方久」面白かった。義信事件すら、今回は井伊に味方してくれたかのよう。自暴自棄になった氏真が、領内の政を己でコントロールしたい意欲も失ってるから。まぁ、関口様も味方につけてたし、通常状態の氏真でも突破できた可能性は高いけどね・・・。

関口様に香水嗅がせて味方につけるのは面白かったね。匂いって本能を刺激したり幻惑したりするもので、ぼやかしてあったけどドラッグ的な作用もあったのかなと。そういう手を思いついて躊躇なく使えるのが、商人出身である方久の強みなんだよね。

一方で、大沢相手には小手先の技を使わず真っ向から理屈をぶつける。大沢様の、大男で顔面力があって、言葉少なにでーんと座ってるだけで何だか迫力があるところが、若い女性でせかせかして落ち着きのない直虎と何だか対照的だった。

気賀にまつわる・・・というか、龍雲丸との一連のエピソードは、コミットメントが1つのテーマになっていて、それは脚本の森下さんがいつもブレずに描いていること。
前回のラストで方久が直虎にコミットの覚悟を問う。どんなに有能な軍師がついていても(まさか岡准よりムロツヨシのほうが頼りになる軍師を大河で演じるなんて…)、主の意思がなければどうしようもない。直虎は一貫して、出会う人々や物事にコミットメントしてきたんだけど、気賀の町衆を前にして少しだけ怯む。その背を押すのが、なんと政次なのである。

すでに気賀の町衆とはコミュニケーションがとれていた。残るは龍雲丸である。彼は、直虎や中村屋の「もうひと押し」を必要とするのではなく、むしろ直虎が関与できそうにないという後退した状況の中で足を踏み出す。仲間にも告げずひとり、ほうぼうの城を見分して研究するという、盗人らしい実務家ぶりであるw そして彼は「ほかの誰でもなく、自分たちで城を作ろう」と言う。

子ども時代の龍雲丸かわいすぎる~。きっとまたいつか何かのドラマでお目にかかるであろう子役さん。親を失い、盗人稼業に手を染めるうちに世の中が格差によって成り立っているのを知り、拾ってくれた盗人一味も失って、その代わり自由を手に入れた。「自分ひとりで何にもとらわれず、己の心のまま生きていく」それが龍雲丸の目覚め。だから一度は、誰にも告げる前に、仲間と離れてでも、仕官を断った。直虎はそんな自由な龍雲丸をうらやんでもいた。

でも、「仲間に縛られ、町に縛られ・・・」それは、不自由ではなく、心の底からそうしたいという思いではないのか?と直虎は看破する。盗人のかしら・龍雲丸は、もとは家族や住むところを奪われた人間だった。奪われたものを取り戻すのが本当の願いだったのでは? 今、自分たちの町に自分たちの手で城を作ろという龍雲丸。彼がとらわれようとしている不自由は、彼がその思いのままに生きる証ではないのか?と。

コミットメントだよねえええええ!!

自由を愛する龍雲丸。鬼目付の仮面をかぶって孤高の道を選ぶ政次。群れない彼らの心の奥底にあるのは、ともに「本当はコミットしたい」という思いで、それがわかっているからこそ政次は、直虎が仕官を断った龍雲丸の自由を羨んだときに疑義を呈し、また今回、城を築いた龍雲丸を優しい目で見たのだろうな。

おそれずにいろんなことにコミットしてきた直虎。でもそれは、朝ドラなんかでよくある「ヒロイン特権」には見えなくて、それは今回の「尼小僧さまはいつも、俺が思いもつかないことを言う」「お互い様だ」のやりとりに象徴されていたような。

コミュニケーションとは、つまりそういうことなのだよね。別の出自や立場をもつ別の人間からは、自分とはまったくかけ離れた言葉が出てくる。それは、戸惑いや憤りや傷つけあいにつながることも多々ある。だけど、そのプロセスの先には何か新しいものがある。対話はめんどくさい、コミットメントは不自由、だけどそのすばらしさよ! 森下さんてそういうことを書き続けている作家だよね。

それにしても、政次さんの心根の優しさとか柔らかさとかがダダ漏れなのはいーんですけど、もう ”直虎の盾” としてはふわんふわんすぎて、この先、心配しかない。カタルシスの回のはずなのに、この先には、このカタルシスを上回る試練が大投入される確信しかなくてぶるぶる。

龍雲丸の、「もう逃げられませんぜ(にっかー)」は、この先なんらかの形でリフレインありそうだね。柳楽くんの、屈折してるんだけど何となく憎めない、陽性の雰囲気だした芝居いいな。「龍雲丸」という童名がぴったり。

遊びほうける氏真さん。大河ドラマでは「浮かれ踊るバカ殿」みたいな芝居って頻出だけど、こういうとき、やっぱり伝統芸能畑の人は独特の雰囲気を出してくれて、それが地上波テレビで見られるってうれしいいなーと思う。松也、どんどん好きになってるよ!!(告白)