『リーガルハイ』終わりました

ラス前で「羽生が黒幕でした、じゃじゃ〜ん」のやり方がちょっとヤな感じだったのでどーなるかと思いきや、最終回、すっごく面白かった! 超満足! 今クール、途中経過では「クロコーチ」のほうを、よりドキドキして見ていたりもしたんだけど、終わってみるとやっぱりリーハイの底力スゲー! 感服。なんたって、最終回らしく、主要人物たちが剥き出しの顔を見せてくれたのがうれしい。娘のことを暴露された貴和は暴れ、接見室で「真実は作ればいい」と閃く黛は恐ろしいほど真剣で、古御門はズバリと羽生の本性を言い当て、羽生は脆くも崩れ去る。これよ。この“本気”感よ! 黒河内と沢渡の最後の対決に足りなかったのはこのガチ感なのよ!

30分もの延長が全然長く感じられず、シリアスと遊びの部分のバランスも絶妙。遊びで特に面白かったのは、

  • win-win教の教祖様としてスーパーブレイクした羽生が、芸能人の離婚にコメントを求められたり、ベストジーニスト賞に選ばれたりする
  • 三木、win-win教に入信。それがまったくもって気に食わない、ぶれない沢地
  • 古御門をwin-win教に勧誘する羽生とジェーンの憎たらしい「カモン、ケンスケ!」と「いいかげんにしてください、キモいですよ」の黛のツッコミ

の3点。ラスト、羽生の旅立ちが古御門事務所でやたら祝福されるのも良かった。

ハイライトはなんといっても、ついに古御門がゆとりの国の王子さまを完全に打ちのめすところ…なんだけど、意外にも、そこに心からのカタルシスを感じられない自分がいてびっくりした。

でも、そこがリーハイのすばらしさだと思ったな。あの羽生と古御門のやりとりは、実にリーハイらしい牙が仕込んであったと思うのだ。

先生あなたはいつも人間の欲望に火を付け争いをけしかける。極端で攻撃的な言葉を多用して説き伏せて。愚かな人間ほど威勢のいい言葉になびきますからね。人間の愚かさ、醜さを利用して勝ってきたのがあなたの手法なんです!


でも、そこに幸せはありませんよ。ただ一時の快感があるだけです。幸せは不本意でも面倒でもお互いが懸命に妥協点を見つけだすことでしかないんです。争いを避け、みんなが幸せになる社会とはそういうことなんです!

羽生のセリフの前半。いや、ほんとにまったくそのとおりで。「無敗の古御門」「巧みな弁舌」「容赦ない断罪」が気持ちよくて、まさに一時の快感に溺れ、溜飲を下げてる私たち視聴者に対する、渾身のカウンター。それを、物語のクライマックス、敵役たる羽生が完敗を喫するまさにそのときに、作り手が自ら指摘してくるわけですよ!

古御門は一種のドラえもんで、現実世界には存在するはずないんですよ。だからこそ、こういった物語が楽しいんだけども、やっぱり現実を生き抜くっていうのは、不本意なこと面倒なことの連続なんですよね。そのことを、羽生はちゃんとわかってる子だったんですよ。

現実に「よりより社会を作るための不本意で面倒な道すじ」が無視され、蹂躙されてることはものすごく多いなと思えるんです。有名人ブログの炎上とか。ちょっとした失言・失敗で人格否定ってレベルまで叩くとか。刺激的なフレーズやキャラに熱狂するとか。家政婦のミタとか半沢直樹とかって、そういうのの流れでヒットしたんだろうなって思うとこあるし、古御門だって、そうじゃないとはいえないとこがあるんですよ。まー、それいうなら、人々のスッキリしたい願望を乗せて、いつの世も“ヒーローもの”が作られるんだろうけど。

でも、リーハイの面白さは、それを自分で突っ込んじゃうとこなんですよね。それで、「あれ?私、完全に古御門に同調してたけど、実は古御門が糾弾してる側の人間なんじゃない?」って、こっちの足元がグラッとする。この不安定さがリーハイの魅力。今回、この最終回で、羽生がそれをやってのけてくれたんですよ。うれしかったー。

「現実的な幸せな社会」のために自分がみんなを導かなくちゃ、となるのが羽生の気持ち悪いとこなんだけど、「現実的な幸せな社会」のなんたるかをわかってて、それを理想と掲げるのは、羽生の若者らしさであり、可能性だと思ったなあ。古御門がそんな羽生を力いっぱいぶちのめすのは、一周まわって「見込みのある者への愛」みたいにも思えた。

負けた羽生が古御門事務所でチヤホヤされて送り出されるのも、そういう意味で、筋が通ってると思ったな。ヤバい方法をとってヤバいことになるのを古御門が止めて、羽生は自分の理想を曲げるわけではなく、再チャレンジへの旅に出る。一度負けたからってそこで人生終わるわけじゃないし、徹底的に人格否定をしないどころか、羽生は性格なんて全然変わる気配もなく、それが優しくもあり、ブラックでもあるんだよね〜。

「羽生は死刑廃止論者=サウジアラビアでは同性愛は死罪に相当=羽生が好きなのは実は古御門だった」  

という一連の流れを説明せずとも容易に想像させる流れも見事ww ってか、羽生の古御門愛をかなり早い時期から断定してたネットのおまいらwwww

ひとつ、今もちょっと解釈を迷っているのは、“真実史上主義”の黛が、貴和について「新しい真実をつくればいい」と言って実践したこと。それは、ペテンってわけじゃないだろうし、古御門の色の染められたってことでもないだろうし、でも、褒められることでもないと思うんだよね。ただ、実際にあの殺人事件の真相は闇だったわけで、古御門・黛チームがでっちあげた推測こそが、実は真実に一番近かったのかもしれない…つまり「あれほど真剣に取り組んだから真実を引き寄せることができた」ってことでいいのかな。

とまれ、シリーズ2も大変楽しませてもらってありがとうございました。守りに入らなかったのがほんとすごい。でも古沢さんをリーハイに縛り付けないでほしいとも思うけどね。岡田くんのゆとり王子は天下一品だったし、小さい子ふたりを抱えながらこんな役をやってのけた小雪の女優根性を見直したし、シリーズ1・空飛ぶ広報室と続いてガッキーの気持ちの入った演技はすっかり堂に入っていて、何より半沢直樹のイメージから即座に脱却できた堺さんが一番おいしかったのかもしれなくて、終わってみればこのドラマはwin-win以外の何者でもないな、と思わされたのでしたwww