『あの世で罰を受けるほど』 キリンジ(堀込泰行・堀込高樹)

あの世で罰を受けるほど

あの世で罰を受けるほど

『TVBross.』にて、兄弟で交代で執筆していた連載をまとめたもの。

彼らの音楽を聴いてたら、オモロい人たちであろうことは容易に想像がつくというもので、否が応にもハードル上げて読み始めたこの本だったんですが、まあ予想の斜め上をあっさりいってくれまして。

「電車に乗っていたら・・・」「妻と行った喫茶店で・・・」「花見をしようと友人たちと集まったら・・・」など、ありふれた日常の1シーンに、こんなことが起こりうるのか!! という驚愕のネタを次々と繰り出す兄。頭上にどんなアンテナ立てて生活してんだろう。

けして“感動”とか“考えさせられる”みたいなメッセージ性を放り込んではこないが、笑えるだけじゃなく、どこか心に爪あとを残すようなネタがときどき現れるのが、なんだか「らしいな」と思ってしまう。予想通り、小憎らしいほど文章も巧い。

弟のほうは「のどかな身辺雑記」といった感。執筆にあたっては「ドジっ子なオレ」的スタンスに徹しているところも含めて、兄の放つ異彩に比べると物足りないという諸兄もおられるかもしれないが、私はこれ読んで弟のことがもっともっと好きになったね。愛すべき人。GWにお金を下ろし忘れた話とか、停電の日の話とか、声を出して笑いましたよ。それに、
「(自分で決めた生活の規律を)少し守っては充実した気分になり、またあるときにはそれを破っていい気分になったりしている」

とか、わかるわかるそれ〜!っていう感覚をサラリと書いたりして、やっぱり感覚も表現力もただごとじゃなくてね・・・と思わされる。

時にこの連載、4年半も続いたそうです。地味に人気やったんやろうな〜。「しばらく読んでから自己紹介されます。ご注意ください」という藤井隆の推薦文もナイス。