『きれいな水のつめたい流れ つれづれノート17』 銀色夏生

銀色夏生さんの日記シリーズ第17弾。書き続ける銀色さんもすごいが、こんなに出版し続けられるってこともすごい。

銀色さんは本当に変わった人で、かつ、今でも変わり続けている。シリーズ1冊目と今では、同じ人らしい部分もあるけど、別人のように感じる部分もある。20年以上も文筆で食べていってるような人だから、私のような一般人とはとても相容れない感覚も多く、しかも読んでていらいらするような部分も結構ある。それでも買ってしまう、読んでしまうんだよー。きっとこういう読者がものすごくいっぱいいるんだろうな。

この巻の帯には『今回は愛と孤独について語っています』とあるけど、私は銀色流の愛と孤独の考え方にはあまり興味もなく賛同できそうにもないのでそういう部分はザザーと斜め読みした。それでも買ってしまうんだからもうこれは中毒ね。

いちばん面白かったのは、とあるパーティーで斉藤由貴と20年ぶりくらいに再会したときのことが書いてある部分。銀色さんはデビュー間もないころの斉藤由貴にいくつかの歌詞を提供しており、そのころは親しかったらしいのだ。パーティーでいきなり銀色さんに声をかけられた斉藤由貴は驚き、久方ぶりの会話を交わし、そして別れ際に、一緒にパーティーに出ていた銀色さんの娘(高校生)に
「ひとつ、質問してもいいですか」
と言う。はい、と娘さんであるカーカちゃんが答えると、
「銀色さんは、私が知ってる中でいちばん変わった人なんですけど、そんな人がお母さんってどんな感じですか」
と尋ねるのだ。なんという質問だ。
20年ぶりに会った人のことを、しかも初対面の娘さんに、こんなふうに聞く斉藤由貴斉藤由貴なら、こんなことを聞かれる銀色さんも銀色さんだ。
そして、
「あ、面白いです」
と普通に答えた娘、カーカの大物っぷりもすごい。銀色さん周辺がいかにふつうでないか、ということがいかんなく読み取れるすばらしいエピソードでありました。