『おんな城主直虎』 第48話 「信長、浜松来たいってよ」

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六左、之の字、村の者たち。
彼らが最終回近くまで近くまで顔見せして、名(迷?)活躍を見せたり直虎との信頼関係を見せたりするのがうれしいし、「これで活躍しおさめかもね」という淋しさもある。

暴れ天竜(川)を人の関で止めた、というのも、巷談レベルかもしれんけど史料に残っているらしくて、最後まで面白い話を拾ってきて映像化するなあと感心する。「美丈夫」の列に加えられた之の字の体つきもよかった。昔は、西島の兄つぁま(@八重の桜)的なムキムキではなく、あの列の方々のようにすべすべむっちりした体つきが美丈夫だったんじゃないかと思う。まあ、之の字のお顔は美丈夫向きではないような気もするけど、そこはそれ、万千代も驚いてたしねw

人数は少ないとはいえ、脚本の徳川家臣団の捌き方に「適材適所」感があって気持ちいい。宴でユニークな座興などして笑わせるのは本多忠勝かと思いきや酒井忠次なのがいいw みのすけww 次にどんなドラマで会えるか楽しみだww

徳川は酔いちくれてばかりだな、と嫌味たらたらの長谷川に、「織田様のおかげでみな喜んで喜んでw」と曇りのない微笑みを浮かべる康政がめっちゃ頼もしくて、ほのかにちょっとイラッとする、尾美としのりの味のすばらしさなw ラスト、「尋ねるまでもなかったですな(にっこり)」も、心底うれしそうな康政にちょっとだけイラッ(単に「あまちゃん」の見すぎかw)w ま、この有能な康政に一目も二目も置かれていることが、家臣団の中で明らかに幼い万千代の優秀さを示す担保にもなっている形だ。

ちんまい裏庭みたいな井戸端に井伊の者が集まるのはいいとして(洒落ではない!)、瀬名やら龍雲丸やら、はては明智の子まで集まってくるのはどんなホイホイかと思うんですがまぁいいでしょうw

あの子が明智の子、という設定にハッ!!!!!とした。1年間のドラマの最終盤に本能寺の変をもってきて、その裏で今川と徳川そして井伊が結託しているという大胆な創作をぶちあげた今回だが、序盤から良くも悪くも深い縁でつながれた3家と違って、明智はこないだからちょいちょい顔をのぞかせていただけで、ポッと出で絡んできた感が否めない。そこで明智の子である! 

子役たちの競演で始まった今作。瀬名も(龍王丸も)、虎松も、龍雲丸も、子ども時代がきっちり語られた。時に大人たちに守られ、時に翻弄され放り出され、その経験を根っこにして育つ子どもたち。

直虎は言う。「これはさだめだと思う。直親も虎松も、よその寺に守ってもらった。今度は我らがあの子を守る番」 明智光秀にこののち待つ運命を私たちは知っている。けれどあの幼い子は直虎たちによって守られるのではないかと私は思う(史実は知らん)。直虎は口に出さなかったが、もう1人、政次が虎松の身代わりに殺した疱瘡の子がいるからだ。だから直虎はきっとあの子を守る。少なくとも、全力で守ろうとすると思う。

不安でいっぱいの子を安心させることを言い、迷いなく抱きしめて「よう耐えた」と褒める直虎の姿に、彼女が重ねてきた年月を感じる。「何があろうと味方だ」その言葉に嘘はないが、一方で直虎は氏真にカマをかけ、家康を焚きつけるなど自然の存在をごく当然に切り札にも使っている。これも彼女が重ねた年月である。

今回、直虎が氏真、そして家康と、2人きりで相対する場面があった。いずれも歴史上に名を残す会談などではない、純粋な創作であり、へた打てば「トンデモ」と言われかねない。でも違うんだな~。主人公と因縁浅からぬ相手が小部屋で正対するだけでぐっとくる、これぞ大河の大詰めといった雰囲気があった。柴咲コウの据わった目と、一転、家康に願いを伝える時の息をつめたような表情がすばらしい。華々しい戦場でも、きらびやかな大奥でもない、花柄はついていても質素でオバサンくさい着物の最終盤である。でもこれが直虎だよね、ここまできたよねという感慨がある。

