『龍馬伝』第25話『寺田屋の母』、第26話『西郷吉之助』
ドラマ開始から半年を経て、いまだ「コイツは・・・」チッ、と舌打ちしたくなるキャスティング、演技をする俳優がひとりもいないっていうのは、かなりすごいことだと思う。おおかたが「なるほどね〜」という役のふり方で、たまに発表時点では「エッ?」と首を傾げるキャスティングでも、実際にドラマを見れば「ホウホウ」と大きく肯けるのは、プロデューサーの手腕なのか、あるいは脚本や演出の力なのか。
ここ2話での新しい登場人物もとってもワクワクさせてくれた。寺田屋の母こと“お登勢”、龍馬の死んだ母に瓜二つという設定を知ったときはげんなりしたものだが、実際に見てみると草刈民代のお登勢さんのステキなこと! キップがよくて愛嬌があってちょっとハスッパ。夜の川辺でタバコ吹かしながら低い声で端唄を歌ってる姿もとてもかっこいい。母にそっくりだということでさんざアワアワさせといて、でも「やっぱり全然違う!」と満面の笑顔で(←ここがポイント)龍馬に言わせる脚本演出もよかったなあ。
草刈民代(お登勢)もマイコ(岩崎弥太郎の妻・喜勢)も、今クールドラマ『新参者』に出演していたが、両作品における魅力の落差といったらどうだろう! まあ、『新参者』では二人とも、役柄自体が暗い影を帯びていたというのはあるにせよ、あまりに違いすぎた。
草刈さんもマイコさんも、女優としてのキャリアは浅く、こういっちゃなんだけど、演技もまださほど達者なわけではない。しかし、同時期にふたつのドラマにキャスティングされるくらいだから、当然、今後を期待される何かを「持ってる」女性なのである。それを、龍馬伝は鮮やかに引き出す演出をしている。出番はさほど多くなくても、すごく印象に残るし、また出ないかな〜と思っちゃう。
今日登場の高橋克実の西郷吉之助にも、1話にしてすっかりやられてしまった。闊達そうに見えて何となく不気味、という、すばらしい風格をもった西郷どんである。武市さんと以蔵亡き後、第3部以降はこの高橋克実(西郷)、谷原章介(桂小五郎)、そして伊勢谷友介(高杉晋作)がドラマを牽引してくれる。もちろん、香川照之(弥太郎)もいる。またね〜、弥太郎が、エゴイストになりきれない、かわいい奴でね〜。もう、こうなってくると、むしろ龍馬いらないんじゃ?てぐらいの豪華キャストといえよう!!