『ゴーイングマイホーム』 第5話

●冒頭のクーナたちかわいすぎる! 「北海道寒い、長野寒い、もっと西のほうに行きたい、鹿児島とか。でもゴキブリいるでしょう? だからこのあたりがちょうどいい」って(笑) 良多から「いますよ、ここにも」と聞いていっせいに色めきたつ(笑)

●顔の線すげーきれいについてた。

●ワンシチュエーションで出てくるバカリズムが良い。彼のセリフは意図するものもせざるものもすべて良多に返ってくる。バス停で並列して待ってる凹凸の絵!

●CMタレント(高田純次役の高田純次)の楽屋を覗いて「あの飲み物がないじゃないか」って後輩に詰め寄るも、あっさりいなされる良多。その返しが、「気配りは別の形でやりますから」ってセリフってのがいい! 具体的に何をするのか先輩に説明しないであっさりといなす。完ぺきに成長しているし自信が窺える一言。

●洋菓子メーカーの社長・笹野高史の飄々と気難しい感じがすごくハマってる。その懐に今や自然に飛び込んでいる後輩と、気配り・気合がが空回りしている良多の対比。ひとつでなく複数の仕事で水をあけられている良多と後輩。こうなると、一気に良多が疎外されていくのがふつうのドラマなんだけど、そうじゃないってのがまた、いい。

 「お菓子なんて子どもの頃に刷り込んでおくのが一番」という後輩いわく“エグい、えげつない”策を練り、「クーナなどいない」前提で「見つかったらわが社がオールライツだ」とふっかける笹野高史の社長だが、ふと淋しげな表情で「もしも、いたら、頼みたいことが…」と言う。きっとそこには、死者の影。

 「父親のこと持ち出されると…」と良多に協力を申し出てしまう後輩。空回りする先輩を時に冷ややかな目で見つつも、CM撮影現場ではちゃんと「ぺろんちょ、ぺろぺろ」の振付を笑顔で一緒にやってたり、沙江に明らかな憧れを抱いていたり、親孝行できなかった小さな傷を抱えて生きていたりと、多面的なこの真田(今、名前を思い出しましたw)を新井浩文が抜群の存在感で演じてる。

 真田のウィークポイント“父親”を意図的につついてる良多もいい。そう簡単に後輩に追い越されず、年の功でその扱い方を心得てるって感じ。沙江と仕事仲間たちが帰ってきたとたんにいきなりわざとらしい「生き生きと仕事をしてる図」をテラスで展開する男二人もいい(笑)

●沙江と母親の応酬。
娘「(台所を)使ってないからきれいね」
母親「いい娘をもったわ」
娘「いい、じゃなくて、便利な、でしょ」
娘「私だけ運動会のときいつも菓子パンだった」
母親「悪かったと思ってるわよ」
娘「これっぽっちも思ってないくせに」
母親「思ってるわよ、私のこと恨んでるんだろうな、って。だから最近あんたがテレビに出てきたらチャンネル替えるの」
娘「いつもお母さんのこと考えながら料理してるよ。あてつけてやろうって。意地悪でしょ」
母親「まあ、忘れられるよりいいわ」
すごい! 状況説明でもキャラ説明でもありつつ、魅力的な会話! こういうのがほんとうまいよね、この脚本。

●片付けられた、もういない「めぐみちゃん」の机。ほかのクラスメートたちは気に留めていない。自分の机の引き出しに貼ったシールを手でなぞる萌江。開いたお弁当に手をつけず蓋をする。(いくつものシーンを挟んで)用具室で不使用の机をあたっている萌江。ひとつの机の前で止まり引き出しを手でなぞる。このとき、今度は引き出しを映しはしないんだけど、きっとあのシールがお揃いで貼ってあるんだな、とわかる。机を運び出す萌江。(いくつものシーンを挟んで)翌日、教室に復活している「めぐみちゃん」の机を遠巻きに見て不審がる級友たち。素知らぬ顔の萌江。

 薄暗い部屋での横顔の萌江。このカットが、とても10才そこそこの子どもを映し出したとは思えない、言葉にし難い退廃のムードを漂わせていて、「こ、是枝の本気!」と震えた。

●机の下のクーナにお供えされているお弁当のおかず。萌江がクーナに傾倒する理由がこの回に初めて仄めかされた。そこに漂うのはやはり死の香り。お弁当を自分で食べないのも、「めぐみちゃん」に関係あるのかな。