『AKB白熱戦争』を読んでのAKB考 1

AKB48白熱論争 (幻冬舎新書)

AKB48白熱論争 (幻冬舎新書)

すこぶる刺激的な読書になった。年齢も、本業も違う4人の真性AKBヲタによるAKB論。彼らは基本的に礼賛スタンスなんだけど、「AKBはすごく興味深いしみんなかわいくて応援しちゃうけど諸手を挙げて大好きと言っていいのかどうか…」て感じでいつも見てる自分にも、いろんな意味でひどく示唆的だった。

もはやなんだか忘れかけてたけど、秋葉原で生まれたアイドルなんだよね。彼女たちと“ヲタク”の親和性が高いのは、「AKBには無数の文脈があるから」だという。鮮やかな言語化にハッとさせられた。私自身も何につけヲタク的性向のある人間ですけん。ヲタクって、文脈を読むのが大好きで、文脈を読もうとすることに慣れてる。妄想も含めた想像力を大いに駆使したがる人種なのだ。

もちろん、今や国民的アイドルだから、「伝説のあっちゃん」とか「あっちゃん→優子→そして次のセンターは誰だ」とか「総監督たかみな」とか「W松井はSKEの中心で且つAKBでも昇り龍的存在」とか、もはやメジャーになってた文脈もたくさんあるわけだけど、本書の冒頭、2012年の総選挙の結果について4人が戦わせる激論の中での「文脈の読み方」はハンパないッスよ! 

「W松井こと珠里奈と玲奈の激戦に敦子と優子の関係を見る」とか、「ダンスや演技ではズバ抜けていても、優子には“嫌われる才能”がない。だからあっちゃんという太陽がいないと輝けないんだ」とか、「ここで世代交代が起きて珠里奈とか玲奈のような新興勢力が1位になったら、この先、アイドルの寿命が決まってしまう。だから神7がほぼ議席を守れて良かったんだ」、「いや、それは保守的すぎる考え」、「だって彼女たちは空っぽの劇場から6−7年かけてこの環境を整えたんだぞ。入って1−2年の子が“選抜に入りたい”だなんておこがましい話だ」、「ともかく、全体の票数は増えているのに、1位の優子、3位(優子の対抗の本命といわれていた)ゆきりんの両者とも票を落としていることは、これまでがいかに“前田敦子を判定する”ための選挙だったかということを示している。今回も、不在にしてモンスター級の存在感を放っていたのは敦子」etc、etc…

こういうのを「何だこのくだらない四方山話」と堪えられずに読み飛ばすのが正常な大人で、「なにッそういう見方もできるのか。言われてみれば確かに…うおーっAKBヲタSUGEEEEEEE!」などとだんだん沸き上がってくるのが私(ヲタ素質あり)なわけですよねww

ともあれ、今や彼女らが熱狂的ヲタだけのものではなく、チャートはもちろん、テレビや週刊誌やカラオケ、小中学校などなども賑わすトップアイドルであることに異論をさしはさむ余地はありますまい。つまり何かしら、時代とフィットするものがあるということ。AKB自体に興味がなくても、流行りの現象そのものに興味があれば、この本はおおいに楽しめるのではなかろーか。(つづく)