『平清盛』 第14話「家盛決起」

いやはや、いやはや、なんともはや。家盛決起、というよりは「家盛、無念」(cf.龍馬伝 第20話「収二郎、無念」)とか「家盛無惨」(cf.独眼竜政宗 第12話「輝宗無惨」)といった内容でしたな。悪左府頼長の勇名(笑)が学者も認めるところであるのは存じていたけれども、ああいう予告っていわゆる「釣り」でしかなくて、実際は予告のインパクトよりマイルドになっている場合が往々にしてあるじゃないですか。それを、あんなにガチでくるとは。心中、「家盛逃げて〜!」といったい何度叫んだことでしょう。同時に、5回に1回くらいは「頼長やれ〜!いけ〜!」と叫んでた気もするけど…ほほほ。

もとい、今回はいろいろな「ふたり」の描写が印象的な回でした。

●清盛−時子
「一度我が殿と決めたものを、そうやすやすと変えられるものですか。どんなに落ちぶれようと、あなた様こそが私の光る君、それは一生変わることはございません」。公務からは遠ざけられ、叔父さん、異母弟、家来衆など一門の場でも完全アウェー状態の清盛をつぶさに見たうえでの、時子の“強い気持ち・強い愛”(from オザケン)です。泣けるわ〜。そりゃ、清盛も無言でがばちょ、と抱きしめますよ。つくづく妻に恵まれる男だな。ここは少女漫画風味。

●清盛−義朝
やたらばったり鉢合わせするのは運命の相手の証拠です。ひと目見ただけで「なにクサッた顔してんだよ」と見抜く義朝くん。自分もクサクサしてたっちゅーのに、お酒をわけてくれます。いい奴〜! 初めて気が合ったな、とクサレホモ野郎のことを一緒にクサした30秒後くらいにはもう喧嘩になってるの含めて、ベストフレンズ。ここは少年漫画風味。

●頼長×家盛
あらっ、ついつい専門的な表記をしてしまったわw あちこちで詳細に解説されているだろうから簡単に書きますけどね、1回目は、そばに控えていた家臣を下がらせたりして周到に外堀を埋め(いかにも「心得ております」って感じで退出していったよぉぉ)、甘言をささやきながらそーっと押し倒した頼長(と、まったく逆らわない家盛)。2回目は*1、己の姦計をすべて明かす頼長に誇りをズタズタにされ、腰を抜かさんばかりの恐怖に襲われて這って逃げんとする家盛、それをうしろから羽交い絞めにして凌辱する頼長…! ちょ、BL漫画風味…風味を超えて、そのものアッー!でございました。まあ、江戸時代に至るまで、貴族・武士・僧侶階級での男色は公然と行われていたわけですから。別に無理のある話じゃないどころか、むしろ忠実に風俗を再現しているくらいですw

●忠盛−宗子
どちらも人格者で、お互いに対する愛情や労りにもあふれているのに、この、いつ崩れてもおかしくないような危ういところでどうにか保たれている均衡、息詰まる空気。長年連れ添う夫婦の、ひとつのリアルな形がここに示されています(?)。

●義朝−由良御前
「あなたがどんなに落ちぶれようとも」の時子ちゃんに対して、「私や子どもを飢えさせたら許さないわよ!」の由良ちゃん。なんと対照的。まあ、方法はどうあれ夫を伸ばす妻であれば問題ないのかもしれませんが、なんか不穏…! 義朝って結局かわいい女が好きなんだよね。そして、そんな猛々しい彼の心をとろかす美女は、すでに登場してしまった!

●(番外編1)義朝−常磐−清盛
「初登場時にシンボライズ」はこの大河の大きな特徴の一つなんだけど、運命の美女・常磐さんの場合も、初登場ですでにトライアングル! そうか〜、せっかく義朝と清盛をこんなに仲良しの設定にしてるんだもんね〜。藤本さんうまい! それにしても、病身の母のためと必死に売り込む声のなんとかわいいこと、笑い声のなんと涼やかで、上げた顔の、うす汚れていても、なんと愛らしいこと! 今もっとも旬な若い女優さんが大河に出るのはすばらしいことです。

●義朝−為義
むむ? なんか急に雰囲気が変わった? 小日向パパは息子の武勇に心酔しきっているとばかり思っていたら、そこはやっぱり、なけなしの親父のプライドがあるってことなのかしら? どう見ても、すでに父より強そうだし人望もありそうな義朝が、不承不承ながらも従ったのは、「源氏の嫡男なら俺の言うことを聞け」って言われたからなんだろうけど、平氏のみならず、実は源氏も家督争いの火種を抱えていることへの言及がこれまでにあれば、このくだりにももっと説得力があったんだろうがね。そう、ああ見えて、小日向パパもかつては荒ぶる種馬だったっていう言及があればね…ふふふ。

●忠盛−家貞
いつ見ても無類の安心感が漂う、ふたりの茶飲み話。完全無欠のベストカップル。

●家盛−宗子
ああ、なんというもどかしさ。本当のことは誰も口にはしないよ…を地できたふたり。フラグが、フラグが立ちまくっております!

●清盛−家盛
なんだかんだいろいろあったけど、今夜のメインはこれですからねっ。どれだけ周りがやいのやいの言おうが、血がつながっていないと昔からわかっていようが、平太・平次だったあの幼き日から、このふたりは仲の良い兄弟、兄は弟が、弟は兄が大好きだったのです。兄弟の悲劇は歴史ドラマのお約束とはいえ、子役シーンの挿入といい、あまりに切ない出来栄えに胸がきゅーんとしました。大東くんが、あのかわいい子犬みたいだった家盛が、まさかあんな目にあって、こんなことになっちゃうなんてーーー(って、やっぱりアレを思い出してるw)。ほんと、あまりにかわいそうで、「忠盛、だいたい、おめーが悪い!」て、じーっと黙ってる貴一にすべてをおっかぶせたくなったわ。

●(番外編その2)その他兄弟
かつてのアバンタイトルで、「三と四はよそにおるゆえ」と宗子さんがチクリと言って、貴一が気まずそうに扇で顔を隠した*2ところの、三と四が大人になって初登場。経盛、教盛です。おっと〜小原家に養子に来た勝さんです! また、影の薄そうな笑顔の役だなオイ。どーにもこーにもならん表情がすげーうまい五男の頼盛ともども、この先、清盛に対してどういう態度を示すんであろーか。

てか、清盛もさー、いくら命じられてるからって、馬鹿正直に謹慎してクサクサしてるだけの描写ってのはどうなんだろう。せっかく、博多の津や神埼の荘園、密貿易や宋銭なんかもこれまで盛り込んできたんだから、棟梁になる気構えがあるなら、その辺、実務に長けてる描写なんかも欲しいところだ。本当に「もののけ+強い女」の血によるむこうみずさだけで、平氏を率いて立ち、おもしろき世に変えていくってのか? その辺、大人の鑑賞に堪える清盛の実力を示してほしい。

*1:あのね、これ2回目って、映像上では2回目だったってだけでね、現実にはいくぶん季節が過ぎていたので、その間を通してふたりは懇ろだったってわけですよね?キャー

*2:この場面なにげに好きだった。歴史ものでは避けて通れない一夫多妻制をここまでサラリと(しかもアバンで)こなしたのは秀逸!