ひょんなことから脱サラして伝説のスピーチライターに弟子入りする28歳女子が主人公。あれよあれよという間に、国会議員に立候補する幼馴染み男子のためのスピーチを書くことになる…
友だちにすすめられて読んだ。ありがとう、おもしろかったです! かっぱえびせん的に一気に読んじゃいましたよ。
2008年から雑誌連載されていたらしく、めちゃくちゃ時宜をとらえた小説になっている。
そう、バラク・オバマの「Yes,we can」がヒットしていたころなんですね。当時、オバマのスピーチライターも20代だとかで話題になっていたよね。
日本はというと、小泉政権から禅譲を受けた第一次安倍政権から民主党に政権交代したのが2008年だったはず。
この小説では、構造改革を唱え、郵政選挙でどでかい支持を得て、さらには後期高齢者医療制度をつくり、母子家庭補助金を打ち切る小早川総理が、まんま小泉純一郎。長期政権におごる総理から政権を奪取するのが、幼馴染みの所属する民衆党だ。
つまり、この小説では、第一次安倍政権はすっ飛ばされている。それくらい小粒だと認識されていたんだろう。4年後、まさかこんな悪夢みたいな第二次安倍政権が始まるとは、当時の作家も編集者もつゆ知らず…。
…などという見方でも楽しめる小説となっております(笑)
「この時代はよかったよね、自民が与党でも、国会や党首討論がちゃんと開かれていて…」と遠い目になったり。
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幼馴染みへの失恋や、ライバルとの新しい恋なども並行して描かれ、政治まわりのお話はごくごくライト。裏表紙のあらすじ紹介でも、「お仕事小説」とハッキリ銘打ってある。「政治小説」なんて書いた日にゃ、若い女子は誰も読むまいというわけですねw
つまり、政治に特に興味がない人でも、非常におもしろく読めるお仕事小説なのです! みんな、読んで、これを入口に政治に興味を持とう~!
本当~に読みやすく、おもしろく書いてある。文章も、登場人物の設定もわかりやすく小気味よく、展開は随所にカタルシスをもうけ、つらさは最低限にコントロールされている。ウェルメイドという言葉がぴったり。これだけ快適なエンタメの作成は職人技だと思う。
原田マハの小説を読むのは2度目(最初は『キネマ日和』)。
この、するするとノンストレスな読み心地がちょっと食い足りないくらいだな~と思っていたところ(←アクの強いものが好きなお年ごろ)、Eテレ『スイッチインタビュー』でこの方と指揮者の大野和土との対談を消化するターンがやってきた!(本と同様、録画もたくさん積まれています)
美術館のキュレーターだったとは聞いてたけど、なんとMoMA(ニューヨーク近代美術館)に勤務していたこともあるらしい。すげー!(←ミーハーw)
やっぱり、この人の本丸は美術小説だな。『楽園のカンヴァス』、『暗幕のゲルニカ』、そしてゴッホを書いたという『たゆたえども沈まず』、読みたい。