『おんな城主直虎』 第23話 「盗賊は二度仏を盗む」

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近藤をわかりやすい敵に団結し、すっきりほっこりするようで、どこか今後への不穏の芽も孕んでいるような回でしたね。

・・・・・と、それらしくまとめてみましたが、正直ムハムハです! 高橋一生と柳楽優弥を同時に鑑賞できる悦びよ!! あ、“よろこび”の字が思わず愉悦とか悦楽とかのやつに・・・

ということで、まずは但馬。そこへなおれ。

おま、時代劇における「おかしな咳」は重大な死亡フラグであると知らんわけじゃなかろうな? ハリウッド系や海猿とかの「この戦いから帰ってきたら結婚しよう」と同じ扱いよ?おかしな咳は。それを、近藤どころか視聴者をも出し抜く小芝居として使いやがってぇぇぇ! しかも小芝居が妙にうまい!! 中の人が高橋一生だから当然だけどぉぉぉ!
って感じでやられましたね、はい。

これさ、前回のラスト、直虎と龍雲丸の心が通い合う様子を見て席を立ち、スゴスゴと自宅にとって返したあげく「くだらないぞ、但馬」って自嘲してた但馬くんが、その直後の流れで、小芝居まで見せる機転で龍雲丸たちを逃がしたのだと思うとムハッときますよね。

「殿が大騒ぎするから」という理由は当たらずとも遠からずで、ようは政次は直虎が泣く顔を見たくないと反射的に思ったんだよねきっと。龍雲党と相通じるまでにあんなに頑張ってたおとわを悲しませたくないと。龍雲丸なんて但馬にとっちゃいろんな意味で危険人物なのに、それでもおとわが龍を求めるなら引き渡せないと思ったんだよね。

直虎に「致すな」と言った。「井伊のために奴らを使うのはいいけど奴らのために井伊を使うな」と。直虎のストッパーたる家老としてド正論だけど、もう既に政次自身が井伊のためというより直虎のために奴らを保護するという、裏腹の所業に手を出しているw

政次よう、けっこう危ないんじゃないのかい? 確かに龍雲党が家来になったら井伊の防御力は上がったけど、近藤とのしこりは後々まで残ることになってたよね。

でも、あの直虎と政次の対峙の場面、よかった。直虎がとても静かで、政次をまっすぐに見つめていっさい目をそらさない。「この件については政次に従う」という澄み切った言葉は、「政次を信じている」というのと同義でね。反対に、内心の動揺がいろいろとある但馬は頭も目も動いてね。

あとで龍雲党を待ちながら「われはいつでも平常心」という場面があったけど、その前に華やかな打掛を試着しながらウッキウキしてたとおり、直虎は龍雲丸に対しては全然、平常心じゃいられないんだよね。寺からの帰り道、とつぜん現れた龍雲丸が「お役目は続ける。俺たちを信じてくれた直虎に報いるために」的なことを言うのを見つめる直虎の、瞳を見開いた表情の可憐さ! そのあとの涙目と笑顔のかわいらしかったこと! 反対に政次に対しては、とても平らか。なんだかんだいって、直虎は芯のところでは、政次を信じ、あてにもしてるんだよね。

さて龍雲丸。



「断りまさあ」といい、「空に雲があったからでさあ」といい、柳楽くんの、ここぞっていうセリフ回しや表情が本当に好きです!!!!! 奉公を持ちかけられた時の「また酔ってんじゃないの~?」のマイムもよかったね!!!!(わたしはどこまでも目移りする視聴者よ!!!!)

奉公をやめた理由については、いろいろ想像はできるけれど、今のところ確定はできないような文脈で描いていたと思う。ただ、「党のメンバーが理由ではない」「党のメンバーにも誰にも言わずギリギリで決めて、誰にも言わずあの場に臨んだ」ってことは確定してる。龍雲党が、龍雲丸がリーダーとはいえ強権的な組織ではないことも描かれてる。それなのに一人で決めて、その心はメンバーにもわからない。うーん、いいねえ! 盛り上がるねえ!! その心が覗きたいぞ!!!

あの「龍の雲」を見上げた表情は暗いものではなかったからね。トラウマや怨恨が響いての翻意じゃなかったと思うんだよね。

私が思うには、龍の雲は龍雲丸にとって吉兆というか「自由な龍であれ、思うままに生きよ」と自分を鼓舞する道しるべみたいなものじゃないかと。井伊で伐採の仕事を請けることはチャレンジだったけど、「かこわれる」となるとそうじゃなくなる。ってことかなあ。

「仲間になる」って、井伊の「家中」というお家システムに加わる方法しかないわけじゃないんだよね。ってことかな。そんな龍の判断に対して、政次がプッと吹きだしたのがなにげにとてもよかった。彼には珍しく、曇りもなく、正直な反応だった。井伊だの今川だの幼なじみだのにがんじがらめで生きてる政次。人を食ったようなこと言って自由に生きてける龍雲丸を、つかのま素直に羨ましく、好もしく思ったんじゃないかなあ。

義兄を思うなつさんの瞳、思いが募っている様子がありありと。山口紗弥加さすがにうまいよなあ! この2人、このまま清く美しい義理の兄妹関係でいくのかなあ?と思わせといて、ここまでプラトニック期間が長くなれば積もり積もっていくものも大きいから、いつかどかんとくるぞ、そうとうエモい場面になるんじゃねーの???ってニヤニヤする私がいますw

お寺の場面、古い説話集のエピソードみたいで面白い。あたりまえだけど小林薫うまいし。読経もっと聞きたかった~。そして龍雲党を家臣に加えたい之の字、弓をそろえてやりますかな之の字、おめかし正装之の字、どれをとっても今日もかわええな!!! でも、単純なだけじゃなくて、之の字は強い家臣団への思いがことさら強いんだよね。なんたって井伊の当主は直虎で、戦となったときの怖さを語ってたもんね。