『ロング・グッドバイ』 第2話「女が階段を上るとき」
すごく遅れつつも録画見てます。
ハードボイルドっていうより猟奇やん!て雰囲気の第2話であったが、これは堀切薗(監督)の趣味なんだろうか? 財前の闇病院、そこで門番をしている息子。女優原田志津香の遺作映画・・・。同じく闇医師の小藪と、頭の弱い男狂いの看護師みたいな安藤玉恵も、まあ気色悪いこと。そして肝心の話はあんまり進んでいない気がするんであるが、全然許せるのは、そう、私が浅野忠信に落ちたから…。
世界や人間たちがどんなに滅茶苦茶でも、磐二はそこに堕ちない。彼はあくまで、「困っている人間を、見返りを求めず、ただ助けるだけ」の奴だと、ドラマ冒頭でしっかり提示されているから。ていうか、磐二イコール、かのフィリップ・マーロウであって、そこから逸脱することはないはずだと確信できるのが、善良で小心な視聴たる私にとって、ことのほかの安心材料になっている。
本来、浅野忠信は、こういった世界観にあって、一、二を争う「胡散臭いやつ」であってもおかしくない色をもった俳優なんだが、今回の彼は徹頭徹尾「まっとう」なんだよね。それが面白く、どこか小気味いい。浅野の独特の滑舌もクセになっていて、彼が口を開くたびにワクワクする。
んで、その磐二がラスト、亜以子に激しく接吻するっていうのがね!!! 惚れた腫れたとか肉欲とかでは絶対にない口づけ、でももしかしたらその要素も、実はちょっとくらい、無意識のうちに入ってないこともないのかも…?なんていう謎めいた行動。あー、大人のドラマだわ。
原作を知らないので、兵役時代の保、という回想シーンにドキンとした。実際、昭和30年代、40年代って、豊かさに向かってひた走るような時代だという印象だけども、町にも会社にも、戦争に行った男たちがたくさんいたんだろうなーと、ふと思う。
「女が階段を上る時」とは、超かっこいいサブタイトルだが、少なくともこの回において、そのシーンが決定的な何かを司っていたわけではない。階段の途中でストッキングをなおす仕草は、亜以子のナーバスさやしたたかさ、また、彼女が、自分の女としての価値を十分に理解していること、とりもなおさず「謎の女」であることを示していた・・・って解釈でいいのかな? ちょっとこのあたり、雑事しながらだったんで何か見逃してしまったかも?
小雪って女優は、存在に適度な重量感があるのがいいんだよね。それはもちろん肉体のおかげでもあるし、あるていど「熟女」な年齢に近づいてきたからでもあるんだろうけど、「ラスト・サムライ」のころから、もう既にこうだった気がする。こういう重めの質感を出せる女優、日本にはあんまりいないんだよな。