谷原章介の本棚

しばらく前の話になるが、雑誌「日経WOMAN」に、谷原章介へのインタビュー記事があった。胸が熱くなる記事だったのよ! 彼が選んだ「心をみたす10冊」のラインナップときたら!

「なんてお目が高い!」と言えば、どんな上から視線じゃい、ってことになってしまうんだけど、本当にすてきな10冊ではないか。

人気どころの作家にしても、『蝉しぐれ』や『竜馬がゆく』のような王道については、「たくさんの名作があるんだけど、1冊選ぶとするならやっぱりこれ」みたいなコメント。わかるわかるわかります。同時に、存命の超人気作家・村上春樹からは『ねじまき鳥』、宮部みゆきからは『初ものがたり』という、ど真ん中からはちょっと外した作品を選びだす渋さも見せる。

また、『吉原御免状』や『小川未明作品集』のような、本そのものが“おぬし、なかなかのツウじゃな”的なチョイスもあり。少女マンガ界のカリスマや絵本からといった、時を経ても色あせない珠玉のチョイスもあり。役者の大先輩であり、大変な読書家として知られた児玉清さんの著書も愛読していて。そして、『ハーレムの熱い日々』ですよ〜! この本について、有名人が語るのを目にしようとは。

すごく難しい本とか、すごくマニアックな本はなく、また、いわゆる“流行本”“新興勢力”みたいなものに飛びついてもおらず、どの本をとっても押しも押されぬ名作、ロングセラー。

1冊1冊がすばらしい上に、10冊並べたときのバランスもすごくいいんだよね。この10冊の向こうに、100冊、1,000冊の、谷原章介の愛読書(未来の愛読書も含めて)が見える気がするのだ。

「人生を変えた本は?」というインタビュアーの質問には、うーんと首をひねり、「1冊で人生が変わるような本はありません。そういうのがあったら、戦争もとっくになくなるでしょう」みたいな答え方。次いで、

でも、いろんな本を読んで感じたこと、考えたことは少しずつ自分の中に蓄積されて、自分の思考や行動に反映されていく。だから僕は、明日も明後日も、1冊ずつ読んでいくんだと思います

のような発言(立ち読みだったんで細かいニュアンスは忘れました・・・)。これには痺れた。間違いない、コイツ正真正銘の読書人だ!

もう5,6年前にもなりますかね、民放の連続ドラマに10クール近く連続して脇キャラで出演し続け、「いいかげんタニショーは見飽きた」と巷で言われて、このまま消えていくのかなーと思った時期もあった。けれど、2007年大河『風林火山』の今川義元、2008年の映画『ハンサム★スーツ』、2010年『曲げられない女』の光輝などなど、今でも良い役は続き、やっぱりこの人なしのドラマ界はありえない、と思わせるどころか、ますます魅力に磨きがかかってる気がする。

演じる役柄が幅広く、人間の多面性や屈折みたいなのも演じるのがうまいのは、彼という器に、どんなものでも受け入れ、飲み込み、咀嚼できる力があるからじゃないかと思う。その能力の一端は読書で培われてるんだなーと思うと、今後の活躍に私がさらなるエールを送っちゃうことは必至。

大河ドラマにも2,3年に一度は出て欲しいものです。『龍馬伝』では、顔に落書きして芸者と遊んでるという斬新な登場の仕方の桂小五郎で、すごく期待したのに、その後の描き込みは薄くて残念だったからなー。