『八重の桜』 第18話「尚之助との旅」

先週ラスト、「まさかついてくるとは…(ぶつぶつ)」、「遅れたらおいていきますからねっ(キリッ」からの、今週頭の「八重さん、ちょっと待ってくださいよ…(ゼエハア」の尚之助さまでございますww  これを、御見物のネットの皆様が「大方の予想通りだなw」、「安定の展開ww」「やっぱりへばってたかww」と、ほぼ“織り込み済”と受け止めているのが面白くてwww  どうです、この、作者と視聴者の以心伝心っぷり。

こんな生あたたかい視線に見守られながら旅を続けるふたり。猪苗代湖が思いきったハメコミだったのにもびっくりしましたが、背炙山に立った尚さまの「ここは覚馬さんと約束したところなんです」にも変にドッキリしました。あ、大砲の鋳造所の話ね、そうですよね、すみません、邪(よこしま)センサーが敏感で…。うん、言ってたよね、7話あたりに、ふたり水いらずの温泉で。

安達ケ原を見ては「鬼婆がいると言われている」とか(余談ですがこの鬼婆を主題にしたのが能や歌舞伎の「安達ケ原」で、澤瀉屋では猿翁十種のうち「黒塚」になります。亀ちゃんも猿之助襲名公演でやりました〜胸熱)、白河の関にたどりついては古歌を口ずさんでみるとか、白河達磨とかお宿でのおくつろぎとか、もうその調子で、45分夫婦で漫遊しちゃっていいよ!とか思っちゃうんだけど、もちろんそうもいきません。

「山で作った川に乗せて大砲をどこまで運べるか…」とか(こういう、当時のノウハウに話が及ぶのは非常に興味深い)「奥州の者が都に攻め込むのを防ぐために作られた関だけれど、実際はいつも、南の者から攻めてくる」とか。厳しい表情の夫と、時勢が厳しいことを肌で感じつつも、有事まではとても想定できない妻、という描き方がとても自然です。ふつう、女主人公といったら、その辺、超能力者だもんな(毒)。

それにしても、尚之助ほどフラットで、しかも頭脳明晰な夫と日々いちゃこら(笑)していてもこの程度なんだから、戦線が迫りくることを予想できた会津の女なんて、ほとんどいなかったんだろうなあ。わけもわからないうちに巻き込まれていくんだなあ。

そして二本松で銃の鍛錬に励む少年たち!(泣) なるほど〜、ここで一度出しておくだけでも全然違うもんね。聞こえよがしな「女に銃が打てるのか?」等の冷やかしを浴びながら何食わぬ顔で準備をし、一発ズドーン命中!の八重さんのドヤ顔が最高です。「目を開けることは忘れて、弾のゆくえだけを追えばよい」って、かつて少女だった八重に尚之助お兄さんが送ったアドバイスですが、今にして思うとなんだか深いような。視力にかかわらず、ただただ世の行方を追い続けることになるのが覚馬なのかもしれません。

そんな、緊張と弛緩の入り混じる道行の中でも、「尚さまの着流し♪」だの、「(道のりはヘタレでも)危ない時には八重を守る王子様♪」だの「尚さまが『妻』って言ったーーー(・∀・)」だの、隅々にまで目を光らせて楽しむ尚八重クラスタたちなのでした。おまいら、旅を満喫しすぎwww わたし的には、一番はやっぱり「ちょっと待ってくださいよ・・・」と懇願し、妻に手を引かれて道をゆくとこですかね〜。「女は三歩下がって…」の時代に平然と妻に前を行かせることのできる夫。こういう、時代劇らしくない関係が、不快でなく、夫婦のささやかな個性として目に映るところが今作のすばらしさ。少年に渡すため八重がポケットを探ろうとすると、すかさず無言で八重の菅笠を持ってあげるとこもよかった〜。

さて、旅はこのくらいにして革命前夜の京に戻らねばなりません。今週のアバンは、勝や慶喜、西郷や岩倉など役者たちをそろえて短くまとめた正統派のつくりでしたね。会津本陣に、まず、秋月さんが帰ってきましたー! 意外と短い不在だった、ワーイ。「さらにもう一人、なつかしい人がスタジオに来ています。どうぞー!」って感じでB作の土佐に呼ばれてドヤ顔で登場したのはおロシヤ帰りの山川大蔵! ねえねえ、羽織の下に西洋の白シャツって、それ殿の御前でのドレスコードに引っ掛からないの? て感じですが、ともあれ、会津に帰れなくなった殿をセンターに、これでAIZ48の選抜メンバーが集結! 修理さま、あんつぁま、秋月さん、大蔵、広沢、あと知らん顔…あれ?梶原さんがいなかったのは空自のほうのお仕事かしら? 

