ユリイカ2012年5月号「テレビドラマの脚本家たち」

ユリイカ2012年5月号 特集=テレビドラマの脚本家たち

ユリイカ2012年5月号 特集=テレビドラマの脚本家たち

私なんぞがオススメするまでもなく、ドラマっ子の間ではすでに必携の書とされている「ユリイカ」2012年5月号、「テレビドラマの脚本家たち」特集。

本1冊に1,300円のお金を出すってワタシ的にはレアなんですけど(だから、酒代のことは言わないでってば…)、ネットで見た目次があまりに豪華だったんで検討の結果ポチりました。

ユリイカって実は初めて買った。宝島みたいなムック本かと思ってたら、ずいぶん硬派なんですね!(って宝島を貶めているわけではない。あっちはサブカル、こっちは純文って感じか? ジャンルが違うって話)

実際、手にすると期待以上。こりゃ1,000円以上するわ、てな充実の内容。読んでも読んでもまだコンテンツが続きます。脚本家へのインタビューだけでも、岡田惠和坂元裕二宮藤官九郎西田征史だよ!? 見開き2ページとかじゃないよ、上中下、びっしり三段組みの活字がひとり10ページだよ?! 読み応えありまくり!

あ、今ね、実際の掲載ページ順に名前を並べたんだけど、これって明らかに、脚本家としてのキャリアの長い順だよね? そういう考慮で誌面を組んでるよね? 硬派だわー。大森美香山口雅俊プロデューサーの対談もありました。大森さん、近作があ・の・「ハングリー!」なもんで微妙な気持ちで読んでしまったわ、ハハハ。

有識者たちの評論も多数で、テーマは向田邦子山田太一野島伸司といった大御所から、遊川和彦(近作「ミタ」)、木皿泉(近作「Q10」)、古沢良太(近作「リーガル・ハイ」)、そして渡辺あや(近作「カーネーション」)といった現在のテレビドラマを語る上で欠かせない脚本家たちまで多彩。

カーネーション』については、“ながら見”という前提を覆した画期的な朝ドラ、という評価もすでに定着しているが、ボイス・オーバー(登場人物=この場合、小原糸子自身によるナレーション的モノローグ)とセリフとを、脚本家がいかに緊密に連携させて視聴者の「耳」を籠絡したか、について、実際の放送(勝が出征し、その後、彼が浮気していたことが発覚する週)を整理し詳しい例を挙げながら論じてあって、面白かった。有識者たちの鼎談で出た、「渡辺あやと『カーネーション』の存在は、物語的、主題的にもそうだが、何より手法的なレベルで“今のテレビならここまで許される”ということをいい意味で証明している」という発言にも深くうなずいた。ユリイカ様、このレベルで、まるまる1冊「カーネーション」特集号を作ってくれまいか。今さらすぎますか。