日々、燃え尽きるまで

最近、サク(満9ヶ月男児)の就寝時間が繰り延べ傾向にある。困ったもんである。親のほうはこれまでどおり、というよりむしろ変わり映えしない日々を送っており、毎日同じような時間に風呂に入れ、毎日同じような時間に寝かしつけている。サクの様子が変わったのである。

和室に大人ふたり分の布団を敷き、電気を消して真ん中に子どもを転がし、私が添い寝・添い乳の大サービスで寝かしつけを開始する。出てきたおっぱいにはとりあえず一度吸いついてみるのが彼の流儀らしく「ちゅっちゅっ」とやるものの、すぐさまゴロンと寝返りを打ってうつぶせになり、そのまま方向転換して部屋の出口へ一直線。

季節柄、まだ分厚い毛布も掛け布団もなんのその、「おぅっ! おぅっ!」と気合十分の声を発しながら、力強いズリバイでふとんの海を越えていく子ども。

おっぱいをペロンと出したままの私は、しばしそれを呆然と見守ったあと、「ちょっと! そっち行かない! もう寝るんだよ!」とか言って、あるときは抱き上げ、あるときは両足をはっしと掴んで確保するのだが、所定の位置に連れ戻される彼の顔を見てみると、喜色満面である。何度か繰り返すうちに、「ッキャー☆」て感じではしゃぎ声まで出るようになる。

完全に、“おっぱい → ぼく脱走 → ママが迎えにくる → 以下エンドレス” という遊びだと思い込んでる!!! 

サーキットトレーニングばりにハードなその遊び(違)を母子二人でギャーこらギャーこら続けていると、隣室でテレビを見ていた夫が「だいじょうぶ?」とか言いながら登場するのだが、サクは「うっひょーい、パパだーパパも来たーーみんなで遊ぶーーー!」とばかりにヒートアップ。

両側からガードしておっぱいを飲ませてみても、このちびっこ脱走兵ときたら、そりゃもう激しく全身をひねりまくり、大声を上げて解放を訴える。本人も、時間的に眠気ゼロというわけではないから、だんだん機嫌が悪くなってくるのだが、はしゃぎ声が泣き叫びに変わっても、まだまだ動き回る! そんなにも、そんなにも寝るのがイヤなのか〜〜〜!

結局、彼のHPがゼロになるまで辛抱強く付きあうしかない。夫は、3回に1回の割合で敗北し、先に落ちる。なんせ、寝かしつけ開始からサク撃沈まで、ゆうに1時間は要するのが昨今のトレンドなのである。さすがに母たる私はあきらめることなく最後まで戦い、必ずや!勝利するのであるが、
「きょうも よく あそんだ・・・ まんぞく・・・」
とでもいうような愛らしい表情で力尽きている我が子の寝顔に微笑みつつも、「寝かしつけって、こういうものだっけ?」という疑念は日に日に強くなるいっぽうである。

同じ時間に寝かしつけようとしてこれなんだから、サクの体力が増したのは間違いない(親の体力はそうそう伸びるもんじゃないってのに、よよよ)。もっと昼間に暴れさせたり(これ以上?泣)、心を鬼にして夕方の昼寝からたたき起こしたり(だって夕食の準備にちょうどいいんだもん泣泣)しなくちゃいけんのでしょうなあ。

それにしても、半分、閉じた目で、まだ脱走にいそしむ姿といったら、困ったもんだが笑ってしまう。そんなに眠いんなら早よ寝ろや〜。
「今日の体力は、今日じゅうに、最後の一滴まできっちり使い果たしてしまわなきゃ!」
という強迫観念にでも駆られているかのような必死の動き。これが赤ちゃんの本能なのか、と驚きながらも、そういえば、私もかつては「明日、朝から仕事ハードだけど・・・もう一杯、もう一杯、まだいける」と、しつこい夜を過ごしていたものだな、などと思い出したりして。