『平清盛』 第7話「光らない君」

サブタイトルがナイスセンスの第7話。やっぱりラブコメ書かせてもうまいな、藤本有紀*1!! 義清に代筆頼んでの歌のやりとりのくだりがもう、おっかしくって。

時子と明子に面識があるっていう大胆な設定なんだけど、明子との婚姻については史実でも謎な部分だし、過去の大河においてもこのような創作はよく見られることだから気にならない。

平家物語といえば琵琶で、明子は琵琶の名手で、時子は明子にそれを習っていて、昔から住吉大社=海の守り神に祈りを捧げる父親に育てられた明子は海にあこがれをもっていて、彼女と清盛は海の話で結ばれ、頼朝のナレーションにもあるとおり、「海に栄え、海に滅びる」のが平氏で、その最期の中心にあるのが時子なのだと思うと…あり。この創作は全然あり、むしろ、すっごく面白いんじゃなかろーか?!

私の中ではかなげなイメージだった高階基章の娘が、このドラマではなかなかに気性の激しいところも見せる明子さんでちょっと面食らったんだけど、琵琶が上手であることといい、源氏物語の「明石の君」がモチーフになってるからってことなのね。つーか、だから名前も「明」子なのねプププ。平家の物語たるこのドラマで、こんなにも源氏物語を使ったってことがまた、面白いよね。

深キョン源氏物語の朗詠、すごく良かった。原文を音読しながら、同時に現代語訳のテロップ+絵巻物で説明、っていう手法、大河には珍しいんだけど、これが新鮮。絵巻物の絵もなんかかわいくてね。ブログに上げるのが遅れてるけど、今、またまた源氏物語がマイブームなもんですから、「雀の子を、犬君が逃がしつる。伏籠のうちの籠めたりつるものを」なんて文を大河で聞けてミョ〜な感動が! 

この有名なフレーズに、“若紫の恋心の解放”という解釈をするのも面白かった。んで、清盛のプロポーズが見事、成就したのを盗み見した帰り道に、「雀の子を、犬君が…」と口ずさむ深キョン…いい! いいよ脚本! 立ち聞き、盗み見に頼った展開って、ドラマの悪しき常とう手段なんだけど、ここまでやってくれると全然OK。光らない君こと清盛に対して、明子が明石の君ならば、時子はまさに若紫なんですから、明石の君をド直球の告白で口説き落とした清盛が時子と結ばれるときは違う手段でくるんだろうな脚本家、ちょちょちょい待て、若紫ってことはつまり…×▽#$%?と、視聴者の妄想想像を広げさせてくれます。

や、別に源氏物語のあれこれに詳しくなくても、脚本と役者の演技で、なんとなーく感じられる気配ってもんがあるじゃないですか。「雀の子を…」て口ずさみながら帰る深キョンの表情とかね。そういうのが、この大河、浅くない。

ただ、まあド直球っていうのは大河の主人公の専売特許なのだけど、先週の清盛無双は特になんともなかったのに今週のプロポーズにはちょっと「喋りすぎ…」と感じてしまったワタクシ。しかし、清盛って、これからどのように成長していくんだろう、と考えるとホントわかんなくて面白い。

今週は冒頭、兎丸に対して「父上には父上の考えがある!」と迷いなく言いきったり、結婚のことも正々堂々と家族に承諾を得ようとしたりと、また成長の見られた清盛。ただし今んとこ、まだまだ持ち球はストレートだけ…てなわけです。

対して、身分違いの娘に恋した清盛を見て「遊びをせんとや…」を口ずさみながらふらふらと歩く忠盛。彼は明らかに、舞子のことを思い出しており、宗子=和久井映見はそのことを敏感に察している。清盛に良き縁組をして、ますます平氏の隆盛をと願っていた彼女(温厚で良識的な新興貴族と思われていた家成=佐藤二朗が、今回初めて、宗子に対して妙に湿った感情をあらわしたのも面白かった)は、みずからの遠く純粋な恋心を重ねるようにして清盛の結婚を許可した夫を見て、何を思うのか。

この、複雑〜な表情の宗子をラストカットに据えたことで、「清盛以外の登場人物って、基本的に誰もかれも“口に出しにくい思い、屈折”を抱えてるんだよね〜」ってことが、視聴者に再び強く印象づいて、こういうのを、清盛はどうやって突破していくんだろうか?と想像しちゃうんだよね。これからいろんな経験を経て、変化球もマスターしていくのか。それとも、とことん直球で勝負するという稀有な資質があったからこそ、氏の長者となれたのか。いや〜楽しみ。

しかも、予告に悪左府キター! 眉墨、お歯黒の山本耕史です。コイツ粛清とか言って、前世も土方かよ! と、twitterにしろ2ちゃんにしろハイクにしろ、「新選組!」ファンも大賑わいであったろう。悪左府ってさ、その通称がすでに凄いインパクトだよね。

その他、

  • 加藤あいの演技を特に違和感なく見られたことに、放送終了後に気づく。月日は流れるのだな…!
  • 明子を称して、清盛が「“清げなる”女」と言ったのが良かった。古典めいた、ゆかしい表現で。
  • 崇徳天皇の「瀬をはやみ〜」の歌が早くも登場したのにはびっくりだったんだけど、ARATAあらため井浦新の「義清…次はいつ参る?」のせりふまわしが、まさにやんごとなき御方、て感じでツボ
  • なり子こわすぎ! 目が血走ってるもん。でも、ちょっと憎しみのみに支配されすぎてて、ちょっとなー。たま子が空っぽのお人形である分、なり子は愛憎の“愛”の部分はじめ、人間くさーい感情すべてをもってる、って感じにしてくれたほうが、より怒りや憎しみも引き立つ気がする。んで、鳥羽上皇も、着替え中を襲われてビビってんじゃねーよ! 「もののけ王に、俺はなる!」と宣言したのを忘れたのか。
  • 先週、りょう@堀川局と悩ましくイチャこいてたくせに、「妻だ」と清盛に紹介して涼しい顔をしている義清さんがすごくイイ。

*1:正確には、ラブコメ書かせてもスイーツ脳バリバリだった昨年の大河よりよっぽどうまいな