『最高の離婚』 第3話

現代の面白い脚本は、ひと昔前なら最終回直前まで絶対とっておくようなカードを、いともあっさり、惜しまずにじゃんじゃん使って、それでもまだまだ手はあるぞ、ていう感じだよね。だから結夏は灯里が元カノだってすぐにピンとくるし、先週の爆弾発言(って死語?)「死ねばいいのに」の理由が、早くも今週、明かされるわけです。

しかもその内容に、もう唸らされた。すっごいところを突いてくる。あそこまでのデリカシーのなさとか間の悪さ(よりによって何でそのときジョーズなんだ!)はいかにも光生っぽいし、そういうのを一言で相性が悪いって片付けることもできるのかもしんないけど、あれって、灯里にとっては、著しくひどいパターンではあるものの、大人になるための通過儀礼…と思えんこともない。

ああいうセンシティブな問題って、多かれ少なかれ誰でも抱えてて、若いときはそういう部分こそを好きな異性に理解してほしいと思うものだけど、なかなか難しいよね。あそこで「そうだったんだ、わかるよ、応援するよ」なんて言ってもらえれば理解されたのかっていうと絶対そうじゃないし、個人的にセンシティブな問題を共有できる相手っていうのは、往々にして共依存に陥ったりもするし。30歳になってる当人自体(そしてもうひとりの女、結夏)、それを「他人だからしょうがない」と納得はしている。

あとから自分で言ってたとおり、灯里は今でも光生を心底怨んでるわけじゃないんだよね。もちろん、過去に異性とインパクトあるディスコミュニケーションの体験をした彼女が、必要以上に「相手に理解されたがらない女」になったという哀しさも視聴者には伝わってくるんだけど、彼女にとって大事なのは「今」、そして諒の葬儀の喪主になる将来。心底怨んでもないのにああやって滔々と語っちゃうところが女の意地悪さというか…まあ、意趣返ししたくなる気持ちもわからんでもないが。

そりゃ言われたほうは撃沈するよね。誰でも、なにげない一言や態度で人を傷つけることってあるけど、それをあそこまで詳細に思い知らされることってなかなかない。圧倒的に自分が悪くて、大好きだった人を完膚無きまでに傷つけていて、それに気づきもせずに良い思い出だなんて思ってて、彼女が今「夫に対しても変に心を閉ざしてる」のは自分のせいでもあるかもしれなくて、今でも気になってしょうがなくて、彼女の夫がやってることはどう考えてもおかしくて、その周りにいる愛人?も頭おかしいことが判明したし…。ていう。

しかも、離婚届を出したときに、妻からは「あなたには一生わからない」って言葉を投げつけられてるし、祖母や姉の態度を見ても「この子はダメな子、めんどくさい子、危ない子」って思われて育ってるし…ってことで、自分を全否定する方向に行っちゃうのがすごい説得力でね〜。そりゃ大縄跳びのたとえも持ち出しちゃうよね〜。

で、この展開で俄然気になってきたのが、「じゃあ、灯里も結夏も、なんで光生のこと好きになったの? どこが好きだったわけ?」てことなのが、面白い。坂元センセイはそこもちゃんと書いてくれるはずだ!期待してる! 

灯里の打ち明け話に「サイテーですね」と相槌を打つ結夏。カラマーゾフの兄弟(だったっけ)の上中下巻のエピソードをもちだすまでもなく(笑)、「いかにも光生が言いそうなことだな〜」と納得はしてそうなんだけど、納得してるがゆえに今さら(?)、あれを聞いてさらに光生を軽蔑した、って感じではなかった。

結夏は結夏で、映画にちょっとでも遅れたら怒る男はいくらでもいる、ってことを知ったし、そこであっさり帰ってしまったEXILEの人と、まがりなりにも結婚した光生との違いを、ちらっと考えたりもしたんでしょうか。ていうかそこで出てきた窪田くんー! 来週からの絡みが楽しみよ! 掃除屋さんのカッコも似合うこと!

そして諒だよね! 婚姻届を出していないのも無意識ですか?! けど浮気してるっていう罪悪感は、いちお、意識下にはあるんですか?! 豪雪の夜を進むカシオペア号の悪夢…人を攻撃しないけれど無目的でキリのないテトリス…「ザ・独白〜諒の導入編」もなかなかのインパクトでしたわ。あの焦燥感、不安感も根が深そうね。手品やダーツに興じたりハンバーグカレーに喜ぶ無邪気な姿と、ベッドインしてるときのアンニュイさのギャップがすごい(だが、そこがいい…ハァハァ)。

いろいろとイタイタしいドラマなんだけど、イヤな重さがなく、むしろ笑ったり萌えたりしながら見られるのがすばらしい! 独白で終わるラストからのエンディングテーマっていうシークエンスも最高! あの大仰なコミカルさが、「ぜんぶ茶番ですから、全部。」ていう作り手の茶目っ気、羞恥心を感じさせてたまんない。4人でエグザイル風のこう、千手観音的なやつをやらせるアイディア、すごいよな!