「桶狭間の、瀬名の仇を打ちたくはないか。わしは打ちたいぞ」と氏真。ぴくりとも動かず、己を見据える直虎に「そなたにすればわしも仇か」と自嘲する。「ゆえに、誰が仇かと考えないようにしております」 たったそれだけなのだが震えるようなやりとりだった。仇討ちを繰り返す先に何があるのか、その虚しさを知っているから直虎は近藤と手を携えて井伊谷で生きてきたのだが、それは美談なんかではないのだ平気なんじゃないんだと思わせた。

しかし話が進むと、氏真からこういう言葉が出る。「逆風になれば最後、仲間は裏切り、配下の国衆は寝返る・・・そなたも、よう知っておると思うがな」今度は直虎が言葉を失う番である。私もどきっとした。このドラマでは、力の強い者が弱い者を容赦なく蹂躙し、叩き潰す姿が繰り返し描かれてきた。強い者の傲慢と弱い者の惨めさ。それは簡単にひっくり返るものでもあったのだ。自業自得ではあっても、氏真は多くに裏切られ見捨てられた。直虎(と政次)もまた、今川を裏切って徳川につくことを画策していた。弱い者は弱い者で、生き延びるために騙し、裏切らなければならない。

そういうことを含めて、「この世が嫌いだ」と家康は言うのだろう、きっと。あんなに辛酸をなめて駿河を手に入れた酒宴でも浮かない顔だった。駿河をとったら次は穴山、次は北条・・・「いつまでこんなことが繰り返されるのか」という思いに、万千代が「織田にやり返してやろう」とふっかけてくる。言いがかりをつけ、嫡男の首を要求し、一族郎党の首を三条河原に・・・。やられたことをやり返す虚しさを想像しながら「飲みすぎじゃな」と軽く返す阿部サダヲがすばらしすぎた! 

あ、一片の迷いもなく若をすっ転ばせたのはもちろんだけど、その前によっぱらった万千代を止めようとして振り払われすっ転ぶ演技も見事だったよ~、井之脇くん! 一瞬で真後ろに消えたもんw

家康の迷いを手に取るように理解しながらも、「家康にこそ戦の無い世の扇の要になってほしい」と請う直虎。信じられないという表情で聞きながらも、ついにはすべてを承知で京・堺ゆきを決める家康。

そうして行った先で何が起き、そのあと家康がどうするか、(去年の真田丸でもw)はっきり知っている。でも本能寺も伊賀越えも、ただのカタルシスだけではないはずだ。直虎が語り家康も「そんなことはわかっている」と激昂したとおり、信長が死んでも(信忠も死んでも)あとには綺羅星のような武将たちがいて世は再び乱れる。頭角を現すのは秀吉であり、家康が扇の要になるのはまだまだずっと先なのだ。それに自然は父を失う。

信長と光秀の描き方が面白い。表情に乏しく内面が見えづらい点、二人は相似形である。信長が丁寧な礼を述べても家康が感じるのは不審と恐怖ばかりである。同じく、光秀が言う、「信長の徳川抹殺計画」も本当かどうかはわからない。信長殺しに徳川(や氏真)を巻き込むための光秀の罠かもしれないのだ。来週、信長が本能寺で何事かを吐露するのか? 本能寺は仇討ちか反乱か、どのような意味づけをされるのか? 楽しみだ。

氏真の演技が今週も最高~! 信長の面前でにこやかに礼の口上を述べる場面はさすが歌舞伎役者!という堂々たるもの。信長のほうは、このシーンに限らず、むしろ伝統芸能の香りを消しているように思える。夕暮れ、氏真と家康の場面もすごくよかった。耳打ちのシーン、松也の鋭く変化する表情と息をのむ阿部サダヲ。めっちゃリピートポイントや~!