弥生の九 / 藻谷浩介さん講演!

●3月某日: 土曜日だが夫は仕事。私とサクはこんこんと寝て朝寝坊。サクは薬でよく寝たのもあるかも(私は?w) 買い物がてらちょっと寄り道して幼稚園の前を通ってみると、卒園式が終わったところで、セレモニーらしい服装のお母さんお父さんと子どもの姿が。2人して感動する。サクは帰宅後、卒園証書を取り出していた。

夜、夫と入れ替わりで出かける。藻谷さんの講演。

潮騒のメモリーズ 17歳は 
♪ 寄せては返す 波のように 激しく

2019年3月の講演会レポートです。ピエール瀧を失った『いだてん~東京オリムピック噺~』を絶賛応援中につき、同じくクドカン脚本『あまちゃん』の劇中歌で始めてみました。

「2020年 東京オリンピック後の日本」と題した、藻谷浩介さん講演会。

本日の名言【株価は波】

寄せては返すのです。
上がったら下がる。
下がっても上がる。
株って、ものすごく集団心理に影響されやすいので、
みんなが何となく「ちょっと高すぎるよね」「そろそろ下がるよね」と思い始めると下がる。
ここ30年の日本の場合、時価総額300兆円を切ると、「ちょっと低すぎるよね」と、また上がりだす。寄せては返すのです。

東証株式時価総額GDPとを重ねてみると、この30年で株価がGDPを上回ったのは3度しかありません。

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バブル時期。
リーマンバブル時期。
そして、今、アベノミクス

株価は波なので、上がりきったら、必ず下がります。
なので、今の株価も必ず下がります。遠からず。
(ただし、PERから見ると、日本の株価は今なお割安といえるのだそうですが…)

集団心理的に、「オリンピックも終わったから、もうダメだよね…」と下がる可能性ももちろんありますが、それがきっかけとは限らない。
たとえば、中国の景気の減速とか。トランプさんがどうのとか。
みんなが弱気になった瞬間、株価は下がる。

で、株が下がると、「日本経済、おしまいだー!」と絶望しがちですが、本当にそうでしょうか?
と藻谷さんは疑問を呈します。

東証株式時価総額GDPとを重ねたグラフをもう一度見てみましょう。
株がどんなに乱高下しても、GDP自体は、ほぼほぼ横ばい。

2000年ごろですかね、ホリエモン時代の寵児となり、その後逮捕されてITバブルが弾けても、GDPはびくともしていません(笑)

本当はそんなに悪く(良く)ないのに、「思い込み」でこじらせて経済に多大な影響を与える、それが株価というものだそうです。
魔性の女みたいですね!

ただし楽観ばかりはしていられません。
アベノミクスの特徴、異次元の金融緩和。
日銀はじゃんじゃんお札を刷り、マネタリーベースは驚異的に増大しましたが、マネタリーベースと株価には相関性無し!

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それが証拠に、バブル期も、リーマンバブル期も、通貨供給量は微々たるものです(今と比べると)。
え~! じゃあ、何でそんなにお金刷るのよ?!

というと、藻谷さんいわく「ほとんど信心の世界」だそうです…

そして、増え続ける政府の債務残高。
日本はGDPをはるかに凌ぐ債務を持っている。
平成が始まったころに比べると、その額、8倍?!

今は株価が上がり、つまり税収も増えているのだから、債務を減らすチャンスなのに、安倍政権は100兆円規模の予算を組み続け、債務を増やし続けている。
金融緩和(ゼロ金利)がまた、債務増への痛みを麻痺させている。
もし、金利が正常に戻れば…たとえば2%になったら、年に16兆もの金利を払わなければならないというのに。

「コカイン吸いまくりの、麻痺しまくり状態ですね」
って、藻谷さん、こういうとこ時事ネタ押さえてきますよね…(苦笑)

特に、年を取った政治家や経営者は短期的な視点しかなく、
「今、自分が君臨している間だけ何とか持ちこたえよう」
と、ずるずると金融緩和を続け好数字を演出するので、まことに危ないとおっしゃっていました。
このあたり、選挙時の投票行動にも大いにかかわってくる話かもしれませんね。

「この債務を返済するには、結局は税収しかない。
 最終的に、国民は増税を受け入れるしかないんです」

と藻谷さんも言っていましたし、
先般、立憲の小川淳也議員の国会演説の中での
「政治家も、国民も、ともに【血みどろ】になる覚悟が必要」なんですよね。

今だけ、今だけ…と、永遠にごまかし続けることはできない。
血みどろって、ギョッとするような語彙のチョイスでびっくりしましたが、それが現実なんだと思います。


さてもう1つ、注目すべきグラフがあります(すみません、写真がピンボケしています)

