11/20 「アスリートの魂」 羽生結弦

羽生くんが阿部奈々美コーチと師弟関係を解消してオーサーに師事する、って聞いたときは、なんとなーくショックな気もしてたんだけど、厳しい世界だもんね。躊躇なく世界に飛び出していった17才。すごいよな。

あと、インタビュー見てたら、オーサーっていい先生だなって感じがした。や、数多くのトップスケーターを教える先生がしょうもない人のはずはないけども。言葉の端々から、「多くの人生経験が良いスケートを形づくってゆく」という信念が感じられて、それってつまりは、「深みのある人間性を培ったスケーターこそがトップたるべき」って言ってるのと似てるから、信頼できるなあと思う。

ただし羽生くん本人は、リンクと家とを往復する毎日で、町に出て行こうとかナイアガラの滝を見に行こうとか全然思えないらしい。日々の練習ですべてを出し切って、家に帰ると「無理ー」ってなるんですって(この「無理ー」が超かわゆかった)。でも、そりゃそうだよな。4年に一度のオリンピックに、今、彼はまっすぐ、最短距離で向かいたいんだ。今ここで「町に出るのも人生経験だよ」なんて言われても、そら無理ってものだろう。オーサー先生、そこでしゃかりきになってあれこれ言わず、「だいじょうぶですよ。彼には世界屈指の才能があるんだから」と鷹揚に見守ってる感じもよかった。

だいたい、人生経験というと、すぐ「(学業など)ほかの何かとの両立」とか「恋をすること」とかいったりするけど、何かひとつのことにあんなに打ち込んでいたら、それだけで人生経験は深まるわな。地道な練習の日々も、衆目にさらされながら試合で思うような演技ができたり、できなかったりすることも、苦楽をともにしたコーチと離れ海外で練習することも、全部が本気なわけだから。