『江』第3話「信長の秘密」

はい、みなさん、わかってますね。「織田信長が江とあんなに仲いいなんて、ナイナイナイ」とか言う突っ込みはナンセンスってこと。『秀吉』においてはおね(沢口靖子)を、『利家とまつ』においてはまつ(松嶋菜々子)を、『功名が辻』においては千代(仲間由紀恵を、それぞれやたらと気に入って絡むってのが、大河ドラマにおける織田信長という人物なんですからね。この『江』において上野樹里ちゃんをひいきの引き倒しにするのなんて朝飯前って話です。

んで、「わかんないわかんないって、うぜーな」と見てた視聴者もいそうだが、私はけっこう面白いと思った。「私は知りたい。もっともっと広い世界を!」と言って薩摩から飛び出して大奥に入り、女の一本道をひた走った篤姫に対し、同じように知りたがり屋だし、同じように大物に突撃取材を試みるも、さっぱりわかんないまんまの江っていう設定の今回。わかんないまま、これから、母と死別し姉妹と離れて3度も結婚し・・・と波瀾万丈の人生を生きていくんだね。「それでもとにかく生きるしかない」っていうのがメッセージなのだとしたら、それは『考えない練習』なんて本も話題になっている今、受け容れられやすいような気がする。少なくとも私は共感する。

まあ、再来週はさっそく本能寺の変、その後も、母の再婚、義父と秀吉の対戦そして敗戦・・・など、3月のお市の方との別れまででも歴史イベントは目白押し、その後しばらくしたらいよいよムカイリさん本格登場で篤姫と家定もかくやの大ロマンス展開なんでしょうから、どういう描き方なのか見ものです。

それにしても、キャスト予想段階から切望してただけあって(笑)、トヨエツの信長はやっぱりなかなかいいなーと思う。あと2回しか見られないってのがもったいない、もっと見たいと思わせるもんがあるんだけど、“たった5話しか出演せず、その人生の輪郭しか描かない信長”としてすごく似合ってる気がする。

優しくて残酷。せっかちで激情家で、時に寛容。そういう、説明不可能な信長を演じて違和感がない。なんか、底知れないというか、「今はこんな顔しているけど、違うとこでは何やってるかわかんない」と想像させる何かがある俳優だと思う、豊川悦司って。もう芸歴も長いので、いろーんな役をやってるし、時に冒険しすぎて失敗してんじゃないかっていう仕事選びも散見される気がするのだが、そもそもは、謎めいた雰囲気が魅力の源泉なんだと思う。

で、今日、ふと思い出したんだけど、私がトヨエツを初めて見たのは1994年の月9『この世の果て』。これって、鈴木保奈美が主人公だったんだよね〜。全盲の妹の手術費用を稼ぐためにホステスとして働きつつ、三上博史演じるピアニストにDVされたりなんたりする暗黒展開のドラマだった。トヨエツは大金持ちの御曹司で、お市さんどころじゃなくツンキャラの鈴木保奈美を気に入って、彼女の勤めるクラブに通いつめるんだけど、これがまた、酷薄かつ優しい男で、すごく魅力的だったんだよな〜。たぶん、一般的にもトヨエツの出世作ってことになるんだよね? これがきっかけで広く世間に認知されて、あの『愛していると言ってくれ』に繋がったんだよね? てなわけで、17年の時を経て、この世の果てでは結ばれなかったふたりが、戦国時代に愛憎半ばし合う兄妹として転生したってことでいいんでしょうか?笑