『最高の離婚』 第10話
はっはー。やっぱり、そう簡単にハッピーエンドとはいきそうにないなあ。
自分のしてきたこと棚に上げて光生に殺意抱くわ、酔っぱらって高所から落ちるわ、そしてあの、慟哭しながらの灯里への懇願…「めんどくさくない」からこそモテてきた諒さんが、ここへきて盛大にめんどくさい男になったという\(^o^)/ いや〜あの長セリフ、私ですらちょっと「めんどくさっ」と思ったわ。あんなんで落ちるわけないと思ったら灯里がバッチリ「めんどくさ」がってくれたw
しかもその後の展開が神…! もはや、灯里が艶然と微笑んで穏やかに喋ってるだけで不穏な空気がむんむん。現実的選択として結婚を決めて「うまくやれますよ」って宣言すること、しかも「今は諒さんより光生くんのほうが好き」という一言まで添えて、あらいざらい光生にぶちまける…って、灯里の真骨頂だ。
「結婚とは嘘のない生活」だってわかっていながら、また嘘の生活に突入しようとしてるってのはなんとも切ない話で、灯里って無意識のうちにそういう「イタさ」を選んじゃうとこがある感じだよなあ。まあ、子どもを思えば父親を必要とするのもわかるし、かといって心情的に醒めているのも当然だよね。浮気って信頼を損ねる行為だし、失った信頼は一朝一夕には取り戻せない。誰だって、「また傷つくかもしれない」と思ったら防御壁を築く。
逆にいえば、時間をかけて誠心誠意を尽くしていくことで、家族の情および夫婦としての絆が芽生えていく可能性はある。けれど、諒がそこまでがんばれるのか甚だ不安だ。「最低なのは仮面夫婦」っていう、若干唐突にも思えた先週の諒のセリフがここに繋がってくるとは驚いた。諒は「愛されていない」感覚にきっとものすごく敏感で、それに堪えられない気がする…。シオミカオリさんに「あなたじゃダメなの。違うの」って言われたことが彼のトラウマの根幹だもん。数多の女の中で灯里だけに固執しているのも、きっと、「愛されてこなかった母」の存在がアイデンティティの根底にある灯里へのシンパシーもあろうが、自分を誰より強く愛してくれていたと本能的に感じていたからじゃなかろーか。
というわけで、灯里と諒は、どうしても、もういっぺんダメになりそうな気がするんだけど、救いは、諒が子どもを心から愛するだろうってことかなあ。光生から子どものこと聞かされたときの「ありがとう」にはホッとしたー!
それに、灯里のほうも、口ではあれこれ言いつつ、「また諒を愛せたらどんなにいいだろう」という思いも、きっと心のどこかにはあるよね…。あと、灯里の母親が電話でなんて言ったのかは来週明かされるのかな?
いっぽう、灯里は「光生と一緒にいると嘘がなくてホッとする」と言ったけど、結夏にとっては全然そうじゃないんだなーと思い知らされた今回でもある。
かつて光生が冗談みたいに口にしてた人妻AVの話が嘘みたいに飛び込んできた。ユーモラスなんだけどなんだか笑えないのは、ハロワでやたら自分の経験を卑下したあげく、職員さんの軽い「受付は立派な仕事ですよ」一言に耳を疑ったり、友人の子どもにちょっとした怪我をさせた自分を必要以上に責めたりする姿が並行して描かれたから。
自分のことばっかり大事で神経質で妻のズボラを許さなかった夫に、腹を立てたり糾弾したりしていたけれど、同時に、「ちゃんとできない自分はダメなんだ」っていう意識も植えつけられていたんだな、と。いわゆるモラハラ、モラルハラスメント。相手が自分の非をあげつらって貶めることで、自尊心を傷つけられてたってこと。結夏には以前、八千草さんに向かって「私がダメだったから」と泣くシーンもあったよね。
光生ばかりが悪いとも思わないけど、ふたりで生活している間に、結夏がそうやって疲弊していった部分は大きかったんだなーと今回あらためて思わされた。こういう傷って、そう簡単に回復しないんだよね。
終わり近くの電話で「女優になる」とは言ったけど、結夏は、ほんとのほんとにその気があったわけじゃないと思うんだよね。ただ、誰よりも光生に自分という存在を承認してほしくて言ってみた。そこで案の定、頭ごなしに100%否定する光生。まあ、家族の立場としては、そんな足元のおぼつかない話を無責任にすすめられないのももっともなんだけど、あれで結夏が「やっぱりこの人とは暮らせない」と思ったのももっとも。
光生はといえば、ひとりでいることの本質的なさみしさにやられていて、壁紙がどーとか吉川の髪色がどーとか(笑)どーでもいいことを喋れる相手がほしいと渇望したり、結夏が望んでいたことを思い出したりしてるんだけど、それだけじゃ結夏は絶対戻ってこないよ、と思いましたね。予告でいなくなった猫ちゃんを一緒に探してるシーンがあったけど、むしろそれで、「あれがきっかけで元サヤに…て簡単な話じゃないな」とも思った。
さみしさの谷間に落ち込んでる光生が、まさかのでんぱ組にダダハマり…てのも秀逸な描写だったけど、あれで「アイドルオタクなんて寂しい人生。リア充=元サヤの再婚のほうが高等に決まってる」なんて価値観を最終回にぶつけられたら、それはそれで引くし。アイドルに失礼だし。
うーん、どう考えても、あっさりハッピーエンドは無理ね。でも、ドラマの作風を見てると、まったく希望のないラストでもないはず。
「人はそんなに簡単に変わらない」って灯里の言葉はその通りなんだけど、裏を返せば「人の良さもそんなに簡単に変わらない」ってことは感じさせてくれるんじゃないかな、とは思ってる。