『西郷どん』 第10話 「篤姫はどこへ」
大河ドラマの醍醐味の一つは、歴史を彩るさまざまな人物が次々と登場してくることにある。うぶで鷹揚な西郷に対し、食えない遊び人ふうの一橋慶喜。切れ者で志に燃える橋本左内。造形、キャスティングともに、今後が楽しみになる取り合わせをよく考えてあるよなーと感心。
風間俊介の橋本左内、さすがにうまい。生真面目で間違いなく優秀な、けれどどこか危うい雰囲気を初手からびんびん出してくる。西郷をdisって帰る様子、本当にかわいそうなのは勝手に見込まれて勝手に失望された西郷のはずだが、一人でキリキリ舞いしてる左内のほうが気の毒に見えてくるんだよねw 「僕」という、この時代には真新しい一人称を意識的に言っているのもよくわかる芝居だった。それにしても最近のジャニーズさんは時代劇に溶け込むどころか引っ張るくらいの勢いの方が多いですね。
今回すばらしいなと思ったのは、海辺での西郷と篤姫のシーン。鈴木亮平が語る薩摩での大家族の思い出が、映像つきだったからというだけじゃなく、本当に実体験を語っているかのような風情で、その日々はもう二度と戻らないんだなあと思うと、ついうるうるしてしまった。回想シーンに映る篤姫の実父、島津忠剛が長塚京三でないことに違和感を覚えた視聴者は私だけじゃないと思いますが(笑)、西郷と篤姫の回顧が響きあう感覚で見ることができました。
が、残念だなと思ったのもこのシーンで、万事につけ一から十までセリフで語らせる作風だから仕方ないとはいえ、篤姫の「あらためて礼を申すぞ。ありがとう」あたりは、その前が叙情的だっただけにくどくどしく感じられたことでした。
南野陽子の幾島。斉藤由貴の代役ですが、さすがの貫禄でハマってましたね。松坂慶子からの幾島ラインとしても継承性を感じましたw 「ひ・かぁえよ」キャッチーにくるなあw お庭でいちいち反応する吉之助かわゆ。
かわゆいといえば、ユッキーヤですよ。今のところ、なんちゃぁない役どころなんだけど、いつも全力で芝居をしている! 品川遊郭のお玉さんだか誰だかが優しいと感激してる小芝居の小物感のすばらしさ、今さらユッキーヤをこんな使い方するなんてゴージャスなドラマや!
側近・山田を演じる徳井さんの軽妙な演技が斉彬の重厚さとコントラストを作っているのはわかるし好きなんだけど、いかんせん他の家臣の姿が見えない状態で西郷に課される「慶喜と昵懇になれ」という命・・・。さすがに薩摩藩の人手不足感甚だしくw 幕末史、大丈夫かなという気にもなりますw
でも今回のキモはやっぱり、「お篤は不幸になる」宣言なんでしょうね、そこはキレイキレイでごまかさないんだね、と。藩主の座に就くために父も陥れた(というか正々堂々のギャンブル?だったけど)斉彬ですが、あれはいわゆる下克上だったわけで、今回の篤姫についての言及は、
「大義のためなら自分より力弱き者も犠牲にするのをいとわない」
と言ったも同然で、それはつまり「西郷おまえだって大義のためなら切り捨てる」と言ったも同然だし、一方でそんなマキャベリストな腹の内を開示するほど西郷を見込んでいるとも言えて、なかなか興味深いものがありました。