「花嫁姿、美しかったぞ」とあんつぁまに報告の秋月さん。実際、テンションマックスでしたもんね、あのときww そしてその場にはもちろん大蔵もいる、とwww  このときの大蔵の、何かをかみしめるような微笑みは、これまで八重の話題が出たときのキョドりっぷりや切なさ満面とは異なって見えました。旅は男を成長させるのね…(きっといろんな意味で…笑)。その一方で、総髪になり、B作にも「面構えが変わった」と指摘され、一見、なんだかイケイケドンドン的なワイルドキャラに豹変したように見えつつも、違和感がない。きっと元来、思い込みの強い男なのだ。なんせ「八重さんは会津そのものだから…」とのたまってたからしてwww 他方、蝦夷地でニシンに歓声を上げていたらしい秋月さんww 雄藩の中で「海をもたない」会津の不利が浮き彫りにされます。

薩兵千人が大阪入りの報がもたらされ、驚愕する会津。その中にいる西郷…を訪ねてきた後藤象二郎土佐藩)…を見かけた大山弥助…なんですが、おまいら、「のちのポイズンである」「GTOである」って言い過ぎだからwww のちの巌です、大山巌! あと、おまいら、「信長vs信長」 「信長が信長に報告しとる」 「薩長の信長連合軍」言い過ぎwwwww

キャスティングの妙が光りまくっている今作にあって、私の中で反町さんの大山巌は一、二を争う「???」さなんですが、今後に注目しましょう。大山と西郷の対面、ちなみにこのふたりは従兄弟にあたるのですが、土佐藩大政奉還を建白する(武力蜂起を望まない姿勢)ことを話していましたね。「容堂公」の名が出るたびに、キンキラキンの羽織で大酒くらってた近藤正臣龍馬伝の姿が浮かびますね。後藤が兵を率いての上京でないことに大山は激昂しますが、西郷はあくまで冷静に次の手を考えています。神戸開港で諸外国と相対する日が迫っていて、それまでにぜひとも何とかしたいのだ、という事情も語られました。

ここで大山からは横浜での銃調達についての報告もあるのですが、のちの大元帥は「数を揃えるのが重要なので傷物も交えて安く買いたたいてきた」と、こともなげ。これが、長崎にて、高額かつ、お取り寄せのため発送に時間のかかる新式銃を千挺買いそろえたあんつぁまとの対比になってるのがOH MY!!!!でした…。しかも、その資金繰りに苦慮しているため、せっかくの尚之助の献策は、褒められるだけで採用されない始末。あんつぁま&尚さまドンマイ…。判断の正誤なんて、しょせん結果論なんだけどね…悲しいね…。

主役サイドにかかわらず、いろいろ裏目に出まくっているところが描かれていて震撼とするほどですが、もちろん会津はおバカ藩だったわけじゃありません。間違えたからやっつけられたわけでもありません。幕末にはおそらく2百以上の藩があり、ここ福岡だって52万石の大藩でしたが、司馬遼太郎なんかの言を借りれば幕末にだって「うすらぼんやり」しているばかりで、特に何の活躍もしていないかわりに甚大な被害も出していません。そもそも京都守護職の白羽の矢が立ったのだって、「御家訓」の存在以前に、会津の武力が恃まれてのこと。やはり矢面に立ちすぎたのですね…。しかも会津がわとて、矢面の立つことの危険性をかねがね認識していて、なんとか善処しようとがんばっている。それでも、討幕派の深謀遠慮が本気(と書いてマジ)すぎて((;゚Д゚))

「俺の調達しくじったのか…」と焦るあんつぁまの眼前に、幕末名物「ええじゃないか」の一群が。そしてその中になぜかコスプレした西郷&大山……!! このコスプレがなんか異次元の浮きっぷりというか、一周まわって異様なハマっぷりというか、とにかく目がテンでした 「西郷! にし、何をたくらんでる!!」視力が弱っても愛の力で(?)西郷を見つけて追うあんつぁま。会津弁を捉えて匕首を抜く「ええじゃないか」一味、視力が弱って避けきれないあんつぁまと、それを助ける松方弘樹…って、始終おおまじめなのに、形容しがたい面白シークエンスでしたwww

「ええじゃないか」の黒幕に薩摩を見るのはおなじみの試みながら、その拡大に「戦火や、政情不安によるインフレで疲弊して革命を望む民衆」の姿を解説したのはこの作品らしい。「異見の薩長を力でねじ伏せるのか」と問われたあんつぁまがキッパリと「戦はだめだ」と言うのだが、その理由として「今戦ったらこっちがねじ伏せられる」と冷静に戦力を見極めているのもナイスだった。

