『竹光侍』1巻 松本大洋

竹光侍 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

竹光侍 1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

恍惚。長編の初巻として完ぺきだ! 

ストーリーはほとんど「プロローグ」に留まっているといえ、登場人物も、舞台も、非常に限られた範囲での1巻。なのに、何か大きなものと繋がっているような予感はすでに確信めいて、とてつもなく期待させられる。

淡々と乾いた筆致の中に、宿命、かなしみ、滑稽さ、エロスと血、すべてが内包されている。

とにかく絵がうまい。宗一郎も勘助もかわいい。太い線、細い線、大胆なポージング、キレがいいコマ割りとセリフ、個性的な擬音、突如挿入される幻。すべてがセンスの塊! 映画を見ているようでも、浮世絵や滑稽本を見ているようでもある。

これ以上でも以下でもありえない、これしかありえない、というぐらいピタッとはまった表現の数々。マンガにも行間はあり、想像力はものすごく刺激されるものだ、と思い知らされる。

松本大洋のマンガを読むのはこれが初めて。なんてうれしい出会い!