『てっぱん』終わりました

出産前に仕事を辞めるまで、長いこと朝ドラを見ていなかったから、いくら『ゲゲゲ』が面白かったとはいえ、ミーハーな私は向井理さんくらいの大きなエサを釣りさげてもらわないと視聴は習慣づきませんよ、なんて思っていたのだが、あっさりと『てっぱん』も完走。しかも流した涙の総量は『ゲゲゲ』を上回ったのではないかと思われる。

ほんとは、別に朝から泣きたくなんてない。だいたい、明るく元気な主人公、親子も兄妹も結束しまくった家族、頑固ばあさんと孫娘のぶつかり合い、怪我によるスポーツの挫折を味わった男の子と反発しあいながらも惹かれあっていく・・・・だなんて、ザッと輪郭を書き出していくと、「そんなうっとうしいドラマ、毎朝、よう見んわ」って感じじゃないですか。

しっかし、泣きに泣いたときたもんだ。出生の秘密(?)を知ったあとのあかりと母・真知子がお寺で話すシーン、初音が車とぶつかって病院に運ばれたのを知って駆けつけるシーン、尾道に連れ戻されるあかりを追いかける初音のシーン、お好み焼き屋を開くにあたって初音が200万円を差し出すシーン、遺言状を開封する前後、あかりの19歳の誕生日の「あんた、よう生まれてきてくれたな」のシーン、実の父と育ての両親、祖母とそろいぶみでのシーン・・・こうして思い返すだけでも名場面が次々と。

「家族の絆」「人々の、血のつながりを越えた絆」について描こうとするドラマは昔から枚挙に暇がないけれど、絆ドラマとしての『てっぱん』は間違いなくここ数年で出色の出来だったといえるでしょう。

あれだね、主人公を持ち上げすぎないのがよかったよね。確かにみんなの中心で、祖母の心をひらいたり下宿人同士を結びつけたりするきっかけになったのはあかりちゃんだけど、何もかもがあかりちゃんの手柄って感じじゃなかったもんね。気持ちいいほどしっかりした初音さん、村上家の両親や兄たち、坊さんの隆円さんなど、みんなあってのあかりちゃんであり、みんなが物語を回していった。ここんとこ、特にここ数年の大河の脚本家は見習ってほしかったもんですよ。

脚本、演出、美術音楽、キャスティング、役者の演技、すべてが充実していたんだと思う。とりわけ、富司純子なくしてこのドラマの成功はなかっただろうが、どこからどう見ても初音さんにしか見えない大女優の(本人が公言する)“命をかけた”演技を、指先、つま先、髪の毛ひと筋に至るまで効果的に撮り続けた監督もたいしたもの。井上剛という名前、しっかり覚えておきます。視聴率のほうも、最初こそ「『ゲゲゲ』の恩恵」と揶揄されたこともあっただろうが、最後まで自力で持続しましたね。

まだ書き足りないんで明日以降に続くです・・・。