『大奥〜華の乱』

2005年フジ木曜10時枠で放送されたドラマ。かねてより見たいと思っていたところ、福岡で昼間の再放送が始まっていることに気づいた。第5話の途中から最終話まで視聴。

2000年代「大奥シリーズ」の3作めということで、既にあるていど絞られた視聴者層を念頭に書かれたメロドラマである。脚本は浅野妙子。綱吉の治世を彩った人物たちがさまざま登場するのだが、このキャスティングにひとりの違和感もないところにもスタッフの手練を感じる。

主人公・安子に内山理名を据え、藤原紀香が高慢な正室・鷹司信子、なりふりかまわぬといったていの小池栄子(お伝の方)に天衣無縫な貴族の娘・中山忍(大典侍)という側室たち、冷静沈着で聡明な大奥総取締・右衛門佐が高岡早紀で、数奇な運命に弄ばれる染子には貫地谷しほり。そしてこの時代の大奥の女帝・桂昌院江波杏子

男性陣は、優しいが脆弱な将軍・綱吉に谷原章介、野心にあふれる柳沢吉保北村一輝、権力者に妻をとられる牧野成住に田辺誠一

タイトルの割に、2005年という放送当時を考えると、いかにも「主役級です!」というふうに華のある役者はいないんだけど、特に男性陣はその後の5年で全員が主役も経験し、かなり躍進した実力派ぞろいだよね。女性陣も、そんなにギャラの高そうな人はいないんだけど(笑)、ひとくせもふたくせもある女たちを、水を得た魚のようにいきいきと演じていた。

特に、キャストクレジットで堂々の大トメを飾っていた藤原紀香の、表では艶然とした笑みを浮かべながら、裏ではその美貌を醜く歪めたり高笑いしたりという二面性のある京女っぷりがものすごく自然に感じられたのは出色。この路線を極めたらいいのに、とまじめに思います。

また、当時若干20歳の貫地谷しほりが見せる落ち着いた演技もよく、最期のシーンなんかとても美しくて見ごたえあり。私の中でいちばん好きな貫地谷さんはやっぱり2007年『風林火山』のミツなのだが(『ちりとてちん』は未見)、『スウィング・ガールズ』の翌年に染子というえらく悲劇的な役を演じきっていることからも、この人のキャパシティの広さは既に十分に感じられるってとこだ。ちなみに、『龍馬伝』での佐那役はこの才能ある女優さんの無駄遣いだったと、やや憤慨している。今後出てくる蒼井優にもおんなじ轍を踏ませたら嫌よ。

このドラマで割を食ってるのは内山理名なんだよね。まわりの人物がそろってクセ者であるがゆえに、良心的でまじめなキャラクターを背負わされてしまった。この人も年の割に時代劇のせりふまわしがとても落ち着いているし、途中、子どもを失って気鬱になったり半狂乱で小池栄子と取っ組み合ったりとがんばってたんだけど、どうしても面白みに欠けるきらいがあって、その印象がそのまま女優としての印象ともつながっている気が・・・・。ラストの尼僧姿なんて、なんだかかわいそうだった。将来のある女優さんに、そんなことさせんでもええやん、と思っちゃった。

時代考証、風俗考証は基本的にめちゃくちゃなんだけど、これは大奥を舞台にした男と女のどろどろ愛憎エンターテイメントであると最初からはっきり打ち出しているので全然罪がない。『天地人』を見ているときの1%もストレスを感じなかった。ここで書くのもなんだけど、ほんっと、『天地人』ってなんだったんだろ。あれで「高視聴率」とうたわれる域に達していたってことがまた、情けない。関が原(三成編)だけは素晴らしかったけどね。