あ、そうそう、前後しますが、苦節十年、祝☆尚さま就職(正規雇用)です! 羽織の白→黒への変化は、異邦人→会津人への変化の暗喩でしょうか。女たちが、幼いみねちゃんや使用人のお吉さんにいたるまで居並び三つ指ついて迎える図がうれしかったですね。「ただしブラック企業」という注釈が乱舞するTLであったがwww  たまの明るいニュースに尾頭付きの鯛の御前でお祝いです。本来、藩士となれば拝領屋敷ってもんがあるはずなんですが、引き続き居候希望の尚さま。外聞が悪いと言いながらも嬉しさを隠しきれないマッチゲ父さんの芝居が見事です。

というわけで藩士となっても蔵の二階で寝泊りする夫婦。「ありがとなし。あんつぁまも三郎もいないこの家を守るため(の居候)だべ」と感謝する八重に「私にとってもここは住み慣れた我が家なのですよ…」と優しく応える尚さま。その声にほのかなエロスをにじませて手を握るぐらいが関の山の夫婦描写ですが、このとき、画面の端におふとんが積んであるのがちょっと生々しくてムフ。あれを並べて、あそこで一緒に寝てるんですよねぇ〜 (*´ェ`*)ポッ

はてさて、キャッキャウフフしてる場合ではありません。洛北の岩倉村ではおそろしい企みが進行中…なんと「討幕の密勅」が既に作成済みです。先週だったかちょろっと解説されてましたが、岩倉は践祚した明治帝の外祖父、中山忠能に接近しています。幼帝の御手を取り奉って御璽をいただけば、それで勅になるわけですねおそろしや。そして錦の御旗のデザイン図キター-----!!! 歴史物において、旗指物って問答無用で視聴者を昂揚させるアイテムなんですが、

大久保「どこにあるのです?」
岩倉「あほなことを。こないなものあるわけがない。つくるんや!」
のやりとりがすばらしかったですね。のちに維新政府のドンとなる大久保がドン引きしているのに対し、「一歩間違ったらこっちが逆賊でまっさかさまやぞ」と肚をくくった笑いを見せる岩倉が、小堺一機の人畜無害げな容姿なだけに逆に怖くて良いですね。

そのギリギリ感は幕府側もまったく同じで、やはり後藤象二郎が携えてきた大政奉還の建白書を「受ける」と言う慶喜の演出が神がかっていたのは皆さんがご覧になったとおりですが、その前に。

考えてみれば、「政権を握っているから倒される。返してしまえば討たれるいわれはない。どうせ返したところで朝廷に政権担当能力はないのだ。結局は従来通り自分らが政を行うことになるんだろうから、その間に足場を整えなおそう」なんてのは、いかにもケーキさんが好みそうな策であります。教科書で習う「大政奉還」は、非常に道義的というか、分別ある大君の王道の選択であり、「日本の夜明けじゃあ!」といった印象だけれども、こうやってこのドラマを見ていると、この時点では、ある意味、奇策としての扱いでもあったというか、その後のことは何も決まっていない通過点に過ぎないことがよくわかりますね。

それで、目を向いておどろく容保・定敬の高須兄弟を尻目に、また、由緒ある徳川の大鎧に背を向けた慶喜は、葡萄酒を3人分なみなみ注いで・・・はみたものの、勧めることもなく一人でぐびぐび飲みほし、供えてあったかすていらをもばくばく貪って・・・そしてみるまに顔色を失い、縁側でげえげえ全部吐いてしまいました。まったく、今週の放送もイロイロあったんですが、結局南極、これが、なんもかんももっていっちゃったのであります。おそるべし、おそるべし!!

TLでは、「容保らに対するパフォーマンス」との解釈も多く見られたものの、私としては、マジもんの嘔吐じゃないかと思っています。「のるかそるか、ここが勝負どころよ」なんてのは、武家の頂点に立つ将軍とも思えない博徒まがいの言葉で、容保あたりは容易に甘受できない暴言なんだろうけれども、こういう勝負に出られる慶喜の逸材っぷりはやはりすごいよね。しかしその「捨て身」は、この人でなしであっても心身を痛めつけられるもの。口ではサラリと「受ける」言いつつ、その意味するところの重さ大きさを知り抜いているのもこの人の明晰さで、よって、体のほうが受け入れることを拒否している。そんな描写だったんじゃないかと。とまれ、いろんな解釈を可能にするすばらしい演出でしたよね。

それにしても、容保の心配されっぷりと対照的に、「ケーキがケーキ食べて吐いた\(^o^)/」的に完全に面白がられているケーキさんに泣けた、や、嘘です、笑った。日ごろの行いがいかに大事かという見本。だいたい、「徳川が徳川が」って、こんだけ巻き込んでおいて、こいつ容保さんらのことなんかきっと全く考えてない。なのに密勅には容保の名も賊として連ねてある…いやーっ。逃げて―ーー慶喜からも薩長からも逃げてーーーー! と叫びつつ、次週「慶喜の誤算」だなんて、どうしましょう、ケーキさんメインで面白くないはずがない!!