『きのう何食べた?』第4巻 よしながふみ

きのう何食べた?(4) (モーニング KC)

きのう何食べた?(4) (モーニング KC)

シロさんの地に足のついた料理上手っぷりが最大のウリだとしても、やっぱり1話1話のエピソードあっての料理&食事風景だと思う。

一緒に暮らす40代のゲイカップルであるシロさんとケンジ。ふたりの生々しい性描写なんかはまったく抜きに、けれど、実はなかなかエグいエピソードがさらっと繰り出されてくる(シロさんが弁護士であるという設定もエピソードの多彩さに寄与している)。嫁姑問題やDV、親が老いていくこととか、シロさんとケンジでは自分たちの子どもはもてないこととか。同性愛者ゆえのトピックもそうでないものも、まったく同じ俎上に乗っており、私たちはそれを何の違和感もなく読む。よしながふみは、『大奥』とは真逆のようなやり方で、けれど同じく、マイノリティの人々の生を描いてすんなりと読ませることに成功している。

こういう年齢になってくると、惚れた腫れただけに邁進してるわけにはいかなくて、人生っていろいろあるよね、それでも、どんなときもごはんは食べるよね。いろんなものを飲み込みながら人生は続くよね、という感じが、この作品をとびきり愛おしいものにしていると思う。

この巻でいちばん好きなのは、店長に浮気中であることを告白されたケンジが、「大事にする、大事にするよ、シロさん」と思いながら家路につくところ。