『猫の贈り物』 作:リー・W・ラトリッジ 訳:鷺沢萠

図書館で借りた本。

猫の贈り物 (講談社文庫)

猫の贈り物 (講談社文庫)

外国の作家の本はほとんど読まない。なのになぜこれを選んだかというと、訳者が鷺沢さんだからである。彼女が受けた翻訳の仕事なんだから、面白くないはずはないと思って。もう絶版になっているんじゃないかな。図書館ではこういう本が借りられるからいいね。

猫の一人称による日記形式で物語は進む。タイトルからは、とっても愛らしい猫ちゃんが感動的なものを届けてくれるような想像もできるんだけど、さすが鷺沢さんの仕事、そうストレートじゃない。猫が語る毎日は、そっけなく、クールでシニカル。でも、読み終わったときは、やっぱりどこか胸があったかくなるのである。

猫の秘密、猫の飼い主の秘密、平凡な町に住む人々の赤裸々な日常。そういうものが、飾らない言葉で語られていくうち、いつの間にかこの物語の人々(と猫々)のことが大好きになってしまう。

ああ。私がどんなにあなたたちのこと大事に思ってるか知らないでしょう? あなたたちは私を若返らせてくれるのよ!

いっしょうけんめいにピンポン玉で遊んだあと、ふいに涙ぐんで猫を抱きしめて言うミセス・ヴィ(飼い主)のシーンなんて、ちょっと胸が詰まったりするのだ。