『哄う合戦屋』 北沢秋

哄う合戦屋 (双葉文庫)

哄う合戦屋 (双葉文庫)

編集者や出版社が意識してるふうで、読者も自然、読み比べる態になった感がある。わたくしも、「のぼうの城」を読んだら、こっちも読んどかなきゃいけないんじゃないか、という強迫観念に駆られて(?笑)読んでみました。

なるほど、表紙のイメージといい、戦国時代を舞台に、小大名、小豪族が大いなる敵を前に好戦する…という大筋といい、似ている。時代考証についての意欲も両方に感じる。でも、作風はだいぶ違って、より少年マンガ的、絵が浮かんでくるような大胆な表現をする「のぼう」に比べて、こちらの「合戦屋」は、お話にしろ人物にしろ、雄弁な文章で細密な組み立てをして描いていく感じ。

私は、「のぼう」に軍配を上げたい。いくぶんおバカでからりとした雰囲気も好きだし、読んでいる間に心が躍ったほうう、この人の別の作品も読んでみようかなと思ったのはのぼうのほうだった。合戦屋のほうは、肝心の合戦屋にあまり魅力を感じられなかった。彼が影のある人物である分、若菜姫に「陽」を配したんだろうけど、これがまたちょっと出来杉ちゃんの雰囲気でキュートに思えなくて。

ま、好みの問題だとは思う。

それ以前に、どっちにしても、小粒な印象は否めない。司馬遼太郎とか藤沢周平とか池波正太郎とか、100年は残るだろうという大家と比べてしまう時点で間違っているのだろうが、もっとも心が柔軟だった青春時代に夢中で読んだのが彼らの小説だから、これはもうどうしようもないのだ。

んでも、武田信玄とか風林火山とかに親しんだ身としては、小豪族が跋扈する信濃の情勢がわりと詳細に出てくるところなんか、特に面白く読みました。佐久とか小県とかの地名だけで燃えちゃうんだもんよ〜

のぼうの城

のぼうの城