睦月の八

●1月某日: 友だちの家へ。向かうバスでは、自動ドアが開くと「あいた〜!」、閉まって走り出すと「ばっばーい」を延々と繰り返すサクと、彼を抱っこしたまま眠り続ける夫。久しぶりだったけど迷わずたどりつけたたなかまさんの家では、中庭で絶賛燻製作成中! ほどなく、ささみ、サーモン、チーズ、ゆで卵など、次々と供される燻されたものをつまみに、昼日中からワインを飲む大人3人+いたずらしまくる子供1匹+燻し&子供担当のエフ氏。屋上に上がって見る下呉服町のゆかしい町並みもこれが最後かなあ。もうすぐ引越しをする夫妻である。今よりはかなりご近所になるし、今よりさらにすてきな住まいが出来上がるだろうことを思うともちろん楽しみなのだが、当事者でもないのにちょっと淋しい気がするのはなぜ。それにしても、子供はしこたま遊んでもらって帰りのバスから延々と寝続け、大人はいただいたつまみでおなか一杯になり、夕ごはんがいけないくらいだった。

●1月某日: 既に起きていた夫に「おはよ〜もう雨降ってる?」と聞くと、「降ってる。外出は午後からだな。午前中は料理三昧してます」とのこと。ガンバ!(このとき既に煮物ができていた) サクが午前11時過ぎに吐く。朝に食べたものがどぼっと出てきた。検温すると微熱。機嫌よく遊んでいる最中でびっくりアンド「もしやノロとかロタとかそういう類の」と固唾を飲んで見守る一日だったが、その後はまた至ってご機嫌で、嘔吐も下痢もなし、食欲もあり体温も平常に。ななななんだったのであろうか。お風呂の前にサクの前髪を切る。夏以来4ヶ月ぶり以上か。今回も、私:押さえる、夫:切る係。「なんか初期ビートルズみたいになった」と夫に言われて見てみた新しいサクの前髪は、うん、ビートルズ以前に、すんげー斜めだね! でもいいの。かわいいから。親(バカ)が「かわいい、かわいい」と思ってりゃそれでいいのよ、1歳半の前髪なんて。それからというもの、「前髪みじかの介」と呼んで愛でてる。

●1月某日: 『運命の人』を見ていると、モックンの演じる新聞記者・弓成のおバカさはもちろんのことだが、尊大な態度に腹立たしさを覚える。前職時代の悪しき記憶が蘇ってくるのだ。決算発表にやってくる記者たちときたら、口調は慇懃無礼だわ、今にもずり落ちそうなくらいだらしなくイスに腰掛けるわ。日経が当社のスクープ記事を書いた日、他紙がかけてきた電話攻勢の常軌を逸したやり口といったら! 「ブンヤってそんなに偉いのかい」と、あのころから新聞ってものに対する見方が変わったね。まあ、IR担当役員であった上司の、徹底した「とりつくしまもない」対応も見事だったが。職場って戦場なのね、と悟った若き日の思い出のひとつ。