『おんな城主直虎』 第42話 「長篠に立てる柵」

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人、人、人。凹凸豊かな、人間くさい人物が並みいる「おんな城主直虎」界にひとり屹立する第六天魔王。そんな感じですね、今作の信長は。その怖さは信玄や寿桂尼のは迫力とは違って、体温とか血液とかを感じさせないもの。海老蔵はこういう役をやると映える。

信康に、近藤(配下の之の字と六左)に。家康の麾下に高級茶碗を与えるのは、信長流の揺さぶりなんだろうな。主君の頭越しに貴重品をもらってホイホイ喜ぶような者がいれば、徳川軍団のレベルは推して知るべしだし、家康がそんな配下に腹を立てて粛清したりすれば、家康の織田への忠誠も底が知れる。

信康も近藤もその手には乗らなかった。長篠を好き勝手に造作されても、大久保忠世のごときは怒ったが、それを宥めたのは、ほかならぬ本田忠勝。先週、ノブ相手にあれだけ激高してぼてくり回した彼が、今は我慢だと説く。徳川幹部のレベルの高さを感じさせる。理由が「殿が困っておられる」なのが、また、いいね。忠勝の行動原理をあらわしている。

「信康は婿」「家康は兄弟同然」と言いながら、信長は全く信じていないんだね。茶碗も、柵もそういうこと。信康は「自分は人の子」と言い、近藤は茶碗をわがものにせず寺に寄進し、家康は岡崎で織田と徳川の板挟みになりがちな石川数正をいたわる。が、が、が、これがこのままおさまるはずがないと、史実を鑑みれば・・・((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル というか、その史実から遡っての、この脚本なのだよね。まったくもう!容赦ない!



去年、「真田丸」でも、真田昌幸が信州の獣の皮を秀吉に献上しようとして、そんな田舎くさいものと三成にバッサリ斬られる場面があったけど、今年、雅な茶碗に目を白黒させる直虎には哀れさがまったくなかった。

長篠の合戦、短い時間だったけどなかなか迫力あったような。なんたって、信玄のもとであれだけブイブイ言わせて、他家の生首ふたつ、その家に放り投げて哄笑してた山県昌景が首をとられる姿ですよ。しかも、凛として死に臨んだりしないんだよね。クアーッて苦悶した顔。戦国絵巻だった!

万千代&万福くん。家康から褒められてよかったね・・・マジで感動した、その場面は(笑)。

いろんなことがすばらしかったよね。結局、留守居になっちゃってあんなに気落ちしてたのに、一転、気を取り直して草履棚の改良に励むとか。弓槍の手入れも愚直にがんばった。「このひと月、おのれの手元しか見てないような気がします」っていうセリフ、その一言でどれだけ根を詰めてたか想像できてうまい。

酒井一門の小姓が口先で手柄をさらっていっても、真実はちゃんと明らかになった。しかも、家康だけが見抜いたのではなく、みんなが感嘆してたことを家康は伝えてくれた。こないだは草履の鼻緒に細工をして、準備のいいとこを見せつけたけど、今回は影ながらの地道な働き。そういうのをみんなちゃんと見てるんだよ、という現象、そして言葉で褒めてくれる上司。見てて気持ちいい。

で、褒められた虎松がことのほか感動するんだよねw 草履番とか武具の手入れとか、裏方の仕事に徹していて、しかも「つぶれた家の子」と軽んじられて、つらかったよね。まだたった15だもんね・・・と、思わずわたくしもホロリときました。

自信満々で大言壮語、上昇志向甚だしく、小賢しい小細工も辞さない虎松が、正面切って褒められて鼻高々になるどころか感動のあまり言葉を失い、さらに!「取り乱して失礼しました」とそんな己を恥じる姿・・・ギャップでぐっときますよね。しかも、「顔だけはかわいらしい」し、“契り”を覚悟して、めかしこんでやってきている。

家康がその気になるのも、むべなるかなですよ!!!!!!!!

榊原に夜伽を(違)命じられ、「こ、これは・・・」と己の体を抱きしめるあたりから、爆笑の連続だった。ノブの「万千代どのは、お顔だけはかわいらしいですからな」最高ww とばっちりで殴られた仕返しはきっちりできましたねwww でも、あれって、虎松に覚悟を促す一言にもなったのかなって気がする。「裏切者だからこそ」目にもの見せてやる、という秘めた意気をのぞかせたノブの言葉を思い出し、立身出世のためならエンヤコラ、と期したんではなかろーか。

ことさらユーモラスな演出になってたものの、出世のために我が身を差し出す…というか、求められれば否も応もなく同衾するって、これが女なら、昔は珍しくもない話なんだよね。実際には戦国時代、男の子だって・・・というのを前田利家や高坂弾正の例を引いて紹介したのもよかった。

で、決意して新しい褌を締めたもののw、いざ本当に求められるとあとずさってしまう虎松・・・という描写もとてもよかった。いや、ゲスな意味だけではなくw まっすぐに育った15の子どもなら当然だと思う。

家康の、いかにも艶福家らしい、女を手籠めにするのに慣れた迫り方もよかった。それにしても、あの家康が、“ひとり碁対決”をほっぽりだすってすごいことだし、でもそれがわかるわ!!!っていう万千代の可憐さでした。うう~~~~家康は結局どうするんでしょうか!? めちゃくちゃ気になる~~~日曜まで待てない~~~!