『龍馬伝』第21話「故郷の友よ」

のちにこのドラマ屈指の名場面のひとつといわれるだろう半平太と富さんの別れ。捕り方が踏み込んでくる中、悠然と朝餉をとりつづける武市半平太・・・というお約束を少しアレンジしたものだった。見ているときは泣けたりはしなかったんだけど、あとで思い出すとなんだかしみじみするような、やっぱりいいシーンだったと思う。もう1回見たいな。反芻に耐えられるって、すばらしいことだ。

古い思想に凝り固まっているような、なんだかなぁ・・・というようでもあったこのドラマでの半平太だけど、この日の放送を見る限り、愚かでも哀れでもなく、むしろ格調高い最期を迎えることになりそうで、安心した。先進性、ヒューマニズムの龍馬が後世までの英雄であるのに対して、半平太が何事をも成し遂げられないまま、激しく移りかわる時代の波間に消えたたくさんの命のひとつであったとしても、彼が貫いた「武士の本分」を貶めることも過剰に美化することもない脚本・演出でありますように! 思うにね、このドラマ、言葉で語らせすぎないほうがいいと思うんだよね。役者さんがみんなうまいから。

武市夫婦の別れと同時に、材木を売り切った弥太郎夫婦の歓喜のさまが描かれていて、龍馬伝にはこういう演出がけっこう多くて、そういうのって「作りこんでるなー」と一歩引いて見つつ引き込まれつつ・・・と忙しい。