『国盗り物語 三』 司馬遼太郎

国盗り物語〈第3巻〉織田信長〈前編〉 (新潮文庫)

国盗り物語〈第3巻〉織田信長〈前編〉 (新潮文庫)

対談集がすごく面白かったんで、ひさびさに司馬遼太郎の小説も読みたいなと思って、読み始めたら、再読なんだけど忘れているところも多くて、止まらないのなんのって。やっぱり、英雄を英雄らしく描くことに関して、司馬って天下一品だな。信長がすげーのなんのって。かっこいいというかこわいというか。とにかく天才。天才を描けるってすごいよ。天才の思考回路なんて凡人にはわからんもん。やっぱり司馬も天才だったのか・・・?とすら思わされる信長の天才っぷり。

私の愛読しているこの本によると、

いま私たちがイメージする“信長像”が描かれ始めたのは、坂口安吾の『信長』が最初らしいね。近代的な合理主義精神の塊、という。ハタチくらいのころ安吾大好きだった私、もちろん持っております(私がもっているのはちくまの全集だが)。この信長は確かにとびきりかっこいい。
信長 (宝島社文庫)

信長 (宝島社文庫)

閑話休題

こんなふうに、英雄小説(というジャンルを、いま私がつくった)といえば司馬、司馬といえば英雄小説というイメージは強いと思うが、久々に読むとこの『国盗り物語』3巻、実は信長と同じくらい、もしくはそれ以上かもしれないほどのボリュームが、明智光秀に割かれてるってことに気付いた。しかも、光秀ったら恵まれない境遇の中、志大きく誇り高くがんばるがんばる。信義にも情にも厚いし、肩入れせずにはいられない。

この3巻には、1・2巻の主人公であった斉藤道三の非業の最期も描かれているし、『燃えよ剣』の主人公土方歳三だって、とても英雄体質の人間ではない。なーんだ、考えてみれば、司馬はたくさんの敗残者(として記憶されがちな人物)たちにスポットライトを当て続けたんじゃないの。