『おやじの背中』 1話、2話

いまごろ録画見始めましたー

ひとつのテーマで、毎週1時間、違う話、違う俳優、違う脚本家が競演。こういう形式のドラマってすごく新鮮。なんたって脚本家たちも俳優陣も豪華! 短編って、長編とはまた違った力量が出るしね。

第1話「圭さんと瞳子さん」

お互いを「圭さん」「瞳子さん」と呼び合い、疑似夫婦のように仲良くふたり暮らしをする親娘。朝ごはんには魚を焼き、まげわっぱに手作り弁当を詰め、近くの清流で汲んだ水でコーヒーを淹れ、夜は時々は待ち合わせて外食・・・美しい生活ではあるけれど、いや、あればあるほど、いびつ。それにはもちろん理由があって、瞳子が子どもの頃に交通事故で母を亡くして・・・というのが終盤で明かされるんだけど、それまでの、「美しさの中に漂う気持ちの悪さ」に、すごい魅力があった。パニック障害の発作はもちろん、松たか子の演技が盤石! 笑顔の下の不安や、笑顔の下の不機嫌など、ひだが細かい。田村正和バカリズムのシーンも、脚本といい、ふたりの演技といい、すごく良かった。何度もボロ泣きしながら見たよ。この二人はとても特別な親子関係という設定なんだけど、なぜか、どこか、普遍性を感じてしまった。これが脚本の巧さなのか。

瞳子さんが恋に落ちて結婚を決めるまでの心境は、尺の関係でまったく描かれないんだけれど、ドラマって、必ずしも結論に説得力がなくても、深くみちたりた気持ちで見終わることができるんだな、とわかった。紆余曲折あっても、子どもは親の手元から卒業していく。だから脚本家は、そこは視聴者の想像と経験にゆだねたんだよね。

第2話「ウェディング・マッチ」

坂元さん、ほんと満島ひかりが好きよね、とドラマ好きの多くが思ったキャスト発表時。でもこれホント大正解だったわ。満島ひかりの演技が素晴らしすぎて、その演技を堪能したくて、二度・三度とリピった。前半、「俺の勇姿を見たら、ありさ、ビショビショになっただろうな〜」と父親のセリフをなぞるあたりから、だんだん激昂していって、ついには自分の拳を傷つけようと重い灰皿を振り上げるも、父に必死に止められてニヤリと笑い、途端に従順な弟子に戻る…ってシーンまで。風の谷のナウシカのセリフの引用は、「いかにも坂元脚本だなー」って感じで見てたけど、それが「ナウシカもブラしてなかったはず、ナウシカも合コンいけてなかったはず!」ってセリフに行きついたときには爆笑してしまった。ほんとすばらしいテクだわ。

後半は、縄跳びから、なりゆきで父を相手にワンツーの稽古をするも、いったん拳を下ろすシーン。そして、長い昔語りから、父に「ふたりでオリンピックを目指そう」と重ねて言われて返す、「やっぱりあなたはビョーキです。私にもうつってます」の、諦めきった笑顔。そこからの、「パンタロン! ドラゴン青木! リングに上がって! 今度こそぶっ殺してやる!!」の声音、セリフ回し、動きのキレの良さ!! 最高!! めっちゃリピった。ひと晩じゅうの撃ち合いは、夜が明けても終わらず、第一話とは対照的に、この親娘は「夢という刑務所」に居続けることを選ぶ。しかも、この親子の場合、母親もまだ生きているのだ。前夜に触れられた「お母さんあちこち調子悪いんだよ」の一言は、ジャブのように効いて、結末の気持ちの悪さに拍車をかける。役所広司も最高に気持ちの悪い演技だった。ダイワマンの100倍気持ち悪かった(褒めてます)。