『おんな城主直虎』 第25話 「材木を抱いて飛べ」

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いやー、面白かったです! 知恵と勇気と仲間の協力で強大な敵に立ち向かう。少年ジャンプの世界のようだけど、結局これが古今東西、エンタメの王道なんだよね! あっというまで濃密な45分間に起伏した己の感情がすべてて、もはや感想なんていりませんね。まあ、書くんだけど(笑)

この事件の端緒が今川と武田のいさかいにあるのだと、ちゃんと抑えられるのがいいよね。大国同士のいざこざの小さな余波で、小さな井伊は吹き飛びそうになるという。

申し開きと言う名の処断を言い渡された直虎は、いきり立つ家臣たちをよそに取り乱さなかった。六左たちに背を向けたまま顔を見せない彼女は、領主という孤高の道を歩みつつある。鮮やかな緋の打掛が「なんとかなる」という。ここで家臣たちに知恵を募らなかったのはミソだなあと思う。今川が何のかの理由をつけて直虎を廃したがっている以上、策も徒労に終わる可能性が高いし、家臣が講じた策が失敗するとその者の心にも将来にも差しさわりがある。

だから(?)直虎は1人で碁を打って考えた。政次が虎松に言ったように、まさに「どこから間違えていたのか」その大もとまで遡っていったわけだ。それで材木を取り戻し、今川に届けるという馬鹿正直な策に出る。「忠義を見せるなら、小細工を弄さず問題となったものをそのまま除去するに限る」ってことね。

時間を稼ぐため、直虎は毒をのんで寝込む。ここ、本当に顔が腫れぼったくなっててすごかった。そこに政次が見分にくる。直虎は、材木を取り戻す策については政次をかかわらせない。けれど政次に井伊を託す。政次が井伊谷の領主になるかもしれないからこそ、先代(となるかもしれない)自分たちの策謀には入れない。政次を今川の目からクリーンに保って、井伊谷を守るために。

直虎にとってもっとも大切なものは井伊であり、直虎は政次を、大切な井伊を託すに足ると思っている。直虎の信頼を得ているのだという自負、己を毒に晒してまで井伊を守ろうとしているけれどその手から井伊を手放さなければならないかもしれない直虎へのたまらない思い・・・そんないろいろがないまぜになって、政次は直虎の頬に手を伸ばすに至る(と解釈)。まあ、こんなときでなければ頬に手を触れることもできない男である。

「俺の手は冷たかろう」
「血も涙もない鬼目付じゃからの。昔から政次は、誰よりも冷たい・・」

ほんっと、こういうシーン見ると、森下さん、マンガ好きだよねッッッ!!!
と思う私(いや、知りませんが。)

熱する直虎を冷ますのが政次の役割。直虎も、政次も、そんな関係性をよくわかっていて、それを望み、それに馴れている。時に甘えてもいる。ただ、直虎は知らない。政次が心の中に、誰よりも直虎に対する熱い思いを飼っていることを・・・
・・・・・って、完全にマンガの世界ですありがとうございます。
そういうマンガ!好きだよッ!!!悪いか!!!!(なぜかキレる)

『平清盛』で作った船(そうだよね?違う?)に乗り込む一行。六左が始めに声を上げ、方久が「頭が高い!」とかまして、龍雲丸が朗々と芝居がかった口調で説明をして「駿府へ向かう」と命じる。うーん、こういう「一人ずつの見せ場」もマンガっぽいというか歌舞伎っぽいというか、王道のカタルシスでいいよね。背景の合成問題とか気にしてる場合じゃないのです!!

ただどうしても目をそらせないのが、良い風を呼ぶとして括りつけられるゴクウよ。まえだまえだだし…。これ、良い風を呼ばなかったときにどうなるか、完全に悲劇のフラグやん(泣

さておき、直虎と氏真の対峙。よかったよねええええ!!! こういうモロモロが前段にあっての、直接対決。みなぎる!!!

「おなごいじめは好かぬがのう」「信じてやりたいがのう」と言うとおり、氏真にとってこれは詮議なんかではなく、虐めなんである。しかも、弱い者を虐めて喜ぶ戯れなんである。

直親の件を持ち出されたとき、直虎が我を失わなかったのは、先だっての近藤の一件で意を曲げて頭を下げる経験をしたからでもあるし、あのようにして直親を失ったからこそ彼に代わって絶対に井伊を守らなければならない、という根源的なモチベーションが煽られたからでもあろう。その点、「女だから感情的になるだろう」ぐらいに見くびっていた氏真も軽率だけど、「これ以上のお戯れは」とド直球でたしなめた政次の目も私情で曇っているというかねーっ。お戯れしてる相手に向かって「お戯れを」ってホントのこと言ったら怒らせるに決まってるでしょうが。

でもそこは少年ジャンプ大河の主人公にして我らが直虎! 
「民を潤せば井伊が潤う。井伊が潤えば今川が潤う。大方様に誓ったとおりに励んできた。こんなやり方では、今川は真の忠義者を失うことになるとは思いますまいか!」
ちょうどいいときに材木も到着し(ちょうどよすぎるとか言ってはいけません!!)しょせん女子よとあざける相手に「おんな大名・寿桂尼」を持ち出し、自らの忠勤を示し、今川自身の利は何処にありやと問う。見事なカタルシス台詞でございました。



うまくいえないんだけど、本当の意味での(先週の庵原の若者ような)忠臣では全然ないのに、「忠義」という言葉を繰り出すのにいっさい躊躇いがないんだよね。それは、去年の真田昌幸よろしく、息を吐くように嘘をついてるわけではなく、「生き残り策」イコール従順なんだと身に沁みついているような。それを「一種の無思想」と書いた。井伊の状況を思えば当然のことなんだけどさ、この無思想を平然と描くのが森下さんだなと。ふつう、大河ドラマだったらこんなとき、「いつか今川の傘から抜け出す」とか「戦を終わらせて泰平の世を/新しい世を」とか言い出すわけですよ。今作では「生き残るために忠義」。これが、今川がどうかなったあとはどうなるのかなと。



で、なつさんからのバックハグですが、なるほどそういうことかと。後ろ姿のなつさんの曲線美、特にお尻の熟したエロスがすごくて鼻から血が出そうでした。ここまでさせといて優しく引き離す政次は血も涙もねぇな!!!! 碁=直虎のことしか考えてねーからな!!!

しかし、虎松に言い放った「どこから間違ったのか」は、今回の材木の件だけでなく、なんか引きずりそうだよね。「なにゆえ、斯様な有様になったのか」とは、碁の練習試合(笑)で子ども相手に発するには、あまりにも苛烈なセリフで、将来政次自身に返るとしか思えないんですが・・・( ノД`)シクシク…

最後、直虎が見せた渾身の一発に対して氏真がどう反応するかは来週までわかんないけど、氏真がもし、直虎こそ真の忠臣だと思えば、反対に政次を奸臣とみなす流れになったりしちゃうんじゃなかろーか。それとも、直虎と政次を争わせてまた「お戯れ」高みの見物か?