『デート』 8話

今さらながらふと思ったんだけど、このドラマの、「時間を細かく区切って、行きつ戻りつしながら」展開してゆく作りって、リアタイ視聴対策って部分もあったりするのかな。今回、19年前のバレンタインの回想シーンがところどころで繰り返されるの見て感じたんだけど。

ここ数年、おおむね毎期「朝ドラ」の視聴率が好調な一方で、民放の連続ドラマは(ごく一部の話題作以外)沈んでいるわけで、もはや「夜、テレビの前に座ってドラマを1時間じっと見る」っていうフォーマット自体に問題がある、という指摘はあちこちで見る。だから、米倉涼子の医者ドラマに代表されるみたいに、現代の水戸黄門と化して毎回同じフォーマットで見やすいドラマを作るって手法に行きがちなんだろうけど、「デート」は、そのカウンターなのかも。

つまり、人が(特に、リアルタイム視聴してる人が)集中してドラマを見るのは15分くらいのものって前提で、どの15分を切り取っても、それなりに基本設定がわかるように工夫してるっていうか・・・。19年前のバレンタインのシーンて、10数分おきに3回くらいやったように思うんだよね。

もちろん、最初から最後まで目を皿にして見てる私のような視聴者にとっては、次々と行きつ戻りする時制にワクワクしながら振り回されてるし、回想シーンもだんだん微妙に展開していくから飽きない(どころか「ファッ!」ってな発見がある)し。そもそも古沢さんて、昔からいろんな意味で朝ドラを意識してる脚本家だと思うしね。

で、遊園地デートもクリスマスもカウントダウンもバレンタインも全部ばかばかしいって言う主人公たちを据えて、そういう「月9」的なイベントも、いちいち全部、ちゃーんと盛り込んでもいるわけで。とにかくすごく凝ってて、工夫されてるドラマですよね。

お雑煮回で成仏したかと思いきや、幽霊ママが再登場。チョコレート撹拌しながらの「恋なんて無理よ」はもちろん依子の内なる心から出たセリフ。依子の恋愛コンプレックスはまだ払しょくされてないからなー。回想シーン、チビ巧の寅さんの真似「やだね〜」がうまかったw あの子、『花燃ゆ』では高杉晋作の子役もやってましたね。

破談になったあと幽霊ママが依子父に「ありがとう、私を出してくれて」と言うところで「なんと!(ToT)」と驚きつつ涙腺決壊。見返してみたら、確かにマッチゲさんはところどころで小夜子の言葉に反応してるのだ。

で、小夜子は「出たい出たい出たーい!」と依子にゴネて拒否され、かなえてくれた夫に「ありがとう」「楽しかった」と礼を言ったけれど、マッチゲさんにとっては逆でもあるんだよね。彼も、一生に一度(と思うよな、普通w)の娘の結納、妻と一緒に出たかったんだよね・゚・ (ノД`)・゚・ 

そして、小夜子は、夫のその気持ちをじゅうじゅう分かったうえで、「ありがとう」と言っているように思えた。破談に落ち込む夫を「想定内よ!」と雄々しく励まし、夫は微笑んで「でもちょっとホッとしてる」。ええ夫婦、ええ両親や〜(泣)。今回、親のほうは、「嫁に出すがわ」「嫁をもらうがわ」の重さが全然違うなって感じあったね。ま、谷口家のほうは、夫婦が健在ゆえに軽〜いノリでいられるって面もあるんだろうが。

巧って、昔から寅さんの格好してて、昔からあの性格でモテてたんだね。確かに、ヒネたとこあっても、人の心の機微に敏い、優しい性格だもんね。鷲尾くんと鉢合わせして「お帰り下さい、早く早く」のときから、巧は依子の心の内に少しずつ気づいていたんだよね。鷲尾くん@たこ焼きパーティでの、しつこい「依子さんだって絶対に恋がしたいはずです!」は、完全に自分と他者とを同一視した思い込みでしかないんだけど、巧は依子の様子をよーく見てて、それを確信する。

ご両親がチョコを食べさせ合っていたのは夫婦だからではありません。愛し合ってるからです。

涙があふれる理由は…たぶん、その答えは…。

君が本当にしたいことは…結婚じゃなくて恋だからです。本当は人一倍恋がしてみたいのに、恋がどんなものなのか知りたいのに、できないから心にずっと蓋をしてたんです。

僕と結婚するってことは、もう一生恋をすることはないってことだから…。だから泣いてるんです。

このセリフの説得力! 心の優しく、たくさんの物語に通じてきた巧だからこその読み解きだよなあ。

(・・・物語と巧については「ママじゃな」のほうにも書いてます http://mamajanaiwatashi.hatenablog.com/entry/2015/03/04/181352

鷲尾の告白を断るのに「不等号」を理由にしたのがいかにも依子らしくて、脚本に感心したんだけど、巧が続くセリフで「彼は君に恋してる。彼と等号になるかどうかは君しだいだよ。」と言ってそのことに触れるのもすごく良かったなあ。巧は依子の言うことをちゃんと聞いてるんだよね。依子の背中を押す巧は、巧でしかないのに、マンガの世界の王子さまみたいでもあった。ハセヒロの演技がすばらしい。

そして巧に依子の背中を押させるのは、恋。恋でしかない。「2次元しか愛せない、恋愛不適合者だから」だなんて、嘘。大嘘! その言葉にも、声にも、表情にも、「君が大切だ」という気持ちがあふれてる。巧は依子が好きだから、別れるしかないのだ。

恋愛でなく理念で結婚しようとする2人、というところから始まって、恋心ゆえに別れる、というところまでやってきた。なんて綺麗な構図! で、今さらそれぞれ当て馬とくっついてみるんだね! 今さら! ベタに!! 

先週、今週と笑いが少なめだったから、来週は久々の「デート」場面多めだろうし、弾けてほしいなあ。たこ焼きパーティの場面なんて、水かけあったとこからどんだけ笑わしてくれるのかと思いきや、めっちゃシリアスに流れて裏切られた思いだったw 勝手に期待しすぎてるんだけど、期待させるほうも悪いのよww

まさか当て馬とそのままくっつくこたぁなかろうけども、依子と巧が「恋を始める(恋人としてのデート開始)」ところで終わるのかなーと予想したりするんだけども、これ、巧が依子と向き合うためには、結局「自信」が必要なんだよね。「彼は君に恋してる」って言うが、おめーだってしてるだーがよ!!と私は全力で突っ込んだ。おめーだって依子を好きだから、おめーと依子だって等号になる可能性はあるんだよ!! てか視聴者から見たらすでに等号!!! 

でも、巧は、自分は鷲尾以下だと思ってる。それは、なんのかんの言って、結局働いてないから。「寄生するために」結婚しようとしてたけど、今や、寄生するなんて不純だから、結婚できないと思うとこまで巧は来てる。

であれば、ラストには、巧が「依子と対等」と思えなきゃいけないんだよね。少なくとも、「対等になろう・なりたい」と行動するとこまではいかなきゃいけない。働くか働かないかは本質ではないけれども、自分に自信を持てなければ始まらんわな。古沢良太がどういう方法で「男女の対等」を描くのか、楽しみである!