『龍馬伝』第40話「清風亭の対決」
最近では出色の回ではなかろーか。大変に楽しめた。や、前回の、伊勢谷晋作の三味線無双もおもしろかったんだがね。このドラマ、リアリズムを追求しているものだとばかり思ってると、大友の気分次第(?)でこういう演出になるから油断できない(?)。戦場で着流し! 三味線! 弾は当たらない! 敵は道を開けてくれる! いいんです、伊勢谷さんさえ、かっこ良ければ! 木戸や西郷はわからんちんでも、かっこ良い伊勢谷さんだけは、大政奉還に即時賛成なのです!
・・・・てか、龍馬は、いったいいつどこで、どんなふうに大政奉還を思いついたっていうんですか。薩長同盟といい、その思想の出どころをもちょっと説得力あるように描いてくれないのが、私の大いなる不満である。それを描いてこそ、坂本龍馬っちゅうのがどんな人間だったかっていうのを描くってことになるんじゃないかと思うのだが。
さて、40話目にして、オープニングのキャストクレジットで初のピン! 青木崇高さんのファンの方々、おめでとうございます!
この後藤象二郎っちゅう人が、ドラマの中ではまた微妙で、叔父である吉田東洋のことは大好き、だから彼の上に立つ大殿様も大好きで、彼が嫌いだった武市半平太のことは大嫌い、彼を殺したかもしれない龍馬のことも大嫌い、弥太郎のことは嫌い嫌いも好きのうち・・・みたいな、妙に好き嫌いの激しい人物であり、優秀なのか愚物なのか、よくわからなかった。つーか藩の執政のくせに、前々から弥太郎以外にろくな部下がいそうになくて、一時期は弥太郎と一緒にコメディ班と化してたもんね。
でも、その辺の、脚本にははっきり書かれてない点を、演出も含めて、青木さんがなんとなーく、うまくカバーして表現してきたような気もする。もともと上士の家の坊ちゃん育ち、強烈な優性思想の持ち主だが、犬畜生以下だと思っていた以蔵をいくら拷問しても吐かせられなかったり、武市さんの矜持あふれる切腹を見届けたり、龍馬の闊達さにしてやられたり、弥太郎の卑屈さに隠れた優秀さに気づいたり・・・そんなこんなのうちに、いつしか少しずつ変わっていったんじゃないか・・・と、なんとなく、思える。
今日の放送分にしてもそう。後藤はあくまで“大殿様に言われたから”動いているのであり、大局観や時流を読む眼を持っているわけではなく、下士出身の脱藩浪士である龍馬を蔑み、叔父の敵と憎んでもいるのだが、実際に龍馬本人に会ってみると、己の意志で彼と手を組むことを決める。龍馬に惚れ込んだりはしていないし、いまいましい思いはあるのだが、いま必要なものを選べる能力、偏見や過去の恩讐を越える度量を持っている。そういう人物像が、演技、特に表情から違和感なく伝わってきた。
それに、先週といい今週といい、香川照之と蒼井優のやりとりは見ごたえがあったね〜。ふたりとも、なんて襞の細やかな芝居をしてみせることでしょう。出番は多くなくても、こういう人たちがドラマに深みを与えてくれる。