水無月の十 / 幼稚園参観日
●6月某日: 先週のクラス懇談会に続いて今日は参観日。送ってきたその足から参観してよい。
登園すると子どもたちはまず自由遊びの時間なのだが、年長さんには「係の仕事」というのがある。前年度の年長さんから3月に引き継いだもので、4,5人のグループごとに日替わりで、外遊びのための「ままごと(フライパンや器などなどを入れたボックス)」「くるま(手押し車)」を出したり、遊具に鎖(のぼるための)をかけたり、雑巾がけをしたりする。そういったあらましは子どもから聞いたりクラスだよりで読んだりしてたけど、やはり実際に見ると全然違った感慨があるもんである。
まず、係の仕事が始まるまでが、長い(笑)。園バスでなく親が送り迎えするうちの園では、登園時間にばらつきがある。仕事は全員そろってから始めることになっているのだが、グループ1人目から最後(4,5人目)の子が登園するまでには20分くらいの時間差があったり。すると、待っている間に仕事へのモチベーションが下がったり、遊びながら待ってる間に遊びのほうが面白くなったり。原則、先生は子どもたちの自主性を重んじているので、「かかりするよー」「○○グループ、かかりやらんと?」など子どもたち自身が声をかけあうのを待っている。
やっと仕事が始まっても、たとえば倉庫から「ままごと」を運ぶ、というだけでも、子どもたちが協力してやるのは難しかったりするのだ。重かったり、数が多かったり、機嫌を損ねて或いは集中力が途切れて途中でやめちゃったり、ケンカになったり…。この日は、お母さんたちが見ているからか、やり始めたらけっこう真面目にやってる子どもたちだったが(笑)。年少さん、年中さんが気ままに思いきり遊んでいる中、その子たちの遊び道具でもままごとや車を出したり、掃除をしたりしてる年長児はなかなか頼もしくかっこよく見えるのだった。
サクの「すずめのてっぽうグループ(グループ名は子どもたち自身が考えたもの。今回は「草花名シリーズ」)は、今日は教室前の簀の子の雑巾がけだった。友だちと2人並んで、たったった、と長い簀子を一直線に、裸足の足の指を立ててなかなか上手に進んでいく。かわゆい。雑巾が汚れたら洗う。何度か繰り返して、年長、年中、年少とすべてのクラスの簀子を拭きあげ、終わるとグループ全員で集まって、担任の先生に報告に行く。「○○グループ、○○のかかり、おわりました」と声を合わせて言うんだけど、形式的なものに終わらず、先生との語り合いになってる。
さてクラスの部屋に集まってからの参観もいろいろ面白く。「リズム」と呼ばれている、ピアノ伴奏に合わせての広義の体操みたいなものも、年長になってより高度な動きをやるようになってた。
2人組になって1人がうつぶせになり頭の上に伸ばした両腕をもう1人が引っ張って部屋を動く、という「こいのぼり」がバカうけ。これ、引っ張られるほうが「力を抜く」のがポイントで、「力を入れる」のと同様、「力を抜く」ことの大切さを園ではたびたび言われる。電子音や刺激にあふれた生活様式もあり、現代の子どもは特に「過緊張」の傾向が多いらしい。でね、力を抜くと、顔からも魂が抜けるのね、その子どもたちの顔がおっかしくてw
歌は「どろんこと太陽」「きかんしゃ」「たけのこ」歌も年長になると詞や音程が難しくて大人でも何回か聞いただけでは覚えられないくらい。それにしても「どろんこと太陽」っていいタイトルね!
絵本の読み聞かせの様子も、うれしい驚きだった。
息子は年長クラス。先生の読み聞かせは「いやいやえん」だった。最近、一章ずつ読んでもらっているらしい。「昨日の続きからね / 続きはまた明日ね」ってのができるようになってるのだ! 感動。物語の世界が広がるやん!
「いやいやえん」。1962年刊行のあれですよ。ぐりぐらコンビの中川李枝子さん大村百合子さんのコンビ。といっても、ぐりぐらとは違って文章が多くて挿絵は白黒だし少ないんですよね。でも、2016年の子どもたちも大好き。息子5才「いやいやえん、めっちゃおもしろいけん!いえにもほしーい」
白黒の素朴なカットを子どもたちは一生懸命見ながら聞いてる。挿絵がないページになると先生は本を自分のほうに向けて読む。そのときは「語り聞かせ」になるんだけど、子どもたちは変わらず集中して聞いてるんだよね。物語の世界が頭の中でしっかり想像できて展開できてるんだろうなと。
白黒の素朴なカットを子どもたちは一生懸命見ながら聞いてる。挿絵がないページになると先生は本を自分のほうに向けて読む。そのときは「語り聞かせ」になるんだけど、子どもたちは変わらず集中して聞いてるんだよね。物語の世界が頭の中でしっかり想像できて展開できてるんだろうなと。
でもね、割と長く読んでるし、参観日だしで、特に月齢が小さい子なんかはやっぱり、後ろに並んでるお母さんたちのほうを向いて、お話から集中が途切れちゃったりもする。すると先生が…
すると先生が、お話を読み続けながら、そーっと歩いてその子のとこまで行って、ポンポンと優しく頭に触れる。一言も注意の言葉を発したり、読むのを途切れさせたりせず、同じスピード・同じ抑揚で読みながら、そっと。楽しいお話の世界を心を込めて読みながら、子供たちの様子も見てるんだよね。プロだ
子どもたちは、先生が中央前から、その子のところまでそーっと移動するのに合わせて、自然と体の向きを変えながら先生(と本)の姿を追う。何の違和感もなく、注意された子に視点が移ることもなく、お話の世界に入ったまま。物語ってすごい。先生ってすごいね。あの空間そのものに癒された…
夜ごはん、鶏団子と野菜・きのこのスープ、切り干し大根煮、パスタサラダ。