株価がどんなに波打とうと、日本の個人消費総額(=いわゆる内需)は、20年間ずーーーーっと横ばい!これは、世界的に稀な推移なのだそうです。

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ユニクロが流行れば百貨店が落ち込む。
ZOZOTOWNが流行ればユニクロが落ち込む。
など、流行りすたりはあるけれど、消費総額は常に一定。
いかに株価がふわっとした数字か、ここでもわかります。

「たとえば来年再来年、オリンピック後に株価が下がっても、ここは変わらないでしょうね」
と藻谷さん予想。

「でも、10年、20年後…と日本の人口は減っていく。そうなると消費額もさすがに下がるのでしょうか?」
と質問してみると、答えは「YES」でした。

女性や高齢者の労働者が増えているとはいえ、人口そのものが減っていくので、労働者減は如何ともしがたい。
既に過去5年で60万人の外国人労働者が入国し、また入管法改正で今後35万人の受け入れを企図していますが、そんなの「焼け石に水」レベルで日本の労働者は減っていくそうです。
労働者が減れば、お金を使える人が減る。結果、消費も減りますよね。

では、個人消費を維持するためにはどうすればいいのか?
「賃金を上げるしかありません」

なるほど! 母数が減る分、単価を上げるってことね!

スイスなんかでは、平成の初めは日本と同じ賃金だったのに、今や2倍になっているそうです。日本もそれぐらい上げていい。
2倍というと驚くけれど、年に1%あげていけば、50年後には倍になる。

なるほどねー。
ベアのニュースとかも何気なく見てるけど、すごく大切なことなんですね。

特に現状、女性の賃金は男性のたった7割。
これを男性と同じレベルにまでもっていけば…

そもそも女性は、男性よりよっぽど消費する性。
70歳になっても80歳になっても、お金さえあれば、女性はおしゃれをしたり、高くて美味しいものを食べたりして、内需を押し上げる。
大納得ですよね。
(特に)女性の賃金上げるべし!!!

また、言うまでもありませんが、人口減を押しとどめるために出生率上昇は喫緊の課題。

ここで大切なことは、
若い女性の就業率が高い県ほど、出生率が高いということ。

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たとえば島根県
80%以上の女性が働き、合計特殊出生率は1.9を超えている。
あまりに人手不足なので、保育所等の預け先を整備し、女性に働いてもらえる体制を作っている。預け先があるから、女性は安心して2人、3人と子どもを産める。

反対に、東京や大阪、「田舎のくせに都会の顔をしている福岡や北海道」(←藻谷さんの発言です…w)は、若い女性の就業率が低い。出生率も低い。
都会のほうが専業主婦率が高い、というのは何となくわかります。転勤で来てる人も多いしね。

「もし日本全国で女性が島根県並みに働けば、423万人も労働者が増えます。(=内需を押し上げる)」

「反対に、全国で女性が東京・福岡並みにしか働かなければ、約280万人も労働者は減ります(=内需も下がる)」

どういうことか?
『若い人が都会に行けば行くほど、労働力が失われ、子どもが減るということです』
だから、藻谷さんは「里山資本主義」を提唱しているわけですよね。詳しくはご著書をご参照ください。

藻谷さんの講演は4度目ですが、今回がっつりマクロ経済の話も含んでいて難しいところもありながらも、とても面白かったです。その中でも やはり、

・人口動態こそが経済を左右する
・人は「イメージ」に囚われすぎている(ex 株価を絶対視する)
・子どもが大事。女性が大事。

ということを口を酸っぱくして言っておられたのが印象的です。

1月に講演会を開催した出口治明さん(APU立命館アジア太平洋大学学長)も、藻谷さんも、
「男女差別の是正は日本の最大の問題」
と異口同音に言っています!

賢人たちがこんなに訴えても、なっかなか進まないんですよね~。
今の政権与党の支持基盤の問題もあるし(日本会議ね)、
人々の「やっぱり女性には任せられないよね」という【イメージ】もある。
そのコンボの発動もあってか、何度選挙をやっても自民党が勝つ。

でも、旧弊たるイメージを打破するために、賢人たちが講演や執筆をしているのだと思います。
幸運にもそのお話を聞く機会に恵まれた自分がすべきことを考えさせられます。
みなさま、ご参加ありがとうございました!

※藻谷さん講演はすべてスライド撮影、掲載OKとされています。