『リーガルハイ』第2話、第3話

これぞリーガルハイの醍醐味!という話が3話にしてやってまいりました。1話は再開&新キャラ顔見世&旧キャラ花道&序章っていうお祭り続きだったし、2話はリーハイにしてはスイーツなオチで、今作はこういう方向性でいくの?とちょっとだけ不安になってたので、3話で快哉を叫びましたよ。

や、2話も面白かったんだけどね。佐藤隆太が天才って何の冗談ww と思ったけど、刑務所ダイエットであの風貌になったと思ったらちょっと面白いし、意外に滑舌がよくて、法廷での古御門との激しいラリーにもじゅうぶん食らいついてた。女にふられてとかSMバーとか、話がどんどん低俗かつ卑猥になっていったあげく、「(前髪の)分け目が」とか言い合ってシーンが終わるあたり、ほんと筆が滑ってるなあと(笑 ほめ言葉))。

ブログのネタを仕込むってエピソードはシリーズ1でも確かあったけど、今作ではTwitter的な、「なう」的なつぶやきをするシーンも。時代はSNSじゃのう。「(20人の閲覧があるブログでdisってるのは)毎日20人集めて人の悪口を言ってるのと同じ」ってのはインパクトあるセリフだったな。だけど面と向かっては何も言えないのも。佐藤隆太の次のブームが南部ダイバーなのも笑えた。「海の上の診療所」も「じぇじぇじぇ」を使うなら笑わせてくれんとねぇ。

ただ、2話は全体として、ロジックというより役者の過剰な演技が見どころで、もちろんそれでも見ごたえはあるけど、3話のように冴えわたった脚本がリーガルハイの真骨頂だと思うのよね。

妻の美女ぶりは全身美容整形の賜物であると知った不細工な夫が離婚訴訟を起こす。どんなに自分を愛し、尽くしてくれた妻でも許せない不細工夫、そのコンプレックスの根深さ。やはりコンプレックスから、親兄弟・親類縁者と疎遠になっても美容整形の道を選んだ美人妻の悲しみ。妻の心の美しさ、ふたりに通じる愛情を確信して、やり直せるはず、それが一番幸せなんだと信じて疑わない羽生。

不細工夫を弁護して(ふたりの赤ちゃんのシミュレーションの執拗さww)慰謝料までもぎとることに成功した古御門が、両者プラス双方の代理人まで勢ぞろいした面前で妻に言う、「あなたには人生を捧げるにふさわしい相手がいますよ、こんなのよりも」の一言、その凄み。

不細工夫が深い愛情に気づき、改心して妻を迎えに行くところでは、前回に引き続きまたスイーツなオチかと鼻白んだが、妻は既に新しい男、「ハンサムで整形を気にしない男」を捕まえていた、というドンデン返しが待っていたのだった。小雪との面会でほんの2,3秒のカットために白塗り舞妓さんメイクにするガッキー、という最後の最後のオチまで含めてキレッキレ!

前シリーズでは、古御門(大人)の拝金主義に対する理想主義(朝ドラヒロイン)の黛、というわかりやすい構図だったのが、黛の成長プラス「Win-Win」の理想を掲げる羽生の登場で、やや捉えにくくなっているのだけど、今回でだいぶ見えてきたような。

羽生は自分の理想実現のために古御門を倒さなければいけない、そのために姑息な手に出てしまう。美しい目的のために心ならずも汚れた手段に出てしまう。それは、人が往々にして陥りやすい姿の象徴でもある。悪になろうとして悪に手を染める人は少ない。良き人間でありたいと願いつつも、窮した時に堕ちてしまうのだ。

その羽生の未熟さを、古御門のそばで成長してきた黛が最初からハッキリ許せないのは見ていて非常にスッキリする。黛は理想を捨てたわけじゃないけど、そのために悪に手を染めることの無意味さをよく知っている。小悪なんて、圧倒的にぶれない大悪(古御門)や、厳しい現実の前には、結局、無力なのだ。

私たちはもちろん古御門のほうに感情移入して、古御門の強さに惚れ惚れしているんだけど、でも現実世界での私たちは、たいていは羽生がわに立っている。できれば争いを避けたいし、角が立たない落としどころを見つけようとする。傷つけるのも傷つくのもこわい。ぶれずに突き進める信念も力ももっていない。私たちが現実に法律相談に行くなら、圧倒的に古御門事務所よりネクサスだろう。だって古御門んとこ行ったら傷つくのも辞さない覚悟が要るし。てか、そもそも、高いし。優しく話を聞いてくれて、訴訟相手ともあとにしこりが残らぬよう心を配り、値段交渉にも応じてくれそうな羽生さんとこ行くに決まってる。

やっぱりWin-winってのはひとつの理想…というか需要ではあるのだ。人間には情があるから。古御門のやり方は無敵で、人の弱さや現実の苛酷さを暴き、システムの水漏れ部分を容赦なく突くことができるけど、あまりに鋭いもろ刃の剣。その力をふるわずにすめば、それにこしたことはない、と誰もが思うだろう、少なくとも自分の半径5mでは。

まあ、世の中全体としては、古御門が必要でなくなる世界なんてありえないんだけど、一件一件ではどうだろう。古御門のやり方では、人の心…愛情や優しさや献身を動かすことはできない(彼がそんなものの価値を認めてないし)。羽生君が本当に力をつけたときは古御門の脅威になると思う。もちろんきっと小雪の法廷のときだよね。一話ラストの小雪は、脅されてるとか、自分の保身のためではなく、どうも、愛情や献身のために罪を認めたように見えたからなあ。

ということで、とても楽しみ。黛の成長をリセットせずに、新たなステージを描いてるってすごい。それに岡田くんの王子様然とした美貌が、この役に何と似合っていることでしょう。黒木華はもうちょっと面白いキャラづけにしてあげないと、ちょっと演じにくそうな気がする。小池栄子の力技のすごさにあらためて思いを至す。

あ、役割を心得て抑えた演技をしながらも美波さんはさすがに惹きつけてくれました。塚地との並びも良かったー。