『ロング・グッドバイ』 第4話「墓穴より」

前回の続きで笠置シヅ子の『ジャングル・ブギー』から始まったのがうれしかった。てか、柄本っちゃんはあれで終わりなの?ほんとに「案外、素朴なじいさん」ってことでいいの? 実は、柄本っちゃん平蔵も亜以子の魔性にやられてて、亜以子をかばうために(そして亜以子が真に愛している保を憎悪して)保を犠牲にしたってことはないの? これで終わりなら柄本明がもったいないんだけど〜。

や、でもやっぱり、これでいいのかな。戦後の混乱期から新しい時代への過渡期を後景に展開していく「ある事件」を描くのがこのドラマの主題で、民衆を扇動する正力松太郎(笑 だよね?)は、この時代背景の象徴だってことで。増沢磐二は時代(の表舞台)に名を残すヒーローじゃなく、時代の裏側に棲息したひとりの私立探偵なんだから、時代のラスボスと対決するのではないってこと。

世志乃の冨永愛キャスティング、大根ぎみ(失礼)の彼女がドラマを台無しにしないことにホントに感銘を受けている(笑)。ハッキリと演技が巧くない人がドラマを壊さないこと、むしろドラマ世界にしっくりきてることって、演技が巧い人がドラマを盛り上げるのと同じくらいすばらしいことだし、とても注意を払って見てしまうものである(笑)。彼女のたどたどしいセリフ回しが、「大きすぎる父親への畏怖心がルーツにあって、富も美貌ももって生まれたのに、どこかおどおどしている」世志乃という女にぴったりなんだよね。今回の「笑わないで。生まれて初めて父に反抗したの」のところで、その「ぴったりさ」がピークに達してた!!

対照的に、この役で半世紀くらい生きてきたやろ?て思えるぐらいに、遠藤憲一はハマってる。かっこいいね。この役。

柄本っちゃんに戻って、平蔵によるテレビ礼賛(つまり言ってることは思いきりのテレビ批判)は、原作にもこーゆーエッセンスがあるんだろうか? それともドラマのオリジナル? オリジナルだとしたら、ずいぶん「作り手の主張」をストレートに入れてきたな、と思った。 

磐二が、余分に買った新聞紙を路上で働いてる男にあげて、もらった男がうれしそうに感謝するシーンが心に残った。本当に、そういうふうに人々が「活字」に飢えてた時代ってあったんだろうなと思う。戦後まもなく出た「戦争を総括した本」(誰が書いた何て本だったか忘れた、痛恨)が10万部売れたって話を聞いたことある。

次回最終回だけど、謎解きにそれほどの衝撃はなさそうな気がする(笑)。でも、楽しみだ。